香の効・おまけ

元就様お疲れ様でした。

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　ふっと、風景が一変したのを見て取って、佐助はピタと足を止めた。
　服装やら何やらを見ている内に、どうやら元の体に戻ったのだと分かる。
　正直、ホッとした。西海の鬼の体を使うという経験は貴重ではあったけれど、いつまでもやっていたいと思うような体験ではなかったから。
　しかし、ということは。
　佐助は視線を前方へと転じ、そこでへなへなと崩れて大地に手をつく日輪の申し子の姿を確かに見た。どうやらあちらも戻ったらしい。そして、幸村の無茶な使い方に耐えられなかった体をどうしようもなく思っているのだろう。
　ご愁傷様といえば、ご愁傷様、だが。
　とりあえず歩けないだろうなぁと推測しながら、佐助は元就の方へ向かった。
「大丈夫？」
「あやつは…一体何なのだ…どうしてあの短時間でここまで疲れておる……」
「あぁ、まぁ旦那はいつでも一生懸命だから」
「一生懸命すぎるであろう…体の節々が今から痛いぞ」
「明日は筋肉痛だろうねぇ」
　ご愁傷様、と今度は口に出して言ってやると、ギロリと睨み付けるように向けられる、刺さりそうな鋭さの視線。怖い怖いと肩をすくめると、さらに目つきは鋭くなった。
　だがまぁ、そんな筋肉痛で動けそうにもない体で凄まれても。
　生憎と、自分はまだまだ平気なのである。
　今なら、いとも簡単に元就を殺せるだろうなぁと思うのだけれど、流石にそれを実行しようとは思わない。思えないというのが正しいだろうか。現状が幸村を原因として出来上がっている物であるから、同情心の方が強く前に出てしまうのである。
　忍びがコレで良いのかというと、コレで、良い。やるときは容赦なくやるし、やらなくて良いならやらない。そのメリハリがようは、大切なのである。
　そして今はやらなくて良い時。
　そんな時にまで仕事をしていては、とても割に合わない。今でさえ幸村の保護者役になってしまうという、割に合わない仕事をしているのだし。
「ところで毛利の旦那」
「…何ぞ」
「歩ける？」
「……！」
「…あぁうん、分かった」
　短く端的に質問してみたのだが。
　その表情で読み取れた。とてつもなく簡単に。
　…歩けないらしい。
　それも仕方はないよなぁと思いつつ、一つ、提案と言わんばかりに、そして実際に提案はあるのだけれど、佐助は指を一つピンと立てた。
「じゃあさ、俺様が背負って帰ってあげようか」
「…情けは不要ぞ」
「情けじゃなくて、これはけじめ」
「……けじめ、と？」
「そうそう」
　こくりと頷いて、佐助は腕を組んだ。
「あのねぇ、今回のアンタのその状況は、つまりは旦那のせいでしょう？」
「つまりと言うまでもなくそうであるが」
「…とにかくね、そういうことなら放っておくワケにも、ねぇ？」
「ふん…そういうことか」
　元就はフッと、笑った。
「なかなかに保護者も大変であるようだな」
「…まぁねぇ…保護する対象がねぇ…いや、保護しなくても良いけど、あの人」
　保護しなくても勝手に敵をなぎ倒すけど。
　たまにやりすぎて逆に迷惑かけてたりするけど。
「…とりあえず、後始末役だからね」
「そなたも苦労して折るということは分かった」
　元就は頷き、佐助の手首を勝手に握って立ち上がった。
「ならば使わせてもらおう、そなたを」
「あらら、一気に話が早くなったねぇ」
「断られては寝覚めが悪いと言うことであろう？忍に貸しを作るのも一興」
　けじめを付けさせてやる、ということか。
　何とも言えず、彼らしいような。
　…実際は、それに足して自分が本当に動けない、ということがあるからだろう。利害関係が一致したという、コレはそれだけのことなのだ。
　それだけだが、大分ありがたい。
「んじゃ行きますよ、っと」
「あぁ、一つ」
「何？」
「馬鹿鬼に見られる前に下ろせ。あやつに我が負ぶわれておる姿など見せれるはずも無かろう？」
「…うんまぁいいけど」
　どのみち体中が痛くて動けない姿を見せるのだから、あまり変わらないのではないだろうか。そう思ったけれど、賢明にも佐助は何も言わなかった。

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元就も武将だから運動は出来る方だと思うのだけれど、幸村と比べたらダメだと思うんだ。ゆっきーは別格だよ、色んな意味で。