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やっと予定の半分程度。
突発的仮想物語 4.特別授業
この学校施設を朝、『素晴らしい』と形容したのには理由がある。
それは、この施設が決してまともな教育機関ではないことから来る。
つまり、ここは。
非合法な事を行う場所、だ。
どうしてそのような場所の教師役をしているのかと、ため息を吐きつつも苛立たしく思いながらも、それでも刹那はきっちりと生徒たちに銃の取り扱い方法、射撃のための知識などを教えていた。
何故なら、そうしなければならないからだ。銃器の扱い方も知らずに触れるのは酷く危険であり、ならば自分が取るべき道はただ一つしかなかったというわけである。
もっとも、自分が得意としているのはどちらかというと、銃撃ではなく剣などを用いる近接戦闘なのだが。
まぁ、教師となっているのだから仕方はない。
かつて、銃撃を不得手としていた頃の自分では無理だっただろうと思いつつ、武士仮面の『埋め』として共に指導をすることになったライルと、その周りにいる色々な生徒たちを眺める。意外とライルはちゃんと先生をしているらしかった。丁度良い。自分は、あまり教師には向かないし。
しかし、そうであっても寄ってくる生徒は数名いるわけで。
武士仮面に酷く気に入られていたらしい四名は、しっかりと自分の傍にいた。
「刹那、銃弾はコレで良いのか」
「あぁ、大丈夫だ、セラヴィー」
頷いて、それからダブルオーの方を見て力が抜ける。
……確か、このクラスは二年ではなかったか。
「ダブルオー、それそのまま撃ったら暴発する」
「そうなのか」
「そうだっての。ったく…お前はどうしてこうも銃器系が苦手なんだよ」
「別に俺がそれを苦手でも問題はない」
呆れかえっているケルディムの言葉に、ダブルオーはさらりと返した。
「お前がいるだろう」
「…や、俺がいつも一緒にいるとは限らないっていうかな」
「問題ない。その時はアリオスと一緒にいる」
「え?僕?」
「これで大丈夫だろう」
どうだ、と言わんばかりのダブルオーの様子に、刹那はとてつもない既視感を覚えた。
…そういえば自分も、銃撃が苦手な頃はあんな感じだった気がする。言葉とか諸々がいくらか違うとは思うが、全体的には一緒だ。
これで彼も近接戦闘を得意としていたら同じすぎで笑えるのだが。
そんなことを思っていると、銃器の整備及び準備が終了したらしいケルディムとアリオスが立ち上がった。それらが終了したら自分で自由に射撃訓練が出来るのである。
射撃訓練用のスペースに向かう二人の背を見ながら、ポツリと呟く。
「…意外だな」
「何がだ?」
「アリオスだ」
とてもオドオドとしていて、争うことが苦手そうな彼であるというのに、銃を扱う手つきはしっかりとしている上に素早く、迷いがなかった。ダブルオーが全然出来ていないこと以上に、これには驚かされた。
驚く要因はまた、別にもある。
手元にあった成績表をぱら、と捲って刹那は首を傾げた。
「銃を扱うのは手慣れているようだが…銃撃は下手なのか?成績が頗る低いが」
「あぁ……それは見ていれば分かる」
「それは…」
どういうコトだ、と全て言い終わる間もなかった。
的に向けて銃を向けていたアリオスが、急にガクリと崩れ落ちたのである。
「アリオス!?」
「…あう」
慌てて駆け寄ると、彼はどこか落ち込んだ様子で口を開いた。
「……可哀想で撃てないよ…」
「………は?」
「だって、」
思わずその言葉を聞き返す間にも、彼は潤んだ目でこちらをじっと見返していた。子犬みたいだと思ったがそれは口にはしない。
「絶対に必要でもないのに打たれるなんて…可哀想」
「…」
「必要があったら、撃つしかないけど。でも、必要ないのに撃つのは嫌だと、思って」
「……そうか」
やはり、争いは嫌いらしい。
ただ、板で出来た的にまで『可哀想』と言っていたら、他のことも色々と出来ないのではないだろうかとの危惧は覚えた。
裏社会的場所なのに結構平和。