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何となく、裏家業ニールが書きたくって。
あと、「彼」は何となく出してみたかったので…。
12.話にならない
スコープ越しに標的が倒れたのを確認して、ニールはライフルを構える体勢を解いた。今日の仕事はこれで終了、だ。
大して手こずりもしなかったなと、銃器を片付けながら思い返す。まぁ、こちらはライフルで狙い打っているのだし気づけないのは仕方ないだろうが、今回は本当にトントンとスムーズにいった。人混みにも入らず、裏路地からも出ず、こちらから見た死角にさえ入らなかった彼に、ちょっとした感謝を送りたい気持ちである。
お陰で思ったよりも時間が余ってしまった。
帰って本でも読むかと、荷物を取り上げようとして、瞬間、動きを止めた。
気配。
「…そこにいるのは誰だ?」
出入り口の部分に背を向けたまま、拳銃に手を伸ばしながら声を上げる。もしも一般人なら対応の仕方もあるが、これが同業者だったら。その時は……カチャリと、拳銃からセーフティを外す。
何の反応もない、けれども確かに気配のあるそちらを、ニールはチラリと視線だけ寄越して確認した。そうして、緊張をほんの少しだけ解く。
そこにいたのは、まだ小さな子供。
白い服を着て、自分よりも小さな背丈で、長い前髪が顔の半分を覆っている、子供。この辺りの住人かと一瞬考えたが、直ぐに違うなと打ち消す。彼の色づいた肌の色を見れば、それは一目瞭然だった。
懐に拳銃を隠しながらくるりと体を反転させ、ニールは子供と向かい合う。
「俺に何か用か?」
「……は……か…?」
「ん?」
小さな声で俯かれたまま紡がれた言葉に、ニールは眉を寄せた。上手く聞き取れない。
もう一度言って欲しいと、子供に向かって言おうとした、その時。
子供が顔を上げた。
「テメェは強ぇのか?」
金の目と目があった瞬間。
ニールは銃を取り出し子供の方へと銃口を向けていた。
分かる。これは危険な相手だ。あの目の奥……そこに見えた、あのどす黒い狂気は、危ない。コイツは世界に出して良い存在ではないのだと、頭のどこかで警報が鳴っていた。放っておけばきっと何かをしでかすだろうと、直感が告げていた。
そんな自分の反応に子供は苦笑して、両手を広げて見せた。
「オイオイ、最近のヤツは丸腰の子供に銃口を向けるのかよ?」
「お前は普通じゃないだろ」
「普通じゃなかったら子供でも銃口を向けるって?そりゃ良い判断だな」
「……何が言いたい」
「別に?良い判断を良い判断だと、俺は言っただけだぜ?」
それがどうしたよ?と笑うその笑みに、ニールは酷く嫌な気分に襲われた。あの笑みは人の神経を逆なでする笑みだ。そして、それをあの子供は分かって浮かべている。
全く、何という子供だ。
自分も世間一般では子供と形容される年齢であるにもかかわらずそう呟いて、改めて銃口を真っ直ぐ子供の眉間へと向ける。この子供は危険だ。その認識に変わりはなく、ただ先ほどとは違うのは……見過ごせば、自分が逆にやられるかもしれないという、その懸念を抱くようになったことか。
いつの間にか、子供の両の手にはナイフが握られていたのである。
それに視線が向けられていると分かったのか、子供はさらに笑みを深くした。さらには、そのナイフを軽く振ってみせる。
「どうするんだ?テメェが一発で俺を殺せなかったら、俺はテメェを殺すかもしれねぇ」
「なら、一発で殺せば良いんだろ」
どこまでも舐めた様子の子供に苛立ち交じりに答え、ニールは、そのままの感情で、引き金を引いた。
それは本来ならば子供の眉間に当たり、そこを中心に真っ赤な花を咲かせるはずだった。
けれども子供にそんな事態は起こらず、とっさに二発目を撃とうとした自分の喉もとに、ただただ冷たいナイフの刃が突きつけられただけ。
そのナイフに何かを弾いたような後を見て気付く。弾いたのか、あれを。
「どこに飛んでくるか分かってたからな、それなら弾くのくれぇ簡単だぜ?」
「…どうすんだ?俺を殺すのか?」
「殺さねぇよ」
すっとナイフを放し、子供はつまらなさそうに言った。
「話にならねぇな、本当。やるんならどうせ、もっと手応えのあるヤツと戦いてぇのによ」
「…そりゃ悪かったな」
「気にすんなよ、別に期待してたわけでも無ぇ」
ひら、と手を振って、子供はそのまま立ち去っていった。
ハレルヤ登場というね。ちょっと、対決してみて欲しかったというか、それだけの話。
大人になった後の二人が本気で戦ったら、どっちが勝つのでしょうかね…?