式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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最終話。
「これで全て終わり」
かた、とペンを置いて彼女はこちらを見た。
「貴方の思惑通り、あの爬虫類さんは怖がって逃げ出して、いい加減にそれで彼らも悟ったらしいわ。この危険な学園に手を出すことの危うさを理解して、去っていった。さっきまで、貴方が今座っているその席にはホーマー・カタギリが座っていたの。完敗だ、そう言って去っていったわ。まるで私が全てやったみたいに」
困ったものね、彼女はそう言って肩をすくめた。
それは……そうだろう。今回彼女は何一つとしてやらせてもらえなかったのだから。ただ単に、傍にいた敵に嫌がらせをするくらいしかできなかった彼女。それは、とてつもなく悔しいことだっただろうに、それでも大人しくしていた。
彼女が動くという事態は、彼らにとって好都合だったから。
もしもそれを行えば、それを告発されて学園を奪われると言うことも、有り得たかも知れない。決め事を破った罰と言うことで。そんな権限が果たしてあるのかと言われても知らないけれど、そのくらいはどうとでもでっちあげるのだろう。
考えてみれば見るだけ、本当に。
気持ち悪い。
…それに…まぁ、彼女は知っていたのだし。
彼女が何をしなくても、こちらの誰かが何かを行うと。
それはもう、以前にあったあの時のように。
「それにしてもねぇ…貴方、そう、貴方。また貴方なのね。別に悪いことだから二度としないでとは言わないけれど、だって貴方にはそれをするだけの動機があったのだろし、でも、今回はちょっと危なかったわね。死人が出るところだった」
学園内で死人は出すな、という彼女の言葉の真意をくみ取り、静かに頭を下げる。
正直、あの男が死のうと自分は気にしなかったのではないかと思う。『屋上』から落としたのだから直撃すれば少なくとも重体にはなるだろうと分かっていたというのに、躊躇うことなく実行したのだから。
それにしても、屋上を調べに来ない彼らは本当に間が抜けているというか。偶然上に探しに来たリジェネは、黙っていて欲しいとジェスチャーをすると直ぐにそれに従ってくれたりもしていたのに。生徒は、学園の関係者は、そういう肝心なところで信用してはいけない。もっとも、リジェネに見つかった自分は、学園にいる人間しか分からないような場所に隠れていたりもしたのだけれど。
屋上と言っても、割とあそこは色々と置いてあるから隠れるのには最適なのだ。
それにしても……保険として沙慈を呼び出したのは、有る意味で正解だったのかも知れない。だから死人が出なかったとも、言えるのかも知れない。
案外律儀なところがあるようだったから、彼が来なければリントは時間いっぱいあの場所で待っていたのではないだろうか。ならば上から植木鉢を直撃させるのは実に容易なことだ。
そんな考えを全て見通したように、彼女は目を細める。
「今回、生徒全員が味方っていうのがポイントだったわね。誰が抜け出ようと、誰が何をしようと誰もが口裏を合わす。だから貴方は絶対に見つからない。それでも私が見つけた理由というのは前回の事があったから、なのだけれど…まぁ、良いわ。一つ、聞かせて欲しいの」
目を細めたまま、そして彼女は自分を見据えた。
「どうやって、そして一体どうしてあんなことをしたの?」
それは…その問いは、前回はなかったもの。
だから少しだけ驚きながら、それでも答えることにした。
まずはMDの話。
あれは素直にティエリアからもらった盗聴器を使った。昼休みに訪れた職員室、そこでグッドマンの上着に付けただけ。
手紙の方は、普通に朝早くにでも机の中に入れれば済む事。
六時間目の事は、彼女の言うとおり。クラスメイトがみんな、口裏を合わせてくれた。それは、彼らが本当にあの人たちがいなくなって欲しいと願っていたからだろう。だからこそに、自分の行動を黙認した。
それと。
それと、一体どうして、か。
そんなこと決まっている。
「気に入らなかったんです」
片割れに対するそれは許そう。あの対応はむしろ普通だから。それでも、あの上から目線は気に入らなかった。気に入らないというか、相容れないという方が正しいのかも知れない。少なくとも、この学園にいて欲しくない人種だとは思った。
次に、飼育小屋で。あれが決定的だったと思う。生徒をそこまで束縛することが許されるかと言えば、きっとそんなことはない。彼らの横暴は度が過ぎていた。それが、あの場所でハッキリと分かったから。
だから、行動した。
ただそれだけ。
「それだけの話、なんですよ。前回も、今回も」
「…そう。たったそれだけ。でも、充分すぎる理由だわ」
納得したように笑んで、ヴェーダは足を組み直した。
「分かった。私は貴方を断罪するつもりはなく、同時に誰も断罪する気はない。だから貴方は無実だし、何もしていないわ。そう言うことでよろしく」
「分かりました。そしてまた明日からいつもの生活が…ですね?分かってます」
そう言って、アレルヤも静かに微笑んだ。
実は。
こんなアレルヤを書いてみたくって始まったというのが正しい『手向けに奏でる哀歌』です。
大切な物を奪われかけたら、容赦なく、って言う感じの。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
