[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
イノベイターが退場したのは酷く残念というかその…うん、結構好きだったからね…イノベ組。
別に退場したからと書くのを止めるきもなけれど、ですが。
06.参観日
「……ねぇ、リヴァイヴ、ブリング」
「何ですか、ヒリング」
「…どうかしたのか」
「すっごくやりにくいと思うのは私だけ?」
そう言うヒリングのチラリと向けた視線の先には彼女と同じ髪の色の、自分たちのリーダーの姿があった。隣にいるのは当然のようにリジェネである。
どうしてだか、二人は自分たちの様子を見に来たらしかった。リジェネは間違いなくリボンズの付き添いとして、暇だからやって来たのだろうから置いておくとしても、リボンズの方がここに来る理由とはいかに。他のアロウズメンバーも不思議そうな顔をこちらに何度も向けてくるのが苛立たしい。
ついにはひそひそ声まで聞こえてくる始末。似ている?塩基配列が同パターンなんだから当然じゃない。そう言ってやりたかったけれど、言うのも何か問題な気がしたので口は閉じた。我ながら心の広い対応だ。
はぁ、と息を吐いて頬杖を突く。
「何かねぇ、これだと訓練的な物もやる気無くなるわ」
「元から無いですしね、それは致命的です」
「…ちょっとリヴァイヴ、そこは正直に言っちゃう場所じゃないわよ」
「そこ、とは?」
「元から、の所。曖昧にどうにか濁しなさいよそのくらい」
イノベイターでしょ、と続けると関係ないでしょう、と返された。そんなの初めから知っているが、何となく言わねば済まなかったのである。
だからそれをそのまま続けると、諦めたようにため息を吐かれた。
「そうなんですか……」
「そうよ。文句があるなら言ってみてよ。ケンカは買うわ」
「…二人とも」
と、ここで黙っていたブリングが口を開いた。
何だとヒリングとリヴァイヴが見ると、彼はいつものように無表情のまま言った。
「注目を集めているが」
「注目?誰の?」
「他のアロウズの人間たちの」
言われて、まぁ当然かと何となく納得した。アロウズの中でもライセンスを持っている自分たちの存在は特異だろうし、それについての自覚はとりあえずはある。
その時点で既に目立っているというのにこの言い合いである。注意を引いてしまったとしても仕方がないだろう。気にはなっているようだが自分の訓練に集中できている人間は、なかなかの物だと評価してしかるべきだろう。
あーあ、とヒリングは伸びをした。
「でも本当にやる気起きなーい」
「参観日みたいな物だと思えば良いんじゃないでしょうか。そうすればやる気、少しくらいは出ませんか?」
「…参観日ねぇ」
ていうか、現状は完璧に参観日だ。
どうしようかと考えて、それなら問題なくどうにか出来るかとヒリングは結論づけようとして……止めた。何だか無理っぽい。
というわけで。
「ごめんリヴァイヴ、私無理そうー」
「普通だったら参観日といえば頑張ると思うんですがね……ダメですか」
「うんうん。肝心のやる気が出ないんだってば」
「……それは良いんだが」
ブリングはやや困ったように口を開いた。
「次の訓練はシミュレーションだ」
「…えぇぇ!?よりによって今日!?」
シミュレーションというのは、想像力を働かせれば直ぐに分かるだろうが……MS戦闘に関するシミュレーションである。シミュレーターに乗って自分の機体データを呼び出し、実践さながらの経験を積むという類の。ちなみにその間、本物の機体は整備に回されるので触ることさえままならない。面倒なことだ。
が、それは置いておくとして…今日がシミュレーションの日だったとは。
一番好きな訓練だというのに、やる気が出ないなんて最悪だった。
軽く落ち込んでいると、ポンと叩かれる肩。
「…まぁ、こういう日もありますよ」
「てゆーかさー、私たちライセンス持ちなんだし訓練っていらないんじゃない?今までもやってた記憶が微妙にないし…」
「今日だけ特別に参加しろって話だったと思います…が…………まさか」
はた、と何かを思いついたようなリヴァイヴに、ブリングは静かに頷いた。
「リボンズの裏工作か…」
「あ、成る程」
恐らく、今日見に来るつもりだったから今日、自分たちが何が何でも訓練に参加するようにと根回ししたのだろう。そうでもしないと、少なくとも自分は訓練なんてしない。
どれだけ参観日をしたかったのかと、ヒリングはツッコミを入れたい気分だった。
ライセンス持ちって、どのくらい権限があるんだろう。