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小十郎を尋ねて。
果たして。
「…政宗様が?…まぁ、確かにその態度はおかしくはねぇが…」
小十郎は、どうやらある程度の事情を把握しているらしかった。
今現在の政宗の屍化している状況を伝えてやると、彼は苦笑にも似た表情を浮かべてそう言ったのである。
「片倉先生、一体彼に何があったって言うんです?」
「あのような態度を取るなど、よほどのことがあったとしか思えぬ」
半兵衛が言い、元就が同意すると、小十郎は少し考え込む素振りを見せ、それから口を開いた。その様子から分かることと言ったら、正直に話そうとしていることくらいだった。
「…お前ら、今週の末に参観日があるのは覚えているか?」
参観日。
そういえば、そんなものもあった。覚えてはいたがあまりに些事過ぎて、記憶の片隅の片隅の隅に置き去ってしまっていたが。今週末の、土曜日に。いわゆる土曜参観というやつで、代休として月曜日が休みになる。
まぁ、そうはいっても……このような覚えていて当然のことであろうと、覚えていない面子も当然のようにいるわけであって。
慶次は首を傾げ、元親は腕を組んで考え込んでいた。
「参観日?そんなのあったっけ?」
「そういやプリントもらったような…」
そんな記憶力皆無の二人を冷たい視線で眺め、元就は小十郎に視線を向ける。
「我は当然覚えておるが、我が両親は都合のために来ることは出来ぬと言う話であった。とりあえず誰でも良いから教師によろしくと伝えておけと言われた」
「誰でも、か。この子にしてその親ってところだな」
「…あれ?ちょい待て毛利。思い出してきたけど、確かお前んトコの親ってその日フリーじゃ無かったか?」
「気のせいであろう、馬鹿が」
フッと笑い、元就は続けた。
「我が丁重に頼み申し上げたところ、顔を引き攣らせつつも快く来訪せぬことを誓ったのだ、決して暇というわけでもあるまい」
「いや、それは充分に暇だったんだと思うけど。脅迫でもしたのかい?」
「失敬な。我がどうしてそのようなことを」
丁重に、父の大切にしてる物を取って、もし間違った返事をしたらこれを落としかねないと言っただけ。それで脅迫なんて言いがかりも酷いところだ。
そう思ってやや憤然としていると、もしかして、と半兵衛が言った。
「都合って、つまり貴方の都合?」
「その通りだが何か問題があるか?」
「別にないけれどね」
どこか諦めたように呟く彼に、次はこちらからと口を開く。
「時に竹中半兵衛よ、そなたの両親は来るのか?」
「来ないね。こっちはちゃんとした理由があって、母は海外出張、父は重役との会議があるとかで。土曜日だろうと仕事は休みにならないんだよ」
「ふむ。どのような組み合わせであればそなたのような生意気な子供が出来るのかと、多少ばかりの興味があったのだが」
「それはこちらのセリフだよ。どうやったらこんな自分勝手な人が出来るのかって…」
「そこまでだ、テメェら」
と。
元就と半兵衛の言い合いを止めたのは、小十郎。
彼は眉間の皺を揉みほぐしながら、嘆かわしいと言わんばかりに息を吐いた。
「ったく…参観日なんだから来てもらっても良いだろうが」
「ならぬな。…して、片倉、何故政宗はあのような態度をとっておるのだ」
「あぁ、そういやその話をしていたんだったか」
ようやく原点に戻ったところで。
彼は、肩をすくめて言った。
「その参観日なんだが、政宗様の母君がいらっしゃる」
「…母、君?」
「それがどうして問題になんだよ?」
思わず言葉を反復する元就の隣で、元親が不思議そうに尋ねた。
…確かに、それがどうしてあのような態度になるのかが分からない。母親が来て恥ずかしい…なんて、生やさしい態度ではなくアレは、絶望…よりは浅いが、何か取り返しの付かない事態を目の前にどうしようもなくなっているような態度、だと思うのだが。ぱっと見ただけでも、そう思えるくらいに。
「そりゃ、来た後にされる話が話だからだろうよ」
「話?」
「まぁいつものことだから気にすんじゃねぇ」
決して仲が悪いわけではないのだから、と。
そう続けて、小十郎はこちらから視線を外して机に向かった。この話はもう終わり、と言うことなのだろう。
こうなると、彼から得られる情報はもう皆無と言っていい。
四人は、職員室から立ち去る事にした。
とりあえず、学院設定では親子関係は大変なことになっていない、ということに。
まぁ、そいうのもありでしょう。