[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
269
「ハロー、HAROー……いないなぁ…」
「手がかりねぇからな……簡単には見つからねぇだろ」
「そうそう。だから気を落とすことはないよキュリオス。だいたい直ぐに見つかっちゃうご都合主義の方が珍しいんだから、この状況はそれ程想定外の物でもないしね」
今、キュリオスはアリオスとセラヴィーと一緒にハロとHAROを探していた。が、ふと思うに……このメンバーで彼らを探すのってどうなのだろう。あの二人(?)の姿を知っているのが、三人中自分だけというこのメンバーで探すのは。
どうこう考えるまでもなく無茶だろうなぁと苦笑しつつ、キュリオスは二人を二人を引き連れて都の中を歩く。夜、ということもあって通行人は殆ど見受けられない。誰もかれもが家や宿に戻ってゆっくりとしているのだろう。
一人の人もいるだろうし、そもそも人でなくてヒトだったりもあるのだろうが。中には、きっと家族で楽しく笑い合っている所もあるはず。それを想像して、キュリオスは足元に転がっていた石を軽く蹴った。
「……いいなぁ…」
「ん?どうかした?」
「え?あ…」
後ろからのセラヴィーの言葉にキュリオスは赤面した。口に出すつもりはなかったのに、出してしまったことが恥ずかしい。
「……そのね、家族でみんなで仲良くっていいなぁって思って……」
「何でンな方向に思考が行ってんだよ」
「ちょっと色々考えてたから」
アリオスの問いにはそう答えた。説明してもきっと笑われるだけだろうから、ならばやや濁して言ってみた方が良い気がした。それにありのままに言ってしまったとしたら、彼は自分の考えていたことの裏側までもを理解してしまうだろう。家族、それを想って羨ましくなったということを。
キュリオスにとっての『家族』とはつまり、自分を含めた九体の人形たちのことであり、さらにそこに父が付け加えられた集団のことだ。いつか、その全員で一緒に笑い合って平和に過ごすことがまた出来たらと、何度願ったことだろうか。
けれどそれは出来うるはずもなかった。これからずっと、その望みが叶うことなど無い。永遠に、確実に、変わることもなくずっと。
だって父はもういない。
「さて、ちょっと暗くなっちゃったキュリオスに僕から一つ提案があるんだけれど、果たして言ってみても良い物かな?ねぇアリオス、僕の唯一無二の友人たる君はどう思う?」
「……とりあえず一発…いや、二発殴らせろ」
「それって何?」
とても不機嫌そうに言ったアリオスに対して、セラヴィーはクスクスと笑った。楽しげに、分かっているよと伝えるかのようにクスクスと。
「僕がキュリオスを『暗い』って言ったから?あと、君を『唯一無二の友人』って言ったから?分かり易いよね、君って本当に。前者の方は…キュリオスが気にしないような些細なことでも気になっちゃうのかな?後者は純粋に嫌なんだろうけど。あぁ、僕、もしかしたらちょっと傷ついたかも知れないよ……。だからね、キュリオス、癒してくれる?」
「え……っと」
話を振られてキュリオスは返事に躊躇した。別に癒すのが嫌なのではなくて、癒せるかどうか不安なのでもなくて……それ以前の問題で、ここで頷いたりしたら確実にアリオスがセラヴィーに向かっていくと言うことが分かったからだった。
どうしようどうしようと本気で悩んでいると、何だか何もかもが分からなくなってきて頭がパンクしそうな気分になった。
「……ごめん、返事は保留…」
「そっか。それでも良……ってキュリオスー!?」
「お前難しく考えすぎんなっ!」
結果。
ぐるりと目を回してしまったキュリオスは、そのままバタンとアリオスの腕の中に倒れ込んでしまった。