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既に秋ですが、夏の話。そこらへんはどうか気にしないで…。
08.ソフトクリーム
夏、それは熱い日差しが燦々と照りつける、実に面倒な季節。
熱くて熱くて仕方がないこの日々に、アイスやソフトクリーム、かき氷などが必要となるのはごくごく自然な流れだろう。クーラーや扇風機を求める姿勢もまた、当たり前の姿であるはずだ。
だというのに。
「それを求めてきただけなのに、どうして僕が怒られないといけないんだろうね?」
「当たり前だと気付け!」
「えぇぇ?」
何で?とリジェネが首を傾げると、ティエリアがバンッ!と机を叩いた。その弾みに、少しばかり上に乗っていたかき氷が飛び跳ねる。
「良いか!?君と僕とは敵同士であるということを忘れないでもらおうか!そして、君にとってここが敵陣であることもな!」
「細かい事は気にしない方が良いよ、ティエリア」
「細かくなど無い!」
「禿げるよ?」
「なっ……」
流石のティエリアも禿げるのは恐ろしかったらしい。まだ大丈夫そうに見える髪に恐る恐る手を伸ばしながらも、確実に一瞬は言葉に詰まったのを見計らって、リジェネはアイスを平らげ続けていた手を止めた。
たたみかけるなら今、である。
「ティエリアは怒りすぎだと僕は思うんだよね。そんなのじゃ、禿げるとか以前に……ねぇ?」
「……余計なお世話だ」
「そう?対応型としてはやっぱり、気になるって言うか」
「君が気にしているのは僕の名誉ではなく、楽しいか楽しくないかだろう」
「ま、そうとも言うかな」
ふぁあ、と欠伸をしながら答え、アイスを食べる手を再び動かし始める。
やはり、クーラーが効いているところでアイスを食べるのはまた格別の気分を味わうことが出来る。夏においては、まさに極楽浄土と呼べるような状況だ。冬だったら煉獄かどこかだろうとは思うけれども。
冬でも、クーラーでなくてこたつと一緒なら、天国といえば天国になるのだけれど。
全く仕事をせずにだらけていた自分だから断言できる事実だ。
うんうんと頷いていると、ふいに何かに思いついたようにティエリアが顔を上げた。
「…時にリジェネ」
「何だい?」
「どうしてこんなにアイスやソフトクリームやかき氷やらが展開してある」
「あぁ、それはアレルヤに頼んだから」
「な!?」
「いい人だね、本当に。頼んだら直ぐに了承してくれたよ」
最初は少し驚いたような表情こそすれ、直ぐに納得の笑みを浮かべて準備をしてくれたのである。やっぱり彼は面倒見が良い。
ただ、それを見ながらリジェネは一つだけ疑問に思うことがあったのだ。
「ところでティエリア」
「何だ」
「あの時ね、アレルヤがとてつもなく手慣れているように見えたのは僕の気のせいかな」
「あの時……?」
「アイスとかソフトクリームとかかき氷とか出してくれるとき」
「……」
「それってどういうことだろうね?」
それは、自分でさえ不思議に思うほどの手際の良さだったのだ。二度三度、なんて離しではない。少なくとも五、六回くらいは同じ事をしているに違いないと、確信させるほどの手際の良さだったのである。
それから、微笑みながら言われた『やっぱり似てるね』の言葉。
指す事実は、一つだろうとは思うのだが。
じぃっとティエリアを見ていると、彼は、ふいと視線を逸らした。
「…ここまで酷くはないぞ、僕は」
「でも用意とかはしてもらったんだね」
「……否定はしないがな」
「ふぅん。やっぱりアイスとかは必需品だもんね」
「ただ、僕はちゃんと手伝うぞ」
「五十歩百歩って言葉知ってる?」
夏の暑いこの日。
分かったことはただ一つ。
結局何だかんだ言っても、自分たちは似てるらしいということだった。
ティエとリジェネしか出てこない話。この二人の組み合わせは結構大好きです。