式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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ちょっと間が空きましたが。
自分は、酷く異端だ。
恐らく妖としても、竜としても、意思を持つ存在としても。
たとえ、自分が人間であっても異端であることは変わらない。
何せ、政宗は、囚われることに甘んじているのだから。
「政宗、閉めるぞ」
「おう」
元就の確認に肯定を返すと、静かな音を立てて障子が閉じた。
ここは、元就の家……の中にある離れである。一部屋しか無く、中にはちょっとした事情により台所がある、生活にはそれ程不便しないくらいは設備の整っている、その程度の何でもない離れ、だ。
ただし普通の離れと違うのは、ここが妖を封じるための祠の役割を果たすこと。
そして、封じられるは。
「…済まぬ、政宗」
「謝るなよ。お前が悪いわけでもねぇ」
「だが、これは毛利家の業。ひいては毛利家当主たる我の業でもある」
「ならテメェの分くらいは許してやるから、気にすんな」
「気にするな、とは……無茶を言う」
「今に始まった事じゃねぇだろ?」
ニヤリと笑ってやると、部屋の外側にいる元就は静かに苦笑したようだった。
実際、政宗は元就に業があるとしても許す気でいる。彼は、自分を外に連れ出している。それだけで充分なのだから。
この場所に自分は縛り付けられている。内側からだろうと外側からだろうと、政宗にはこの離れの戸を開くことは出来ない。触れることさえままならない。封じられている者にその様なことが出来ては意味がないのだから、それもまた当然。
開くだけなら強い力を持つ者なら妖でも出来る、ここだが。
開いた上で、封じられている者を連れ出せるのは毛利家当主である元就だけだ。
だからこそ彼は自分を時折街へと連れ出す。もちろん封じられている身であるので、どうしてもここに戻らなければならないのだが。そうしなければ、障りが出る。
「今日はそこそこ楽しかったと思わねぇか?」
「まぁ、この屋敷で何もせずに過ごすよりは有意義な時間であったろうな」
「…お前、本っ当に毛利家嫌いだな」
「違うぞ、政宗。我は毛利家は好いておる。親族どもが気に入らぬだけだ。そして、」
「人間より妖の方が好き、って?」
続く言葉が容易に想像できて、政宗はクツクツと笑った。
それは、彼の持論だった。毛利家の話共々。
「妖祓うヤツの言う台詞じゃねぇな」
「だが事実なのだ、仕方有るまい」
「だな」
「…そなたはどうなのだ?」
「俺?が、何だって?」
「政宗は、人間が好きか?嫌いか?」
「…そりゃまた」
突拍子もないことを。
思わず呆れたが、元就の声音は真剣そのものだったから、こちらも真剣に答えやることにした。他人の誠実に不誠実を返すのを政宗は良しとはしない。
少し考えて、呟く。
「…多分、好きではねぇ」
「…そうか」
「まぁな。一応封印は人間にされた。力を奪われたのも人間に、だぜ?これで好きになれっていう方が無理だろ…けどな」
例外という物はどこにでもある。
もちろん、ここにも。
「人間全体を見たら好きじゃねぇけどな、個人個人を見たらそうでもないヤツらもいるぜ、そりゃな。例えば幸村だろ、慶次もそれ程悪いヤツじゃねぇし、上杉のおっさんとかもだな。それに…って挙げていきゃ、何人でもいるぜ?もちろん、お前も入ってる」
「…我は、そなたを封じた一族の者なのだがな」
「そんくらい分かってんだよ。それでも関係ねぇってことだ」
関係ないと言えるくらいには、政宗は元就を気に入っている。それに、だ。そもそも彼がいなければ他の人間と知り合うことなど無かっただろう。その点から見ても、自分は年若き当主に感謝することも出来る。こんな個性豊かな愉快で面白いのたちに出会えずに終わるというのは、とてつもない損なのだから。
むしろ他の要因も含めて感謝しているくらい、なのだが。
しかしそれは伝えるべきか黙っておくべきか。思い悩んでいると、ポツリと元就が呟くように言葉を零した。
「政宗、我は」
とても真摯な響きに、静かに瞼を下ろす。
「我は、約束を守る」
それだけを言って、彼は離れから遠ざかっていった。そろそろ本邸の方に戻るのだろう。毛利家当主がいつまでもこのような場所にいることは出来ないのだから。
「約束を守る、ねぇ」
政宗は立ち去る間際の彼の言葉を反芻し、薄く笑った。
