[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
とりあえず一段落。
「なぁなぁ、さっき城下を駆け抜けていく元就と佐助の姿があったんだけど…」
「っち…運良く香が絶えたときに来やがって」
「あれ?ゆっきー…じゃない、の、もしかして」
「That’s right」
「その言葉遣いは独眼竜?」
「まぁな」
「えっと…じゃあ」
と、突然部屋に入ってきた慶次は政宗(元親)と元親(佐助)の方を指さして、あぁと何か分かったような表情を浮かべた。
「そっちは西海の鬼?で、そっちは保護者さんか」
「保護者っての止めてくんない…?」
「だって保護者じゃね?」
「…ちょっと待て」
あまりに普通に返答を返す慶次に、思わず政宗(元親)は慶次の肩に両の手を置いた。
置かれた本人はキョトンとしていて、どうして自分がこのような行動をしたのか分かっていないらしい。よく見れば彼の、今は頭の上に乗っている、あの小さいサルまで同じような態度を取っていた。こちらは全てが分かっているわけではなく、主人の見よう見まねだろうが。
それはともかくとして。
「オマエ、どうしてそうあっさり受け入れてんだよ」
「え?だってほら、やっぱ外見より心だろ?」
「…あぁそうかい」
あっさりと、心の底からそう思っていると言わんばかりの表情に、思わず脱力。
流石は恋だの愛だの言っている人間、というわけだろうか。人の心に関しては少しばかり自分たちよりもよく分かっているらしい。
だがしかし。
幸村(政宗)は腕を組み壁にもたれたまま、どこか呆れたように口を開いた。
「んで慶次、本当は何でだ」
「追いかけっこに興じてた元就の姿した幸村に訊いた」
「元就はそれどころじゃない状況だったろ」
「確かにねー。鬼気迫るってあのこと言うんじゃない?ちょっと勢いに押されて超えかけられなかった、俺」
……真相はそれなのか。
さっき少しでも感じてしまった自分の感心を返せ。
そんなことを思っていたからだろうか、まだ慶次の肩に乗せていた手に思わず力が入り、彼から苦情が入る。
「ちょっと、力押さえて押さえて。政宗の握力強いんだし」
「…オマエなぁ」
「鬼の旦那、何言っても無駄じゃないかと思うんだけど」
「そりゃそうだけどな。っていうかその姿でそれ言うの止めてくれねぇ?」
「おっと、こりゃ俺様としたことが」
失態失態と言わんばかりに笑う元親(佐助)に何とも言えない気持ちを抱く。誰だってそうだろう。自分が、自分でない表情をしていたら。
……あぁ、やっぱり今回は素直に元就に同情しておこう。
幸村が中に入っているなんて、彼にとっては不幸以外の何者でもない。
出来ることなら、幸村が元就の体のまま好き勝手をしすぎていなければ良いのだが。今回ばかりは珍しく、心の底から同情したい気分だ。
「…早く香の効果が戻れば良いんだけどな」
「あ、そういえばあと何分くらい?」
「知らねぇよ。だいたい誰がそんなん測ってんだ」
「ごもっとも。さて…けどまぁ、半分くらいは経ったよねぇ?」
元親(佐助)の言葉に、政宗(元親)は首を傾げて見せた。
「それ以上じゃねぇか?」
「もう秒読みだったりしてね」
冗談めかして慶次がからからと笑って、次の瞬間。
「む!?某はどうしてこの場所に!?」
幸村が、叫んだ。
突然のその事態に、元親は思わず政宗と顔を見合わせ…気付く。
「戻って…んのか?」
「みてぇだな」
戻ったのだと実感がわいたからか、政宗は肩をグルグルと回したり手を握ったり開いたりしていた。ちゃんと自分が自分の意思で動くのを確認しているのだろうか。
元親は、そのようなことはしなかった。馴染んだ感覚がそこにあるだけで、もう何だか全てが良くなってしまったのである。
自分の体というのが、どれほどありがたい物か。
今日、改めて知った気がする。
「さて、あとは城下の二人か」
「その内帰ってくるんじゃねぇか?あの二人なら問題ねぇだろ」
元就辺り、慣れない全力疾走で倒れ込んでいるかも知れないが。まぁ、それは佐助が持って帰ってきてくれるだろう。
…そして実際、しばらくしてその光景が現実になり、大爆笑することになる、的な。
おまけも出来ましたので、明日にでもupします。