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バレンタインの話です。
やっぱりというべきか、登場はW組の皆様ですよ。
そして白辺高校なので擬人化なのです。
年に一度、二月十四日にある国民的行事———バレンタイン。
この日ほど女性が主役となる日はないだろうと、自分は思う。チョコを作ったり買ったりして、友達や家族や好きな人へと送るのだ。自分自身の為に用意するということもあろうが、それも一つの形だとは思う。
もらえば男性は喜ぶだろう。甘い物が嫌いだとかそういう少数派は除く。そんなのまで言及してたら話は進まない。
だがしかし、喜ぶのも『限度』を守れば、なのである。
そういうわけだったので———
バレンタイン当日、白辺高校の何名かの男子は欠席した。
—小さなバレンタイン—
「正直、何でバレンタインなんてあるのかが理解できない」
「同感だな。全く……このようなことにうつつを抜かす暇があるのなら修行でも……」
「それは女性に対してどうかと思う意見だねぇ……」
ナタクの言葉に苦笑しつつ、サンドロックはだらんと机の上で俯せになっているウイングの肩をトンと叩いた。二人の言い分も分かるが完全に同意するわけにもいかず、ならばせめて同情しているということを知ってもらおうと、これらはそういう事を示す態度だった。まぁ、そんなことをせずとも二人は分かっているだろうが。
ただ、ウイングの隣の席に座ってトランプタワーの作成を続けていたヘビーアームズは、呆れの表情を浮かべていた。そうして、どこからともなく取り出した紙とペンとでさらさらと文字を綴った。
『贅沢な悩み』
「あぁ一般から見ればそうだろうな。だがお前も休んでいることを忘れるな?」
「……」
ウイングに言われ、ふい、とヘビーアームズが視線を逸らす。自覚はあるのだろう。
仕方ないんだよねぇ、とサンドロックは息を吐いた。一年生の時は、五人が五人とも全員で学校に、ちゃんとこの日も行っていたのだが。だが……いや、もう何も言うまい。あんな事態を想定せずに何の準備もしていかなかった自分たちが、悪いと言うことでもう良いじゃないかという感じだった。投げやり?そのくらい分かっている。が、それ以外にどうしろというのか。今でもあの時の事を思い出すと鳥肌が立つというのに。
だって、あれは酷かった。靴箱からは溢れんばかりに包みが突き出ていて、机の上には山積みになっていて。放課後になったら女子が周りを取り囲み。……何か作為的というか、あらかじめ計画を立てていたような印象を受けた。そうしないと流石に、あれほどまでに綺麗にこちらのことを邪魔できないと思う。実際は計画なんて無いだろうが。
そういうわけなので、休んでも仕方ないのだった。
この対応は過去から学んだだけなのだから。
「というか」
ウイングが起き上がって呟く。
「本当にどうしてこんな製菓企業の陰謀のような行事に乗りかかるのかが理解出来ん。楽しいのは渡す本人と売り上げの伸びる会社だけだろう」
「基本的には、その上にチョコをもらった男の子も入るんだけどね」
「基本的にはだろう?生憎だがオレたちは違う」
「あぁ。全くもらえない方がまだマシだったな」
「……それ、本当にもらえない人に言ってごらん?」
恨まれること間違いなかった。
刃物が出て流血沙汰も有り得そうだったが、そこはウイングとナタクのこと。上手くかたして怪我は免れるだろう。むしろ、攻撃をしていった人たちの身の安全の方が不安である。おおよそ、この二人……特にナタクの方に勝てる存在はいない。特訓大好き部だったか、あそこに所属している数名や他の若干名は別だが。
ていうかふと思うけど、どうして『特訓大好き部』なんて割と危険な部活を放置してるんだろう。こないだなんて一階の窓ガラスが殆ど割れてたのに。
などと思っていると、その問題の部に所属している黒髪が辺りをキョロキョロと見渡して首を傾げた。
「そういえば、デスサイズはどうしたんだ?さっきから姿が見えんが」
「アイツなら確かキッチンの方にいたはずだが」
「何してるか分かる?」
「知るか。知っているのはそちらにいることだけだ」
腕を組んで椅子の背もたれに体重を掛け、ウイングはこちらを見た。
「……お前も知らないのか」
「うん。ナイショって言われて、それで終わり。ナタクは?」
「オレはいることすら知らなかったんだが」
「あぁ、そういえばそうだったね。じゃ、ヘビーアームズは?」
「……」
「そっか…」
首を横に振られ、六段まで出来上がっているトランプタワーの隣で、サンドロックは顎に手を当てた。誰も知らないとは、まさか思ってもなかった。
となれば。
「こっそり覗きに行っても良いかな?」
「ンなコトしなくてもちゃーんと終わったから問題ナシですが?」
突然背後から聞こえた、今までキッチンの方にいたという五人目の声に、文字と一つも違わず飛び上がる。ちょっとその後トランプタワー大丈夫かな、と不安に思ったがそれこそ問題は無かったらしい。無事に七段目を仕上げている最中だった。
何となくだが恐る恐る振り返ると、あったのは呆れの表情、それから。
「……ケーキ?」
「そ。チョコケーキ、な」
「……何で?」
「今日はバレンタインだろ?」
片手で器用に支えていた皿を、トランプタワーの邪魔にならないように机の上に置いて、デスサイズはクスクスと笑った。
「そりゃ多すぎのチョコは歓迎しないけどさ、こういう行事なのに何もしないってのは勿体ないだろ?てなわけで適度な量を、ってな。実はチョコを見るのも嫌って言うなら、別に食べなくても良いけど」
「構わん」
「もらう」
「……そりゃどうも」
即すぎる即答に微妙な顔をしつつ、それでも素直に五等分に切り分ける紅眼の彼。
…二人の反応としてそれは正しいと、コッソリと頷いた。あのケーキも美味しいだろうから。
「あ、お前らはどうする?いる?」
「勿論」
サンドロックは答え、ヘビーアームズはこくんと首を上下に一回ほど振った。
見れば、トランプタワーは完成しているようだった。
机に山積みのチョコ…想像するだけで何か凄いな。
靴箱の中のチョコは、ギッシリ詰められてはみ出てる感じです。
ちなみに他にも、基本的にフルカラーのメンバーは休んでたりします。