「楽しみにしてるぜ、松寿丸」
これでこの話は終了です。
…まだ続きますが。
恐らく妖としても、竜としても、意思を持つ存在としても。
たとえ、自分が人間であっても異端であることは変わらない。
何せ、政宗は、囚われることに甘んじているのだから。
「政宗、閉めるぞ」
「おう」
元就の確認に肯定を返すと、静かな音を立てて障子が閉じた。
ここは、元就の家……の中にある離れである。一部屋しか無く、中にはちょっとした事情により台所がある、生活にはそれ程不便しないくらいは設備の整っている、その程度の何でもない離れ、だ。
ただし普通の離れと違うのは、ここが妖を封じるための祠の役割を果たすこと。
そして、封じられるは。
「…済まぬ、政宗」
「謝るなよ。お前が悪いわけでもねぇ」
「だが、これは毛利家の業。ひいては毛利家当主たる我の業でもある」
「ならテメェの分くらいは許してやるから、気にすんな」
「気にするな、とは……無茶を言う」
「今に始まった事じゃねぇだろ?」
ニヤリと笑ってやると、部屋の外側にいる元就は静かに苦笑したようだった。
実際、政宗は元就に業があるとしても許す気でいる。彼は、自分を外に連れ出している。それだけで充分なのだから。
この場所に自分は縛り付けられている。内側からだろうと外側からだろうと、政宗にはこの離れの戸を開くことは出来ない。触れることさえままならない。封じられている者にその様なことが出来ては意味がないのだから、それもまた当然。
開くだけなら強い力を持つ者なら妖でも出来る、ここだが。
開いた上で、封じられている者を連れ出せるのは毛利家当主である元就だけだ。
だからこそ彼は自分を時折街へと連れ出す。もちろん封じられている身であるので、どうしてもここに戻らなければならないのだが。そうしなければ、障りが出る。
「今日はそこそこ楽しかったと思わねぇか?」
「まぁ、この屋敷で何もせずに過ごすよりは有意義な時間であったろうな」
「…お前、本っ当に毛利家嫌いだな」
「違うぞ、政宗。我は毛利家は好いておる。親族どもが気に入らぬだけだ。そして、」
「人間より妖の方が好き、って?」
続く言葉が容易に想像できて、政宗はクツクツと笑った。
それは、彼の持論だった。毛利家の話共々。
「妖祓うヤツの言う台詞じゃねぇな」
「だが事実なのだ、仕方有るまい」
「だな」
「…そなたはどうなのだ?」
「俺?が、何だって?」
「政宗は、人間が好きか?嫌いか?」
「…そりゃまた」
突拍子もないことを。
思わず呆れたが、元就の声音は真剣そのものだったから、こちらも真剣に答えやることにした。他人の誠実に不誠実を返すのを政宗は良しとはしない。
少し考えて、呟く。
「…多分、好きではねぇ」
「…そうか」
「まぁな。一応封印は人間にされた。力を奪われたのも人間に、だぜ?これで好きになれっていう方が無理だろ…けどな」
例外という物はどこにでもある。
もちろん、ここにも。
「人間全体を見たら好きじゃねぇけどな、個人個人を見たらそうでもないヤツらもいるぜ、そりゃな。例えば幸村だろ、慶次もそれ程悪いヤツじゃねぇし、上杉のおっさんとかもだな。それに…って挙げていきゃ、何人でもいるぜ?もちろん、お前も入ってる」
「…我は、そなたを封じた一族の者なのだがな」
「そんくらい分かってんだよ。それでも関係ねぇってことだ」
関係ないと言えるくらいには、政宗は元就を気に入っている。それに、だ。そもそも彼がいなければ他の人間と知り合うことなど無かっただろう。その点から見ても、自分は年若き当主に感謝することも出来る。こんな個性豊かな愉快で面白いのたちに出会えずに終わるというのは、とてつもない損なのだから。
むしろ他の要因も含めて感謝しているくらい、なのだが。
しかしそれは伝えるべきか黙っておくべきか。思い悩んでいると、ポツリと元就が呟くように言葉を零した。
「政宗、我は」
とても真摯な響きに、静かに瞼を下ろす。
「我は、約束を守る」
それだけを言って、彼は離れから遠ざかっていった。そろそろ本邸の方に戻るのだろう。毛利家当主がいつまでもこのような場所にいることは出来ないのだから。
「約束を守る、ねぇ」
政宗は立ち去る間際の彼の言葉を反芻し、薄く笑った。
「楽しみにしてるぜ、松寿丸」
これでこの話は終了です。
…まだ続きますが。
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