[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
久々すぎる桃色のお題です。
今回はスメラギさん。
13.気分転換
その光景は、この場所においては有り得ない物であるはずだった。
しかし目の前には紛うことなくその光景が広がっており、スメラギは多大な困惑を抱くことになった。ちなみに場所は自室である。
そして、目の前に広がっている光景というのは、つまり。
冷蔵庫の中の酒のボトルが、全てそろってジュースのボトルになっているのだった。
……これは中々。
「誰かしらね…」
腕を組んで、それを見る。
部屋の扉の鍵はかけていたはずだから、鍵を開けることが出来る誰かが犯人である可能性が高い。ジュースのボトルを持ってきて、酒のボトルを撤去するのは一人では無理だろうから、恐らく複数犯だ。
そうなると、まず、鍵を開けることが出来る人間から絞っていくべきだ。
ハッキングを得意としているクリスティナなら、電子系の鍵の鍵開けくらい出来るだろう。ティエリアも出来るに違いない。ヴェーダにどれ程の機能があるかは分からないが、少なくとも暗証番号を探るくらいはお手の物だろう。あと、可愛い顔をして何でもやってのけるハロたちも同様に。
となると、あれか。
誰でも出来るのか、これ。
「…鍵の意味って有るのかしら」
一人呟いてみるが、答えなんて誰から訊くまでもなく分かっていた。完全に否、だ。
それはともかく…と、スメラギは何となくジュースの入った透明なボトルを持ち上げて考える。どうすれば、犯人を見つけることが出来るのか。つるし上げに興味はないものの、取られた酒はどうにか取り戻さなければならない。
ほんの少しの時間だけ悩み、とある一人のクルーの端末に通信をつなげた。
『…どうかしたんですか?』
「いえ、ちょっと訊きたいことがあって」
『訊きたい、事?』
「えぇ」
頷いて、スメラギは困惑した表情を浮かべる画面の中のアレルヤに微笑んで見せた。大したことではないのだとアピールするために。
「私の部屋のお酒が無くなってるんだけど、知らない?」
『…あ、その』
その言葉の、効力は物凄かった。想像以上と言っていい。
『ぼ…僕には分かりかねます……いえ、絶対に分かりませんし知りません』
酷く狼狽した表情で、こんな事を言ってくるのである。
かかったと、スメラギはこっそりと笑った。嘘を吐くのが苦手なアレルヤだから、もし仮に関わっていたりしたら隠し事は出来ないだろうと踏んでみたのだが…案の定。分かりやすくて扱いやすくて本当に良い子だ。
だが、関わってはいても主犯ではないだろう。進んでこういう事が出来る相手でもない。
「アレルヤ、大丈夫。全てを教えてくれたらそれで良いの」
『だっ…だから知りませんってば!』
「安心して?貴方が教えてくれたなんて誰にも言わないわ」
『どーだか』
あら、と、返事をした彼の口調が変わっていることにスメラギは目をぱちりと開いた。誰なのかはよくよく分かるのだが、まさか彼が今ここで出てくるとは想定外である。もしかしなくても、彼は彼を含めて、深く関わっているのかもしれない。
今の彼…ハレルヤなら、有り得そうだ。
「貴方が私のお酒を?」
『違ぇよ。あのロリコンだ』
「ロックオンが?一体何でまた」
『罰ゲームだ』
ひょこんと画面の中に入ってきた刹那が言う。…あぁ、いたのか。
『マイスター全員でゲームをしててよ、メガネが一位になってロリコンがビリになったんだよ。だから罰ゲームって事だ』
「それが、私の冷蔵庫の物をすり替える事、と」
『たまには酒じゃなくジュースでも良いんじゃねぇの?』
『確かに、もう少し控えた方が良い』
「私は大丈夫なのだけど…それより、そのお酒はどうしたの?」
罰ゲームでロックオンが、ということは、ロックオンが持っている可能性が高いが。
どうせ無事ではないだろうと思って訊いてみると、思った通りに逸らされる刹那の瞳。
『…それまで含んで罰ゲームだ』
「…まさか」
『そーだよ。あれは全部ロリコンが飲んだ』
「…良くやるわ」
結構な量があったはず、なのだけれど。
怒る気もせず、いっそ見事だとスメラギは拍手をした。
何気にロックオンが憐れ…。