お題：薔薇 16．不協和音

何故だろう。アロウズが仲良し？ほのぼの集団になりつつ…。

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16．不協和音

 

 

 

　今日もその騒音は艦内で響き渡る。

「あぁぁぁぁっ！それ私のエビフライ！ちょっと、何で勝手に取ってるの！？」

「昨日のプリンの仕返しだ！ざまