式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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皆様お疲れ様でした。機体の皆なんて半壊になりつつ頑張ってましたよね…特にケルディム辺りとか。
本当にお疲れ様。仮初めだろうと平和な一時をどうか、貴方たちに。
「ようやく一段落だね…」
「だな」
アリオスとダブルオーは二人、街中を実体化した状態で歩いていた。
たくさんの人が作りだしている雑踏の中を、人をかき分けるように歩くのは本当に初めての経験であるようで、アリオスは少し惑いながら、ダブルオーは真っ直ぐと、歩いていた。そんな歩き方が出来るダブルオーにちょっと敬意。
ケルディムとセラヴィーはアインの家で今後について話し合っている。自分たちはその話し合いに必要なさそうだったから、彼らから許可を得て外にいるのだった。何だかんだで一番傷が浅かっただろう自分と、一番傷ついた挙げ句本体が戦闘中に変わった彼とが。
まだ痛むんじゃないだろうかと、ダブルオーを眺めながら思うのだが、普通の人たちみたいな服を着て前を歩いている彼はそんな素振りは見せない。本当に痛みがないのなら良いのだけれど、我慢しているのだったら凄いとしか言えない。
ケルディムからもらった小遣いを確認しつつ、自分も普通の人たちみたいな服を着ているアリオスはダブルオーの服の裾を引っ張った。
「ねぇ、これからどうする?喫茶店にでも入ってみる?」
「そうだな……それが無難か」
「僕ね、のんびり出来るようになってから喫茶店で、ショートケーキ食べるの楽しみにしてたんだ。美味しく食べられそうでしょう?」
戦いに一段落付く前でも、食べたことは何度だってある。けれど、こうやって仮にとはいえ戦闘が終わった今だからこそ、もっと味わって食べることも出来ると思うのだ。
「ダブルオーだったら何頼むの?チーズケーキとか?」
「…チョコケーキ」
「そっか。それも美味しそうだね」
楽しみだな、と微笑んでいると、ふいに右の手首に感じる感触。
ダブルオーが、アリオスの右腕を掴んだ感触だった。
え?と思わず彼を見ると、黒髪の彼は視線を逸らして合わしてくれなかった。
「……はぐれると困るからな」
「あ……うん、そうだね」
そういうことなら仕方ないかと思ったが、何だろう……その、少し恥ずかしいような気もする。手と手じゃないからそれ程でもない、気もするけれど何だか…。
「……そういえば」
「へっ!?」
と、唐突に聞こえたダブルオーの声に、アリオスは素っ頓狂な返事をしてしまった。物思いというまでの事でもないが、少し考え込んでいたので不意を突かれた感じで。
しくじった、という思いから先ほどとは別の恥ずかしさに、頬が熱くなるのを感じていると、呆れたような視線が向けられて慌てて俯いた。見られてもどうと言うことは無いだろうけれど、やっぱり見られるのは少し。
…何でこんな反応してるんだろう。
「何でそんな反応をしているんだ」
「……それ、今、僕も同じ事思ったよ……それで、えっと…何?」
「あぁ。今日は髪を括っていないのかと思って」
「たまには良いかなって思ったんだけど……変、かな?」
今日は、いつもうなじの辺りで結んでいる髪を解いて、後頭部から纏まってはねていた髪も頑張って全部下ろしてみた。理由はなくて、本当に気まぐれからの行動である。新しい世界を新しい姿で、新しい気持ちで見てみたいというのもあったかもしれないけど。
どうせ今日だけの髪型である。顔を上げて、えへへ、と眉は下がったが笑って見せた。
「変だったら直ぐ戻すけど…」
「いや、似合っている」
「そ……そう?」
面と向かってそう言われても、反応に困ってしまうけれど。
「アリオス…どうしてさっきから赤面しているんだ?」
「何かね……種類の違う恥ずかしさが次々と襲ってくるんだ…」
しかも謀ったみたいに。実際は謀ったわけではないだろうと分かるが。
それにこうやって丁寧に反応を返している自分がまた何とも言えず、ハァと溜息を吐いたところでつんのめった。
石に蹴躓いたのだと気付いたときにはもう体は持ち直せないくらい傾いていて、慌てた様子でダブルオーが腕を引こうとしたのにも気付いたが、それも間に合わず。
危ない、と思ったときにドン、と受け止められる感覚を感じて驚いた。
「…大丈夫か?」
上から降ってきた声は、何と、こちらが一方的に知っている声。
思わずバッと顔を上げると、そこにあったのは刹那の顔だった。
あまりの事態に動転しつつ、何も答えないのはいけないだろうと、どうにか言葉をひねり出して頷いた。
「えと……あ、大丈夫、です…ありがとう…」
刹那、と付け加えそうになって慌てて止めた。だから、知っているのはこちらからだけなのである。知りもしない相手に名前を呼ばれて嬉しいとも思えないから、ここは初対面のふりをした方が良いだろう。チラリとダブルオーと目配せをすれば、彼も頷いて見せた。
そんな自分たちに気付いた様子もなく、そうか、と刹那は答えた。
「これからは気をつけろ」
「はい。…ありがとうございました」
