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式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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明日はバレンタインデーですよね。
っていう話です。
無駄に長いです注意。

出来うる限り全員の名前を出したつもりです…が、何人か取りこぼしはあるかも。



〈8:00〉


 その日、靴箱が一つ残らずガムテープで封鎖されているのを見て刹那は目を丸くした。と同時にどうしようかと考えた。これでは上履きに履き替えることが出来ない。
 というか、誰が一体こんな事。
「……いや、考えるまでもないな……」
 呟いて、刹那はだとすれば、と周囲を見渡した。仮に彼女の仕業であるのならばどこかに貼り紙があるか、そのうち放送が入るかして事情の説明が為されるはずだ。何の理由もなくコレはないだろうし、こういうことをしたということは彼女が何かで『遊ぶ』気であることを指していた。……何で自分はこんな高校に入ったんだろう。
 少々黄昏れながらも視線をめぐらせていると……あった。
 壁に一枚だけ貼られていたその貼り紙。そこへと刹那は向かい、書いてある内容を読み……脱力した。そして、危機感に背筋をピンと伸ばした。
 そこには、『バレンタイン特別企画!』と記してあったのだ。
「そうか…そういえば明日はバレンタインだな」
 成る程、こんな絶好の行事を彼女が見過ごすわけもなかった。
 頷いて、刹那は貼り紙にあった指示通りにグランドへと向かった。


〈9:00〉


 ふふふ……全員集まったわね。よろしい。休みが一人もいないのはさっきの学級委員の点呼で確認したわ。これで面白い……いえいえ、楽しい企画になりそうね。
 じゃあ、ゲームのルールを説明するわ。簡単なのよ。
 女の子はチョコ、持ってきたわね?昨日、各学級の担任に通達させたもの。
 そのチョコを本命の人に渡しなさい。それがゲーム内容。
 そして、渡した男の子にコレ……今から配るんだけど……ぺたりとこの『売却済みシール』を貼ってもらうわ。場所はそうね、おでことか…冗談よ。だからティエリア、そんな目で睨まないで頂戴?おでこじゃなくてほっぺにするから。ちなみに右ね。
 で、チョコを渡された男の子は明日、相手の女の子に一日付き合う。
 これがゲーム内容。簡単でしょう?
 誰を狙うかはお好きにどうぞ。ただし、男の子は複数の相手に予約されることは出来ないわ。ま、ここは当然よね。一日付き合うんだもの。女の子が二人もいたら大変。
 というわけだから明日のデート目指して頑張って頂戴ね?
 デートが嫌なら少年達、せいぜい逃げ切ると良いわ。あと、教師も含まれてるわよ。だってその方が面白……じゃなくて盛り上がるものね。
 じゃ、私は生徒会室特設モニターでみんなの様子見てるから。


〈10:00〉


「何が『簡単でしょう?』だあの学園所有者……ッ!」
「大変だよねぇ…」
「全くだな」
 ハレルヤ、アレルヤ、ティエリアの三名は一階にある調理室の中に隠れていた。一階ならば窓から逃げ出せると考え、さらに調理室の鍵は一つしかないという事実からこの場所に立てこもっていたのだった。
 窓という窓、ドア、全てを締め切り、鍵はティエリアの手の中にある現状で……この場所は鉄壁の要塞となっていた。
 パイプ椅子を取り出して腰掛け、ティエリアが腕を組んだ。
「とりあえず我々はこの場に17時まで立てこもっていれば良い」
「だな。ヘタに出たら女どもの餌食だぜ…」
 ちらり、と視線を外に向ければ……見えるのは白い頭。しかも二個。
 誰かなんて、ここに自分の片割れが居る時点で分かる。
 マリーと、ソーマ。
 二人は機を、今か今かと窺っているのだろう。
 気は抜けなかった。
「ね、マリーとソーマちゃんからならもらっても…」
「絶対にダメだッ!」
 こんな状況でも思い切り気を抜いているアレルヤの代わりにも。


〈11:00〉


 職員室で、右頬にシールを付けていたロックオンは目を丸くした。
「あれ?ライル、お前ももう誰かにもらったのか?」
「あ、兄さんも?」
「まぁな。…ってことは何だ。同じ作戦取ったんだな、俺たち」
 さすが双子、と苦笑する。
 ……ようは、早めに誰かにチョコをもらってしまえばいいのだ。そうすれば以後はもう誰も寄りつかないし、逃げる必要もなくなるし。時折残念そうな視線が来るのは無視してしまえばいいのであるし(ちょっと悪いとは思うが)。
「で、兄さんは誰にもらったんだ?ピンクの髪の子?」
「ん。どのみち明日は一緒に買い物行く予定だったしな」
「デートか?」
「いいや。ハロの予備パーツの補充。そろそろ切れてたからさ」
 こんな色気も何もない用事をデートと呼ぶのはいただけない。
 笑いながらそう言うと、違いない、と返ってきたのも笑みだった。
「お前はどうなんだよ。誰からもらったんだ?」
「アニューから」
「へぇ…」
 そういえば何か親しかった気がする。
 そうかと納得して、この職場にうち解けていっているライルを嬉しく思った。


