[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
271
「ちょっとブリング、コレってどういうこと!?」
「…俺に訊かれても困る」
「そのくらい分かってるから、良いから何か適当に言っとけばいいのよここは!」
ヒリングはそう叫んで、あぁもうわけが分からないと頭を抱えた。わけが分からないということはつまり、他のメンバーに報告することも難しいのだということだ。すると、報告書と呼ばれる物も書くことが出来ないというわけで。
するとどうなるかというと、絶対にリヴァイヴに気に入らない反応をされる。その時の様子でさえもありありと目の前に見えるようだった。「その程度のことも出来ないんですか?」と、心底呆れたという表情で言われるのだ。
想像するだけでかなり苛つく。
いや、苛つくというか腹が立つ。
普通に話すのは結構良い相手だとは思う。思うけれど、ちょっと生真面目っぽいところは自分とはあまり合わないと思っている。これはおそらく相手だってそうだろう。
それでも一緒にいて問題が起きないのは、自分たちが『同類』であるからだ。
「あー、もうどうしたらいいのこれ!原因が分からないと報告できないじゃない!」
「そうなのか?」
「そうなんだってば。良い?『原因不明』」なんて書いてみてごらんよ、絶対にリヴァイヴに鼻で笑われるに決まってるんだから……っ」
まぁそれも、キョトンとしているブリングの様子からすると……自分だけ、なのかもしれないが。だとしたら、本当に不公平だと思う。だが、そう伝えたら日頃の行いがいけないんでしょう?としれっと返されそうな気がした。そして、それに対して言い返せるような態度を取っていない自覚はあるのだ。
というわけで、自分の立場は割と弱い場所にあったりする。事務系の事柄が中心になるとそれは間違いなく。ただし、事務系以外……つまり『実戦』ならばそれは別だ。メンバーの中で、自分以上に戦い慣れているのはいない。
「……仕方ないわね。分かってることだけ整理するわよ」
「といっても少ないが」
「少ないからこそよ。そうでもしないと説明できないじゃない」
まず、ガラスケースが割れている。
それから、ガラスケースの中の物は消えていない。
さらに付け加えるなら……異端の能力察知の機器が発動したのはどうやら、『今』であるらしいということ。
全く持ってワケの分からない。ヒリングがランプが点灯したのを見て動き出したのは、もっと前だというのに。途中ブリングを発見して一緒に来たから時間のロスはさらに多くなっているはずであり、ならば『今』に発動しているというのは有り得ない。
原因が分からない上に、こんなワケの分からない現象が起きているなど。バカ正直に報告書を書いたりメンバーに知らせてみたら、きっと笑われるに違いなかった。世界って結構不条理だと、そう思うのはこんな時である。
「てゆーかさ、ガラスケース割っておいて中身を取らないって何なの」
「…さぁ」
「変よねぇ……」
ということは何だろう。ガラスケースを割ったのは物を取るためではない、ということなのか。この場で乱闘があって偶然に割れたか、何かをカモフラージュするために割ったのか。警備員が来たから逃げた、という線は警備員がそもそもこの惨状を気付いていなかったらしいと判明しているので外して構わない。
コレは本当に、何なのだろう。
ヒリングはいくら考えても想像も見当も付かない現状に、いい加減に頭痛を覚えていた。