かた、とペンを置いて彼女はこちらを見た。
「貴方の思惑通り、あの爬虫類さんは怖がって逃げ出して、いい加減にそれで彼らも悟ったらしいわ。この危険な学園に手を出すことの危うさを理解して、去っていった。さっきまで、貴方が今座っているその席にはホーマー・カタギリが座っていたの。完敗だ、そう言って去っていったわ。まるで私が全てやったみたいに」
困ったものね、彼女はそう言って肩をすくめた。
それは……そうだろう。今回彼女は何一つとしてやらせてもらえなかったのだから。ただ単に、傍にいた敵に嫌がらせをするくらいしかできなかった彼女。それは、とてつもなく悔しいことだっただろうに、それでも大人しくしていた。
彼女が動くという事態は、彼らにとって好都合だったから。
もしもそれを行えば、それを告発されて学園を奪われると言うことも、有り得たかも知れない。決め事を破った罰と言うことで。そんな権限が果たしてあるのかと言われても知らないけれど、そのくらいはどうとでもでっちあげるのだろう。
考えてみれば見るだけ、本当に。
気持ち悪い。
…それに…まぁ、彼女は知っていたのだし。
彼女が何をしなくても、こちらの誰かが何かを行うと。
それはもう、以前にあったあの時のように。
「それにしてもねぇ…貴方、そう、貴方。また貴方なのね。別に悪いことだから二度としないでとは言わないけれど、だって貴方にはそれをするだけの動機があったのだろし、でも、今回はちょっと危なかったわね。死人が出るところだった」
学園内で死人は出すな、という彼女の言葉の真意をくみ取り、静かに頭を下げる。
正直、あの男が死のうと自分は気にしなかったのではないかと思う。『屋上』から落としたのだから直撃すれば少なくとも重体にはなるだろうと分かっていたというのに、躊躇うことなく実行したのだから。
それにしても、屋上を調べに来ない彼らは本当に間が抜けているというか。偶然上に探しに来たリジェネは、黙っていて欲しいとジェスチャーをすると直ぐにそれに従ってくれたりもしていたのに。生徒は、学園の関係者は、そういう肝心なところで信用してはいけない。もっとも、リジェネに見つかった自分は、学園にいる人間しか分からないような場所に隠れていたりもしたのだけれど。
屋上と言っても、割とあそこは色々と置いてあるから隠れるのには最適なのだ。
それにしても……保険として沙慈を呼び出したのは、有る意味で正解だったのかも知れない。だから死人が出なかったとも、言えるのかも知れない。
案外律儀なところがあるようだったから、彼が来なければリントは時間いっぱいあの場所で待っていたのではないだろうか。ならば上から植木鉢を直撃させるのは実に容易なことだ。
そんな考えを全て見通したように、彼女は目を細める。
「今回、生徒全員が味方っていうのがポイントだったわね。誰が抜け出ようと、誰が何をしようと誰もが口裏を合わす。だから貴方は絶対に見つからない。それでも私が見つけた理由というのは前回の事があったから、なのだけれど…まぁ、良いわ。一つ、聞かせて欲しいの」
目を細めたまま、そして彼女は自分を見据えた。
「どうやって、そして一体どうしてあんなことをしたの?」
それは…その問いは、前回はなかったもの。
だから少しだけ驚きながら、それでも答えることにした。
まずはMDの話。
あれは素直にティエリアからもらった盗聴器を使った。昼休みに訪れた職員室、そこでグッドマンの上着に付けただけ。
手紙の方は、普通に朝早くにでも机の中に入れれば済む事。
六時間目の事は、彼女の言うとおり。クラスメイトがみんな、口裏を合わせてくれた。それは、彼らが本当にあの人たちがいなくなって欲しいと願っていたからだろう。だからこそに、自分の行動を黙認した。
それと。
それと、一体どうして、か。
そんなこと決まっている。
「気に入らなかったんです」
片割れに対するそれは許そう。あの対応はむしろ普通だから。それでも、あの上から目線は気に入らなかった。気に入らないというか、相容れないという方が正しいのかも知れない。少なくとも、この学園にいて欲しくない人種だとは思った。
次に、飼育小屋で。あれが決定的だったと思う。生徒をそこまで束縛することが許されるかと言えば、きっとそんなことはない。彼らの横暴は度が過ぎていた。それが、あの場所でハッキリと分かったから。
だから、行動した。
ただそれだけ。
「それだけの話、なんですよ。前回も、今回も」
「…そう。たったそれだけ。でも、充分すぎる理由だわ」
納得したように笑んで、ヴェーダは足を組み直した。
「分かった。私は貴方を断罪するつもりはなく、同時に誰も断罪する気はない。だから貴方は無実だし、何もしていないわ。そう言うことでよろしく」
「分かりました。そしてまた明日からいつもの生活が…ですね?分かってます」
そう言って、アレルヤも静かに微笑んだ。
実は。
こんなアレルヤを書いてみたくって始まったというのが正しい『手向けに奏でる哀歌』です。
大切な物を奪われかけたら、容赦なく、って言う感じの。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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