〈12:00〉


 リジェネは屋上のフェンスに寄りかかって青空を眺めていた。
 そんな自分の右頬にはシール。
 ただし、チョコなんてもらってない。
「みんなバカだよねぇ」
 ふぁ、と欠伸をしながら呟く。
「偽物のシールでも貼っちゃえば良いのに」
 そうすれば大体の目はごまかせるし、明日のデートもどきの必要性もない。
 いやはや、何とも楽な手である。
「リジェネ……貴方は相変わらずそういう知恵はよく働きますね…」
「ありがと、リヴァイヴ。最高の褒め言葉かも」
「よく言います」
 ふい、と視線を逸らしたリヴァイヴの頬にもシール。彼の隣に座るブリングの頬にも、同様に。ただし……二人のシールは本物だった。両方ともヒリングが付けた物だ。
 確かにヴェーダは『男の子一人につき、女の子一人』とは言った。が『女の子一人につき、男の子一人』とは言っていない。
 そういうわけなので、この状況もありなのだ。
「こーいうせこい手を上手く使うのがコツだと思うんだけどな」
「せこい、って自覚はあるんですね…おや?ブリングは何をしているんです?」
「…デヴァインから愚痴のメールが来た。アイツも近々こちらに来るそうだ」
「また転校生が来るの?ティエリアたちも大変だなー」
「貴方は副会長でしょう?何で会長だけが大変になるんです」
「え?だって僕って働かないし」
「働けっ!」


〈13:00〉


 刹那はひたすら走っていた。
 ただただ、走っていた。
 理由は実に明快。捕まったらその時点で確実にアウトだから、である。
 ……かれこれ、企画が始まってからぶっ続けて走っている。止まれば直ぐに捕まるし、隠れようにも『あの二人』には直ぐにばれてしまう。どうにか身体能力が二人よりも高いお陰で色々と免れているが……体力が尽きれば、直ぐにでも。
 腹が減っては戦は出来ぬと誰かが言ったことは覚えている。実際、午後一時を回ったというのに食事が取れない刹那は大分、体力を消耗していた。
 なのに。
 なのにどうして。
「どうしてお前は元気なままなんだマリナ・イスマイール!」
「刹那、それはきっと私の愛の力、みたいなものだと思うわ!」
「そしてグラハム・エーカー!何でお前も追いかけてくる!」
「理由など無い!何となくだ!」
「何となくで追いかけてくるなぁぁぁっ!」
 叫びながら、それでも刹那は走り続ける。
 最初はネーナ・トリニティもいた。別の生徒たちもいた。その時の方が逃げなければならない対象は多かったが、まだ気が楽だったというのに。
 マリナの凄いやる気と、いつの間にか何故か加わっていたグラハムの存在によって、彼女らは別のどこかへと去っていったのだった。
 この状況ってなんて地獄。
 刹那は天を仰ぎながら思う。
 この世界に神がいないのに、どうしてヴェーダという人の皮を被った悪魔的存在は居るんだろう。


〈14:00〉


「あら、まだ頑張ってる子がいたのね。今は知っていったのは刹那君かしら」
「全く良くやるわ……追いかける方も追いかける方だけど、逃げる方も逃げる方ね。」
 所変わって職員室では、企画に参加する気のない教師のたまり場が出来ていた。
 絹江は窓の外を眺め、シーリンは溜息を吐き。ちなみにマネキンはコーラサワーのねだりに勝てきれず、この集団から引き出されてどこかへと行ってしまった。そして、ミンは微笑みながらちょっと複雑そうなセルゲイと話していた。
「しかし……ソーマとマリーが一目散に走っていくとはな…」
「大方、アレルヤの所へ行ったんでしょう。なら、問題はないと思いますが」
「それはそうだが…」
 騒々しい外界とはちょっとどころでなく離れているその集団をちらりと見て、アリーは頬杖をついた。ちなみにシールなんてものは貼ってない。
 これは別に誰もここに来ないからではない。来はする、が……。
「仕事中のヤツには手を出さないたぁな。アイツらも分かってんじゃねぇか」
 まさか、仕事をサボりまくったせいで溜まった書類が、こんなところで役に立つとは思わなかった。意外な行幸である。


