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色々と考えて、結局こんな感じに。
06.サブタイトル
「僕らってさ」
『うん?』
「超兵って呼ばれてるよね」
『そうね、確かに』
「どこが『超』なんだろう?」
それは、以前からずっと不思議に思っていたことだった。
だって不思議だ。『超』なんて付くからには凄い存在なのかと思えばそうではなくて、失敗すれば直ぐに廃棄されるような軽い存在なのだから。しかも廃棄の仕方が毒殺で、ぽいと捨てるだけの簡単な物。
これで『超兵』なんて冗談以外の何でもない。
いつものようにマリーの横たわる台の傍に座り、足をフラフラと揺らしながらアレルヤは思った。何でどうして、こんな小さな存在が『超兵』と呼ばれるのか。
ハレルヤに訊いてもバカらしいと答えてくれない。そんなにバカらしいだろうかと一回真剣に考えてみたのだが結論は出ないで、付け加えるとそれがバレて片割れにはさらに呆れられたのだがそれはそれ。
と、こんな経緯から話せるのはマリーくらいしかいないかな、と思ってこうやって行動を起こしたワケなのである。
どうだろう?と首を傾げてみると、そうねぇ、とマリーの声が脳裏に響く。
『まだ完成していないから、正確には私たちは『超兵』じゃ無いんじゃない?』
「それは目指す所って事?」
『えぇ。だから私たちがそれになっていようといまいと関係ない、っていう感じ、かしら』
「……でもやっぱり不思議」
はぁ、とアレルヤは息を吐いた。
「人間に作り出されるのに、人間以上って無いんじゃないかな…」
『あら、イレギュラーというのはいつでも起こる物よ?』
「イレギュラーって……それじゃ、研究中は本当の超兵なんて出来そうにもないじゃないか。ここにイレギュラーなんてないよ?」
全てが、とまでは言わないが、殆どが管理され統一されているこの場所で、イレギュラーなんて起きることもないだろう。
そして、仮にイレギュラーによって本当の超兵が誕生するのだとしたら、ここで行われている研究の全てが意味のない物である、ということになる。何とも酷い、酷すぎる話ではないか。
ならば何のために自分たちは死にそうな思いをして、実際に何人かは死んで、こうやって体を弄られ脳を弄られ、生きているような死体のままで存在しないといけないのだろうか。全く意味のない、これこそ馬鹿げた行為だ。
何てことだろうと落ち込んでいると、だから、と続く言葉が聞こえてくる。
『だからね、廃棄された子たちの中にいたのかもしれないわ』
「超兵が?」
『えぇ。もしかした、の話だけど』
「どうして?ダメだったから廃棄されたんじゃないの?」
『それは研究員たちの価値観で見て、でしょう?本当は成功だったのかもしれないわ』
「……だったら本当に馬鹿な研究なんだね、これ」
あるかどうかも分からない成功を求めて、成功を自ら捨てても気づけないような研究。
こんな意味のないことをどうして続けるのだろうと、アレルヤは改めて研究に対する不快感を抱いた。それと同時に、恐怖も。
意味がないのに続くこの研究は、今も、これからも、犠牲を出し続けるのだ。
そして、その犠牲は知っている誰かかもしれない。
マリーかもしれない。
自分、かもしれない。
どうしてこんなことになったのだろうと、アレルヤは両足を抱えて俯いた。
分からない。何も覚えていないから、思い出せないから。分かるのは、思い出せるのは、覚えているのは、目を開いたときに白い明るい光を見たあの時からの事だけ。この機関に来る前の事なんて何一つとして覚えていないのだ。
ともかく、分かるのはただ一つ。
何を嘆こうと何が変わるわけでもないということ。
「…ねぇ、だから僕らは失敗作とか色々と言われてるのかな」
『でしょうね。彼らから見たら成功が無い以上は失敗でしょう、私たちは』
「……嫌だなぁ」
『嫌だろうと仕方ないわ…あぁ、そういえば』
と、マリーが何かを思い出したかのように声を上げた。
「何?」
『昔にね、私たちをお人形って呼んでた人がいたのを思い出したの』
「……へぇ」
その言葉こそ、自分たちにお似合いだ。
皮肉な話を微妙に目指したかった…気がする。