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久々にマリナ様。何か今までよりレベルアップしてるんですけど。



10.&



 その光景に、呆然とするのは絶対に自分だけではない。
 ……と言いたいところだったが、しかし、どうやらその自分までもが呆然と出来ないらしい。そう悟ったシーリンは、人知れず息を吐いた。当然ため息である。
 どうやら、この状況に慣れすぎてしまったようだ。
 最も、それは幸運なのか不幸なのか、自分では全く判断がつかなかったのだが、この場合は恐らく幸運なのだろう。というか、慣れでもしない限り彼女とは付き合っていられないというか何というか。
 まぁ、慣れているワケのない同志は隣で唖然としているわけだが。
 とりあえず、シーリンはマリナの方を見た。
「マリナ、何をやっているの?」
「えぇと…実は」
 少々、申し訳なさそうな様子で彼女は口を開いた。
「アザディスタンを復興出来たのは良いんだけれど……暗殺者が送られてくる、というか…何だか形容が難しいわ。暗殺ではないもの」
「つまり、命を狙われてるって事ね」
「あぁ、そう。それだわ」
「……それで、」
 ちら、とマリナの直ぐ側に倒れている男を見て、改めてマリナを見る。彼女は、ちゃんとした表現が見つかったためだろうか、何だか嬉しそうな表情を浮かべている。
 相も変わらず、か。
「その、男の人は?」
「この人が暗殺者さんよ、シーリン。ついさっき来たの」
「…それで、マリナ皇女」
 ようやく我に戻ることでも出来たのだろうか、クラウスが一つ一つ、確認するかのように言った。そして、その確認が自分たちではなく、彼自身に向かっていることを見て取ったシーリンはそっと目元を押さえた。こんなところに常識人が。それが何と嬉しいことだろうか…カタロンには基本的に常識人しかいなかったから、このありがたみはしばらく忘れていたところである。
「どうして、その暗殺者が倒れているので…?」
「私がね、偶然コップを持っていたの」
 …そういえば、確かにコップは部屋の中に存在していた。
 ただし、男の直ぐ側に。
 ちょっとだけ血が付いているような気がしたが、そこは気にしては負けだろうとシーリンは思った。そもそも気にさえしていない。ただ、昔よりも威力が上がっているなと考えるくらいだ。自分がいたときは気絶こそすれ血は付かなかったのだが…成る程、一人で頑張っていたあの時間が、彼女を次の段階へと押し上げたらしい。
「それを、投げたのね?」
「その通りよ!まさか、あんなに勢いよく飛んでいくなんて思わなくて…驚いたわ。カタロンで色々なお手伝いをしていたからかしら?」
「それは良いのだけれどね、マリナ、部屋の隅で子供たちが震えているのは、どうしたら良いのかしら私たち」
 しかもがたがたと震えている子供たちだ。
 腕を組んで見ると、彼女はあら?といわんばかりの表情を浮かべた。どうやら、子供たちの様子に今気付いたらしい。ということは何だろう。自分たちが訪れる今の今まで、倒れ伏している男に構い続けていたと言うことか。そして直前に何をしようとしていたのかは、手元に持っている油性ペンが雄弁に物語っている。せめて水性ペンにしてあげなさいと、何回も言ったことを彼女は忘れているのか。
 それは置いておいて。
 マリナは、頬に手を当て首を傾げた。
「どうしたのかしら。何か怖いことでもあったのかしら…」
 その返事に、クラウスの表情が引きつった。
「…シーリン」
「クラウス、それ以上入ってはダメよ」
「しかし原因は間違いなく…」
「それでもダメ。死にたいの、貴方」
「……そこまでの問題なのか」
「当然でしょう」
 それ以外の何者でもないだろうに。
 クラウスにそう言って、するとさらに表情が引きつった気がしたがきにせずに、シーリンはマリナの傍により、しゃがんでコップを拾い上げた。
「…上達したわね、マリナ。ヒビ一つ入っていないわ」
「でしょう?別に練習したわけでもないのに不思議だわ」
「本当ね」
 …そして、この時点で、シーリンは既に何を言っても無駄だという諦観の境地に辿り着いていた。







しかし、一体コレのどこが『&』なのだろうか…だいぶ前に書いた話ですけれど、これ、その時の自分の考えが全く分かりません…。
 

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