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二人を置いて仕事に行ったシズちゃんの話。賢明です。



「ん?今はお前二人なのか?」
「…あいつらは置いてきました」
 結局。
 杏里が帰った後も、静雄が仕事に行くべく場を抜け出した時も、臨也と罪歌は延々と太鼓をたたき続けていた。あの調子だとゲームセンターが閉じる瞬間まで続けるのではないだろうかと、九時を示している公園の時計を見ながら思う。あの二人なら閉まった後でもずっとやっていそうな気がするけれど。
 負けず嫌いと言うか何というか。何であの二人はあんなに仲が悪いのだろう。
 まぁ、仲良くなられても困る。二人の共通事項である「人間と言う『種』を愛ししている」という事柄を思いながら息を吐いた。仮に人間の中でも最悪の部類に入る存在と、人間以外である存在が同じ目的のもと手を組んだら…大変な事になる気がする。
 もしそうなったら真っ先に邪魔しに行ってやろう。
 その前に勝手に仲間割れしてくれそうだけど。
 そうだったら楽なのだが、あの二人はどちらも無駄に生き延びてくれそうな気がした。罪歌はともかく臨也は早く死ねばいいのに、今の今までどうして彼は生きているのだろうか。逃げるのが得意だからかもしれない。
 おかげでいつも取り逃がすわけで……あぁ、ならば誰かに協力してもらえばいいのだ。罪歌に頼んだら是非も無く協力してくれる事は間違いない。セルティや杏里たちは仕事が大変そうなので止めておこう。
 随分と楽しい想像だとほんの少し笑いながら、彼らの今を考える。
 今頃、罪歌が勝って臨也が負けているのではないかとフッと思った。となると、次はその逆か。先に二勝なんてルールを決めてしまうから決着がつかないのだ。いい加減にそれに気づけばいいのに、ムキになりすぎてそちらへ思考が及ばない二人は、見ていて清々しいくらいに対決に集中していた。
 店員に追い出される時、果たしてどちらが一勝多く勝っているのか。
 彼らは気付いていないが、あれは既にそういう対決になっていた。
 もしもそれに彼らが気付くとしたら…それはゲームセンターから出た後だろう。
「そろそろ行くべ」
「…うす」
 上司…田中トムの言葉に頷いて、静雄は彼に付いて歩き始めた。
 その間も、考えていたのはあの二人の事だった。
 
 





そして本当に、あの二人はまだ太鼓を叩いているのでしょう。
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