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「思うにね、さっきからずっと出口とか入り口とかを探しているんだけれど、そういうのが目に見えてない場所なんじゃないかな」
「それは僕も思ったよ…けど、それじゃあ本当に出られないし…」
「大丈夫だよ、キュリオス。見えていないだけ、だから」
ニコリとアレルヤが笑い、発する言葉を聞いたミレイナは、これは自分が出て行ける領域の話ではないのかもしれない、と思った。そういう『目に見えないけれど確かにある物』というのは彼らのような不思議な力を持つ人ビトの専門であり、何の能力もない自分には分からないことだと知っているから。
それは、あの人間と異端とが一緒に暮らしている街に住んでいるとよくよく分かることだ。自分たちに出来ないことが異端には出来たりする。その逆も、滅多にないけれど無いことはない。
つまりは役割分担。そういうよく分からない物は彼らに任せるとして、ミレイナはミレイナで出来ることを探すことにする。
といっても、自分に出来ることと言えばせいぜいが機械いじりや修理くらいの物。ハロやHAROにはそれらは必要ないのが現状だ。
となると。
ミレイナは、つ、と壊れたアリオスの方を向いて、心を決めた。
それからハロの方を向く。
「ハロ、修理道具を出して欲しいです」
「リョウカイ!リョウカイ!」
「出来ればいつものセットを、です」
「セット!セット!」
耳部分を開閉させて答えていたハロは、ミレイナからの命に従って直ぐさま工具のセットを出現させた。いついもと全く変わらないセット内容だ。
よし、とそれを手にとってやる気を出して、ふと、残り三名から唖然とした視線が向けられていることに気付く。
「どうかしたですか?」
「え……あ…あのね…」
「あぁ、ミレイナが何をするか分からないです?」
「修理をしようって考えてんのは分かるぜ」
「…では何が疑問なのです?」
「僕らが気にしているのはね……それ、なんだけど」
ついと指を向けられた方にあるのは、ハロ。
これがどうかしたのかと、ミレイナは口のような形で走っていた線というか……その部分が開いているハロを眺めて首を傾げた。
「これが何ですぅ?普通ですよ、普通」
「こんなんが普通でたまるか!」
「っていうかハロって開いたんだね…口」
「あれって口なの……?」
未だに納得できていない様子の彼らを不思議に思いながら、ミレイナは開いたハロの口部分の中に手を入れて、他の修理器具を取り出していく。中には修理のために絶対必要となる材料もあった。
「とありあえずですね、ハロを作るときに何でも出来るようにって頑張ったんですぅ」
「何でも出来すぎだろ!?」
「でもハイテクって憧れるよね…ハレルヤの言うとおり、ハイテクすぎるけど」
「ハロって凄かったんだ……」
「むぅ……」
それぞれが思い思いの感想を言う中で、ミレイナは少し不満だった。どうして彼らはそんなに今のハロの状況が『変』だという様に話すのだろう……納得できない。
絶対にこのくらいは普通なのに。
釈然としない物を抱いたまま、それでも、ミレイナはアリオスの破損部を調べ始めた。