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拍手再録です。
~二人きりの横断歩道~
「良いですか?アニュー、信号が青になっても右と左を確認する事を忘れてはいけません。最低でも三回くらいは右と左を交互に見てくださいね」
「兄さん……それはちょっと多すぎるよ」
何台かのタクシーやトラック、ワゴンなどが過ぎ去って行くのを眺めながら、アニューは苦笑を浮かべる他無かった。
自分くらいの小さな子供に『左見て、右見て、また左見て』という事を教えるのは大切だと思う。自分たちは幼く小さいから、大きな車に乗っている人たちに気付いてもらえない事がたまにあるから。
だが、流石に三回、というのは多すぎるだろう。
それが過保護故であり、心配している事の表れだというから厄介な物で、どうにかして欲しいと思ってもろくに怒る事も出来ない。
けれど、まぁ。
そんな兄でも、嫌いじゃないのだけれど。
「…兄さん、でも、三回もやってたら短いのだと信号が点滅を始めるんじゃないかな…」
「あぁ……それもそうですね。これでは余計に危なくなりますか。……ではどうしたら良いんでしょうね?」
「えっと…三回、っていうのを一回半にしたら良いと思う」
そうしたら普通と同じ『左右左』である。
だからこれで大丈夫だろうと兄を見上げたのだが、何故だかリヴァイヴは別の結論に至ったらしい。まだ何も言われていないが、その表情を見たら何となく分かった。兄妹だからだろうか……もうちょっと分からなくても良いのに。
今回は一体何を言われるのかと、幼いながらに身構えているアニューに、兄は、優しく微笑みながら言った。
「手を繋ぎましょう」
「手?」
「えぇ。そうすれば大丈夫です」
「……それなら、良いよ」
思ったより問題のない案にほっとしながらアニューは手を差し出した。
そうして握られた自分の手は、とても心地よい温かさに包まれていた。
(2010/06/06)
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