体を離して態勢を整え、去っていく彼の背を眺めて。
雑踏に紛れて見えなくなったところで、ダブルオーと一緒に歩き出した。
しばらくの間、ゆっくり休んでください。
「だな」
アリオスとダブルオーは二人、街中を実体化した状態で歩いていた。
たくさんの人が作りだしている雑踏の中を、人をかき分けるように歩くのは本当に初めての経験であるようで、アリオスは少し惑いながら、ダブルオーは真っ直ぐと、歩いていた。そんな歩き方が出来るダブルオーにちょっと敬意。
ケルディムとセラヴィーはアインの家で今後について話し合っている。自分たちはその話し合いに必要なさそうだったから、彼らから許可を得て外にいるのだった。何だかんだで一番傷が浅かっただろう自分と、一番傷ついた挙げ句本体が戦闘中に変わった彼とが。
まだ痛むんじゃないだろうかと、ダブルオーを眺めながら思うのだが、普通の人たちみたいな服を着て前を歩いている彼はそんな素振りは見せない。本当に痛みがないのなら良いのだけれど、我慢しているのだったら凄いとしか言えない。
ケルディムからもらった小遣いを確認しつつ、自分も普通の人たちみたいな服を着ているアリオスはダブルオーの服の裾を引っ張った。
「ねぇ、これからどうする?喫茶店にでも入ってみる?」
「そうだな……それが無難か」
「僕ね、のんびり出来るようになってから喫茶店で、ショートケーキ食べるの楽しみにしてたんだ。美味しく食べられそうでしょう?」
戦いに一段落付く前でも、食べたことは何度だってある。けれど、こうやって仮にとはいえ戦闘が終わった今だからこそ、もっと味わって食べることも出来ると思うのだ。
「ダブルオーだったら何頼むの?チーズケーキとか?」
「…チョコケーキ」
「そっか。それも美味しそうだね」
楽しみだな、と微笑んでいると、ふいに右の手首に感じる感触。
ダブルオーが、アリオスの右腕を掴んだ感触だった。
え?と思わず彼を見ると、黒髪の彼は視線を逸らして合わしてくれなかった。
「……はぐれると困るからな」
「あ……うん、そうだね」
そういうことなら仕方ないかと思ったが、何だろう……その、少し恥ずかしいような気もする。手と手じゃないからそれ程でもない、気もするけれど何だか…。
「……そういえば」
「へっ!?」
と、唐突に聞こえたダブルオーの声に、アリオスは素っ頓狂な返事をしてしまった。物思いというまでの事でもないが、少し考え込んでいたので不意を突かれた感じで。
しくじった、という思いから先ほどとは別の恥ずかしさに、頬が熱くなるのを感じていると、呆れたような視線が向けられて慌てて俯いた。見られてもどうと言うことは無いだろうけれど、やっぱり見られるのは少し。
…何でこんな反応してるんだろう。
「何でそんな反応をしているんだ」
「……それ、今、僕も同じ事思ったよ……それで、えっと…何?」
「あぁ。今日は髪を括っていないのかと思って」
「たまには良いかなって思ったんだけど……変、かな?」
今日は、いつもうなじの辺りで結んでいる髪を解いて、後頭部から纏まってはねていた髪も頑張って全部下ろしてみた。理由はなくて、本当に気まぐれからの行動である。新しい世界を新しい姿で、新しい気持ちで見てみたいというのもあったかもしれないけど。
どうせ今日だけの髪型である。顔を上げて、えへへ、と眉は下がったが笑って見せた。
「変だったら直ぐ戻すけど…」
「いや、似合っている」
「そ……そう?」
面と向かってそう言われても、反応に困ってしまうけれど。
「アリオス…どうしてさっきから赤面しているんだ?」
「何かね……種類の違う恥ずかしさが次々と襲ってくるんだ…」
しかも謀ったみたいに。実際は謀ったわけではないだろうと分かるが。
それにこうやって丁寧に反応を返している自分がまた何とも言えず、ハァと溜息を吐いたところでつんのめった。
石に蹴躓いたのだと気付いたときにはもう体は持ち直せないくらい傾いていて、慌てた様子でダブルオーが腕を引こうとしたのにも気付いたが、それも間に合わず。
危ない、と思ったときにドン、と受け止められる感覚を感じて驚いた。
「…大丈夫か?」
上から降ってきた声は、何と、こちらが一方的に知っている声。
思わずバッと顔を上げると、そこにあったのは刹那の顔だった。
あまりの事態に動転しつつ、何も答えないのはいけないだろうと、どうにか言葉をひねり出して頷いた。
「えと……あ、大丈夫、です…ありがとう…」
刹那、と付け加えそうになって慌てて止めた。だから、知っているのはこちらからだけなのである。知りもしない相手に名前を呼ばれて嬉しいとも思えないから、ここは初対面のふりをした方が良いだろう。チラリとダブルオーと目配せをすれば、彼も頷いて見せた。
そんな自分たちに気付いた様子もなく、そうか、と刹那は答えた。
「これからは気をつけろ」
「はい。…ありがとうございました」
体を離して態勢を整え、去っていく彼の背を眺めて。
雑踏に紛れて見えなくなったところで、ダブルオーと一緒に歩き出した。
しばらくの間、ゆっくり休んでください。
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