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六月にあげるなんて、季節違いも甚だしい…。
奥州に遊びに来た瀬戸内組です。
04:白い吐息
「……寒い」
「ha、そりゃそうだろうよ。何せ北国の冬だ」
「……ならば問うが」
と、元就は毛布にくるまったままとある人方向を指さした。
「あれは何と説明する」
……そちらには、いつきと一緒に雪だるまを作っている元親の姿があった。いつきはもちろん、元親もいつもと同じ服装である。
二人とも少し雪の庭に出るには相応しくない気のする服装なのだ。まぁ、いつきは元から北国だし慣れているからまだ良いとしたって、流石に元親があの格好でいるのは問題だと思うのだ。
そういば、幸村も似たような感じだっただろうか。
冬であれ秋であれ春であれ、背中に夏以上の暑さを背負って突撃してくる好敵手の事を思い出しつつ、視線を外の二人に固定したままに元就の言葉に応じる。
「あーゆー奴らなんだろ」
「説明になっておらぬぞ」
「出来ねぇよ、ンなモン。理解出来たら苦労しねぇ」
「ふむ……それもそうかもしれぬな。時に政宗」
「ん?」
「布団は他に……」
「……こじゅーろー、何か羽織るモン持ってきてくれねーか?」
「自分で取りに行かせれば良いでしょう」
「右目よ、客のその態度はあるまい」
「それよりも政宗様」
やや不機嫌そうに睨みつける元就の視線を受け流すように……否、普通に受け流して、小十郎はくるりとこちらを向いた。
「まだ政務が残っているのですが」
「ンな事言われても……一応、客がいるんだぜ?しかも一国の主が二人くらい。俺がいなくてどうすんだよ」
「ならば奴らを追い出せばよろしいのですね?」
右目はそう言い放った。あっさりと。
対して、政宗は思わず表情を引きつらせた。元親はもしかしたら、いつきと一緒に政務が終わるま外で色々やって時間を潰してくれるかもしれないけれど……そんな事をしようものなら元就は絶対に抵抗する。
……結果、城は半壊するのだろう。
夏場だったら涼しくなって良いかもしれないけれども、冬場に風がどんどん入ってくるような城の構造に、一時的にでもなってしまうのは嫌だ。風邪をひくとかそういう問題では無い。凍え死ぬか否かと言う問題である。
そんな理由で死ぬのは非常に嫌だった。
「……cool down。落ち着け小十郎」
「私は十分落ち着いておりますが。ただ邪魔者を追い出そうとしているだけです」
「随分と酷い話ではないか……そう言うのならばこちらとてそれ相応の態度を取るが」
「……元就ものんな」
「ほう……テメェもやる気なんじゃねぇか」
「そなたがやる気なだけであろう」
「いい加減にしやがれ!」
今にも戦闘を始めそうな小十郎と元就に挟まれて、政宗は叫んだ。
「こんな所でケンカ始めようとしてんじゃねぇよ!有り得ねぇだろ!?つーか城半壊したらどうしてくれんだテメェら!今冬だぜ息も白いんだよ吹きっさらしだと凍えんだよ!そんくらい分かってろ!良いな!」
「は……はい」
「……うむ」
突然思いきり叫んだからだろうか、その勢いに二人は先ほどまでの臨戦態勢を投げ捨てて、張りぼてのトラみたいにこくりと頭を一回縦に振った。ちなみに表情は唖然とした、という形容が相応しい物である。
それはさておき、とりあえず二人が止まった事に安堵して、政宗は再び庭の方の二人を見た。小十郎と元就の険悪な雰囲気は恐らく向こうまで届いただろうし、自分の叫びは聞こえていたはずだ。何かの反応があってもおかしくは無いと思ったのである。
けれども二人とも雪だるまを作るのに集中しっぱなしで……こちらさえ見ていないあり在り様で。
まさか気付かなかったのか!?なんて思いはしたけれど、それは無いだろうと思い直す。どうせ、大丈夫だと思ったか実害がないと思ったかして、気にするのを止めでもしたのだろう。
羨ましい事だと、本気で思った。
しかし、いつきちゃんは本当にあの服装で寒くないんだろうか。
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