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何か、ハレルヤが出るたびにハレルヤの話を書いているような気がします、二期本編沿い。
多分、間違ってないこれ。
19.そっと囁いた言葉
『お前……誰だ?』
通信で伝えられたその言葉に、ハレルヤは笑った。
これは傑作。通信をやったのは四年前、自分を暗闇へと沈めた女。そして今、共闘しているのもその女だった。昨日の敵は今日の友、などという薄ら寒い絵空事をほざいた誰かの言う通りの光景が今、ここに展開しているのだ。まぁ、友などという存在でもなく、これは単なる利害関係の一致による共闘なのだが。
そのことに対しての不快感は覚えない。たとえ敵であったとしても今、こうやって味方となっているのならば。強い味方は多い方が良い。その方が。
生き残る可能性は、増すという物だ。
「俺が誰か?随分な挨拶だな、女。……いや、ソーマ・ピーリスだったか?」
少なくとも『元』の方じゃねぇな。
そう続けると、息を呑む音が聞こえてきた。
『アレルヤ・ハプティズムでは、無い……のか?』
「オイオイ、そう思ったから、違うと感じたから通信入れてきたんじゃねぇのかよ」
『その通りだ。だが……』
戸惑う声。分かっていても実際に目にするのでは印象が違うのだろう。四年前はさんざんに見せてやったと思うが、それもあくまで四年前のことなのだ。四年、それだけあれば忘れることだって容易い。忘れずとも実感が消えている可能性だってある。
だからそこは面倒なので触れないことにして、こちらはこちらで楽しく相手を撃破することにしよう。もちろん通信は開きっぱなしで。アレルヤの心の歪みである自分と、マリーを戦わせるために植え付けられた相手。オリジナルではない者同士の会話というのも、ちょっとした娯楽にはなりそうだった。
「んで、テメェは何で戦ってんだ。確か……戦うなって言う話じゃなかったのか?」
『それはマリー・パーファシーの話だろう。私はそのような約束を交わした覚えなど無い』
「ンなこたぁ分かってんだよ。俺は動機を訊いてんだ」
『大佐の仇を取るために』
「大佐……あぁ、テメェの元・上司か」
そういえば死んでいたのだったか。自分には全く関係が無かった上に約束以外はアレルヤとも大した繋がりがないようで、どうでも良かったからすっかりと忘れていた。
弱いと呟きながら敵機を破壊し、そのまま思考を続ける。
確か、その『大佐』とやらは息子の手によって殺された。
そして付け加えると、この女とその上司は、場合によっては親子となっていたかもしれなかったのだ。
成る程。運が良ければ義兄弟となっていたかもしれない二人が殺し合うのか。
そう思い、いや、と笑みを作りながらハレルヤは思い直す。
運が悪ければ、だ。運が悪ければ息子と養女が、父の為に殺し合っていたのだ。
「んじゃ、せいぜい頑張りな。とりあえず死ぬようなヘマさえしねぇなら行けや」
『お前は私が戦場に出ても気にしないのだな』
「するわけねぇだろ。それこそ約束したのはアレルヤで、俺じゃねぇ」
『そのくせ、死ぬなと言うワケか』
「テメェが死んだら『マリー』も死ぬんだろ?ンな事してみろ、コイツ、また落ち込みやがるからな。鬱陶しいんだよ」
鬱陶しくて鬱陶しくて、それ以外の意味でもかなり嫌なのだ。
コイツ、というのが誰を指すのか間違いなく察したのだろう、ソーマはモニター野中で驚いたように目を見張った。……何だその反応。
思わず半眼になると彼女はそのまま口を開いた。
『お前、冷血漢かと思えば完全にはそうではないのか』
「……はぁ!?」
『よっぽど片割れが大切と見える』
「んなっ…」
ワケあるか!と叫ぼうとして堪える。
ここでそうやって否定したら、間違いなくそれは肯定になるのだ。
「とっ……にかく、良いか!ヘマだけはすんじゃねぇぞ!」
『元より承知だ。仇を討つまでは死ねないし、仇を討ってからはマリーのための時間を渡さなければならないからな』
「言ったな?」
『あぁ、言った。だから心配などするな』
「テメェの心配なんざしてねぇよ」
『知っている。だから、私への心配ではなくお前の片割れに対してのだ』
「……そうかよ」
言って、通信を閉じる。
静かになったコクピットの中で、ハレルヤは自分の時間の終わりを感じた。そろそろ片割れへと体を明け渡さなければ。
すっと目を閉じて、聞こえないだろうが。それでも。
「生き残るぜ、アレルヤ」
本編でも、ハレとソーマの会話があったら良いなぁ…。