〈15:00〉


 寮の食堂の一つの席に腰掛けて、呆れながら目の前にいる次男坊を見る。
「ミハエル、嬉しいのは分かるがもう少し押さえたらどうだ?」
「無理だぜ兄貴。だってネーナからの手作りチョコだぜー?」
「…あぁ、そうだな」
 デレッとしきってしまっているミハエルをキッチリさせるのは無理だと判断して、ヨハンはコーヒーを一口飲んだ。
 そして、隣に座っていたラッセに尋ねる。
「こちらでも企画はやはり?」
「あぁ。盛大にやってるぜ」
 フッと笑って教えてくれたラッセ曰く。
 こちらではクリスがリヒティに。ルイスが沙慈に。ミレイナがイアンに渡したりと、何か校舎側の阿鼻叫喚(とは違うが殆どそんな感じ)とは全く違う、ほのぼのとしたやり取りがあったそうだ。
 が。
「そういえばな、さっきスメラギさんがこっちに来たんだ」
「……学園理事長が?何をしに?」
「酒盛りだろ。相手はカタギリってトコか」
「彼の部屋には今、待避してきた別のメンバーもいるのだろう?」
 確か、ハワード、ダリル、エイフマンの三名が。
 彼らも巻き込まれているのだろうか。
 そう呟けば、だろうな、と頷きと肯定。
「今頃カタギリの部屋じゃ大変なことになってるかもな」
「……そうか」
 企画とは関係なく、こちらもちょっと地獄なのか。
 安全な場所って実は無いのだな、としみじみ思い知ったヨハンだった。


〈16:00〉


「あらあら、あちらで走っているのはアレルヤたちかしら?」
「変だね。彼らは調理室に立てこもっていたハズだけど……」
「先ほど微かに、ガラスが割れる音が聞こえてきましたが」
 一年C組の教室で、留美とリボンズ、そして紅龍はのんびりとしていた。
 逆に、この時間帯にもなるとのんびりしてる方が『何にもなっていない』とばれにくい物なのだ。逃げていない、ということはもうシールを貼られてしまったと、たくさんのペアが結成された今ならば思わせることが出来る。まぁ、紅龍はそもそも学園関係者でもないし、その辺りは関係ないのだが。
「あと一時間くらいでしたわね。逃げ切れるかしら?」
「さぁ?でも、逃げ切ったら僕は拍手を送ろうと思うよ。追いかけてるのは白髪の双子だろう?あの二人の身体能力は目を見張る物があるからね」
「それもそうね。あ、紅龍、そこのチョコは貴方にあげるわ」
 さらりと何でもないように言われた言葉に、紅龍は軽く頭を下げた。
「ありがとうござます、お嬢様」
 紅龍は知っていた。
 最近、留美が夜コッソリとチョコ作りの練習をしていたことを。


〈17:00〉


「で、逃げ切ったの貴方たち」
 企画閉会セレモニー(っぽいもの)を終え、いつものメンバーは生徒会室に集まっていた。走り疲れた体を休めるために、である。
 グッタリと机に俯せになっているアレルヤ、椅子に力なく体重を預けているハレルヤ、ソファーに横になっているティエリア、床に座り込んで壁にもたれている刹那。
 誰も彼もが逃げ切った強者だった。
 そして、それをヴェーダは呆れながら眺めていた。
「良くやるわねぇ……予測はしてたけど驚いたわ、本当」
「だよねぇ。まさか、バカ正直に走って逃げ切るとは。特に刹那がね。ずっと走ってたんでしょう?」
 クスクスと笑って同意するリジェネは、ずっと偽のシールを頬に貼っていた小さな詐欺師。まぁ、だからといってどうということもなく、別にルールで禁止していたわけでもないのでこれは作戦勝ちと言うことで。
 でも面白かった、とヴェーダは軽く伸びをした。この生徒会室でずっと座ってモニターを眺めていたから、ちょっとばかり体が動かしたい気分だ。だからといって、流石に目の前の四人をどうこうする気はないが。こんな状況の彼らで遊んでも面白くない。
 しかし暇。どうしようかな、と考えてポン、と手を叩く。
「そうだ。企画の様子を編集してビデオにしてみようかしら」
「編集?……あぁ、モニターに映していた映像は全部保存してるのかい?」
「そうなのよ、リジェネ。ちょっと売り払ってみるのも楽しいかもとか思ってみて」
 どうかしら?と訊いてみると、返ってきたのはリジェネの答えではなくて。
「止めてください」
「テメェ、これ以上俺らで遊んでどうする気だ……?」
「あの…ちょっと遠慮したいです…」
「俺が……ガンダムだ…」
 最後の一つは微妙だが、とりあえず、全員が全員とも『遠慮したいです』という意思を持っているのは何か分かった。
 そうなの……と呟いて、ヴェーダは軽く視線を窓の外に向けた。
「じゃあ、その内実行しようかしら」
「オイ」
 とても低いハレルヤの声は聞かなかったことにした。
 だって、聞いてても聞いて無くても、やると決めたらやることに変わりはないのだから。





しまった…リヴァイヴたちが途美学園に来る話をまだ上げてませんでした。
近々上げなければ。リヴァイヴ、ヒリング、ブリングは一緒に来たんですよ。転校生です。

書きながらふと思いましたが、マイスターは言うまでもなく、私はもしかしなくてもイノベイターや留美たちのことも割と好きなんじゃないだろうか。
ていうか、まぁ、現時点でも嫌いだなぁ、っていうキャラはいないんですけれどね。
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