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14. 「悪」と呼ばれた者の悲しすぎる「正義」
それは、ハレルヤが寝るとか言って部屋に籠もってからの話。
リビングらしい場所で椅子に座ってテーブルに肘を突いていた刹那は、没収された本を開いてじっくりと読み進めているソーマの隣にいた。経緯は良く分からないが、いつの間にかこのような図になっていたのだった。
現状に不満なんて物はないので、刹那はそのままボウッと時間を過ごす。
そうしている内に、パタンと言う閉じる音が聞こえて顔を上げた。
「何か使える話はあったか?」
「いや、無い。先ほどお前が見つけた情報くらいのものだな。私たちが求めていた以外の情報で、使えそうなものと言えば。……まぁ、参考くらいにはなるが」
「だろうな」
適当に知識を詰め込んだ本だと言うし、ならばあまり成果は期待すべきではなく、したがって現状も当然と言えば当然だった。
……人間を滅ぼす手段が当たり前のように載っていたのは……残念ではあるが。何せ、先に見つけた『鍵』化を止める手段には、人間を多く犠牲にしなければならないと書いてはあったが……人間を滅ぼす方法は載っていなかったのだから。
運が良ければ滅亡も免れただろうにと思いつつ、勝手に入れたカフェオレを飲む。
「そういえば…」
「何だ?」
「何がどうなって、今の状況になった?」
刹那が知っているのは、以人の村が滅ぼされたこと。
そこからマリー、アレルヤが連れ出されたこと。
マリーは逃げだし、アレルヤは逃げられなかったこと。
そして。
「…以人は、人間にとっては未知の領域だ。人間以外なのだからな」
「あぁ…それは分かる」
「だから、その実体を解明しようと躍起になったらしい。アレルヤを連れて行ったアイツらは……ッ」
「…分かった、もう良い」
実験をされたのは間違いないのだろう。それが酷い物であったことも。
そんな内容を好んで聞く気はないし、この話を振ったのはあくまで確認のため。確認さえ取ることが出来れば問題はないのだ。
しかし、ソーマは言葉を紡ぐことを止めなかった。
「それだけじゃない……アレルヤも逃げ出した…研究室にデータが残っていたから間違いは無い………けど……」
「……?」
「研究室のあった場所の人間たちは、逃げだし衰弱していただろうアイツを放っておいたんだ!」
叫び声が、耳を打つ。
そんな中、だろうな……と、刹那は冷静に彼女の叫びを聞いていた。
……全く、突然入ってきた部外者あるいは第三者というのは、これほどまでに冷静に状況を見ることが出来るのか。ならば何て酷いんだろうか。
冷静な刹那の様子に気付いたのか、少し赤面してソーマはテーブルにあったもう一杯のカフェオレを手に取った。
「だから…私たちは人間を殺すことにしたんだ」
「喜ばれないと聞いたが…それでもか」
「あぁ」
キッパリと、ソーマは断言した。
「元来、復讐などというモノは実行者のただの八つ当たりだ。ならば嫌われても仕方がないかも知れない。けど、私たちには何もしないことは耐えられない」
「……そうか」
復讐、それの愚かさを知っていながら行うしかないという彼ら。
これは、悲しいと言うべきなのだろうか?
良く、分からない。