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梅雨ですね、ということで。キュリオスとアリオスのお話。
「雨、止まないかなぁ……」
庇の下、灰色の空を眺めながらアリオスは小さく息を吐いた。
こんな事なら折りたたみ傘を持ってくればよかった。降水確率四十パーセントを舐めていたわけではないけれど、これでは甘く見積もっていたとしか言いようがない。
そんなアリオスの憂鬱を写し取ったかのように、空はどこまでも暗かった。
「止まないかなぁ……」
もう一度同じ事を呟いたアリオスの胸元で、ごそごそと、何かが蠢いた。
そうしてブレザーから顔を出したのは、小さな小さな、猫。
猫は寒いのか時折ぶるぶると震えてその存在を示していて、それがほんの少し心配だった。少しでも暖かいようにと服の隙間に入れてはいるけれど、所詮これも応急処置の様な物で、効果がどれくらいあるかはよく分からない。
アリオスが雨宿りをしているのは、他でもなくこの子猫のせいだった。道端に捨てられている子猫を見て、どうしようかと思案している間に雨が降り出してしまったのである。多分、真っ直ぐ帰っていたらギリギリ雨が降る前に帰れたと思う。
それでも、やはり捨て猫なんて見たら放っておけるわけもなく。
みゃあ、と小さく無く子猫をブレザーの中に入れて抱いたまま、空を見る。
「いつまで降るんだろう……」
出来るならば、今すぐ止んで欲しい。早く家に帰って、子猫を温かな場所に置いてやりたい。自身の事はあまり考えず、アリオスはただ子猫の事を思った。
「早く止んで欲しいなぁ……」
「ンな事言っても、明日の朝まで止まねぇっつてたぞ、天気予報」
「そっか……だから迎えに来てくれたの?」
「……さァ、な」
ふい、とそっぽを向くキュリオスに微笑みを浮かべつつ、どうやら本当に迎えに来てくれたらしい半身がさしているその傘の中に入った。
それを当然の様に迎え入れた半身と共に、歩き出す、雨の中。
「ん?そういやその猫何だよ」
「えっと……拾ったんだけど」
「飼えるとは思えねぇぞ?」
「だめかなぁ……あ、でも、なら、飼い主が見つかるまでなら良いよね。学校の人たちに頼んでみたら、きっといるよ、飼ってくれるって言う人」
「随分と楽観的な事で。ま、いなけりゃそん時はそん時か」
「いるよ……多分」
そんな他愛のない会話は帰るまで、ずっと続いた。
雨に猫ってお約束。そういえば捨て犬とかの話ってあまりないような。
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