弟妹同盟の誕生 side：スクアーロ

本誌ではスクがスクがスクが…という状況ですが（2009/09/20現在）、そう言うときこそやっぱり安心できる話を挙げたいのです…平和なの平和なの。
ということで弟妹同盟誕生話。ラストです。

---

　今日は不思議な日だと思う。
　任務とか餓鬼の使いとかをやらされた帰り、雲雀とクロームにあって、今、クロームの方と一緒に食事をしているのだ。これを不思議といわずに何という。
　まぁ、こういう状況にしたのは自分の行動にも原因があるだろうとは思う。だが、腹の虫を鳴らせるまで腹を空かせている相手を、今は敵対しているわけでもな相手を放っておくのも後味が悪いではないか。
　むすびを手にしながら、スクアーロはサンドイッチを食べるクロームを見た。
「苦手なもんとか入ってねぇな？」
「うん…そういうのは、基本的に大丈夫だから」
「へぇ？嫌いなモンもねぇのかぁ？」
「ある、けど…残さないよ。ちゃんと食べるもの」
「そりゃ良い。うちのヤツらに爪の垢でも煎じて飲ませてぇぜ」
「…うちの、ヤツ？」
「ボスさんたちのことだぁ」
「ボス…あ…ザンザス」
「あと、ベルだなぁ」
　マーモンは、好き嫌いはあっても『勿体ない』の一言を発動させば残すことなく全て食べるから良いのだけれど。レヴィはあの性格だしルッスーリアも同様だからあの二人も、大丈夫なの、だが。
　問題はザンザスとベルフェゴールだった。
　あの二人は、嫌いな物はとことん手を付けない。食えと言っても食わないし、なら、と強硬手段に出るとなると片方はグラス、片方はナイフが飛んできて食事どころではなくなるのが常。いい加減にもっと我慢という物を覚えろと言うに。
「アイツら、特に野菜を食わねぇ」
「嫌いって言うか…食べる気が、無い？」
「その方が正しいかもなぁ。とにかく食べねぇんだよ、アイツら」
「……大変だね…でも、どうしてスクアーロがそんな心配を？」
「いつの間にかそういう係に任命されてんだぁ、ルッスに」
「…そっちの晴れの人、自分がやるって言わないんだ」
「それは俺も思ったぜぇ」
　だが、ルッスーリア曰く『こういうのは適材適所なのよん』だそうで。
　最期の『ん』が要らないと思ったのはさておいて、よく分からないがそのまま事態に流されていつの間にか、という状況なのである。
　…もっと理由をしつこく訊いておけば良かったか。
　などと思いながらもルッスーリアの言葉をクロームに伝えると、彼女はどこか納得した表情を浮かべた。
「そっか…」
「何か分かったのかぁ？」
「それって多分…」
「ねぇ」
　と、クロームが返答しようとしたとき。
　背もたれの後ろに知った気配が立った。
　先ほどから気配の方は感じ取っていたためにスクアーロは驚かなかったが、クロームにとっては突然の登場だったのだろう。彼女は、慌てて振り返った。
「…雲の人」
「君たち、ここで何してるの？」
「昼飯だぁ。お前も食うかぁ？」
「お前じゃなくて雲雀恭弥…もう面倒だし恭弥で良い。で、ちゃんとおむすびはあるの？」
「ある」
「じゃあもらう」
　そう言った雲雀は、スクアーロの左隣に座った。丁度クロームと反対の方だ。
「悪いが飲み物はねぇぞ？」
「良いよそのくらい。…ところでクローム髑髏」
「…何、雲の人？」
「随分と、スクアーロと仲良くなったんだね」
「そう言う雲の人も、だよ」
　二人の話を耳にしながら、スクアーロはサンドイッチを取った。今のところ雲行きが悪い、という事もない会話だし、放っておいても支障はないだろう。命をかけた戦闘になった頃に止めればいい。多少の流血を伴うケンカなど、ヴァリアーの中では日常茶飯事だから気にする気はなかった。
　マイペースに食事を続ける間にも、当然ながら会話は止まらない。
「…そういえばね、雲の人。私、思ったの」
「何を？無駄なことを聞かせるんだったら咬み殺すけど」
「あのね、スクアーロってお兄ちゃんみたい、じゃないかな」
　その言葉に…スクアーロは思わず沈みかけた。だって兄とか一体何だ。
　しかしそんな自分にかかわらず、二人の会話はとんとんと続く。当然のように。
「それはそうだね。クローム髑髏、君も良いことを言うね。あのナッポーとは凄い違いだ」
「ありがとう…あと、ナッポーじゃなくて骸様……」
「細かいことは言わないでよ。…そうだ、じゃあ、スクアーロは僕らの兄って事にしよう」
「あ…良いかも」
　まだ沈みたいと思っていたスクアーロだったが、何か二人が仲良くなっていたので、良いか、ともう、気にしないことにした。

---

というわけで兄任命。おめでとうなのか頑張れなのか、かける言葉は定かではありませんが。