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「大佐ぁー!お客さんを連れて来ちゃいましたー!」
「だから大佐ではないと…」

 何度言ったら分かるんだ、と言おうとして。
 帰ってきた赤毛の青年が言った言葉に引っかかりを覚えて首を傾げる。

「…客?」
「はい!昔からの顔なじみです!」

 その言葉に、自然と表情が引き締まるのを感じた。
 彼の『昔からの顔なじみ』というのは、自分が彼を保護する切っ掛けとなったあの事件の、関係者以外には無い。それ以前の記憶はないようだし、それ以降は彼と一緒に行動をしているので、彼の知り合いのことは分かる。

 だから断言するが、その間に彼が顔なじみと呼べるほどの仲になった相手はいない。
 となれば、その客というのは。

「入って来いよ、刹那」
「……」

 コーラサワーの声に促されるように部屋に足を踏み入れた影に、思わず目を丸くする。
 思ったよりも、小さい。

「…君が?」
「……違う。私はダブルオー」
「刹那というのは俺だ」

 首を振った彼女の後ろから現れた青年に、あぁ、これなら納得できると頷いた。こちらの彼の方なら分かる……が、ちょっと思うのだが、もしかしなくとも彼は無理矢理にここに連れてこられたのではないだろうか。

 不機嫌ではないが面倒そうな表情を浮かべる刹那、という相手に、とりあえず、と向かいのソファーに座るように促す。客人を立たせたままというのには、もてなす側としていささか問題があるだろう。

「菓子が無くて悪いな」
「気にしないでもらって構わない。どうせ、しばらく菓子は見たくないんだろう?」
「…何故分かるんだ?」
「この炭酸が菓子を売る店で働いていたからだ」

 それと、コイツの証言、と刹那は息を吐いた。
 証言?と思っている間に彼は続きを紡いだ。

「コイツは、自分の気に入った相手に自分の好きな物を贈りたがる傾向にある、ように見えるからな。そしてコイツが自分の嫌な仕事をするわけもない。そういうことだ」
「刹那、それって俺に我慢が出来てないって言ってるのかよ?」
「他に何と捉える?」
「……お前って時々嫌なヤツだよな」
「正確に判断していると言ってもらいたいんだが」

 これは間違いなくコーラサワーよりも刹那の方が正しいだろうと、公平な目で二人を眺めながら思う。連れの彼は、たまに自分のことをちゃんと理解できていないときがあるのである。

 にしても、と二人の様子を見てフッと笑う。こうやって、自分以外と無邪気に触れ合っているコーラサワーを見るのは悪い気持ちではない。
 と、不意に服の袖を引かれて視線を下ろす。
 いつの間にか近くに来ていたダブルオー、という彼女が、そこにいた。

「……名前」
「私の名前、か?」
「…そう」
「私の名前はカティ・マネキンだ」

 以後よろしく、と微笑むと、彼女はこくりと頷いた。

 

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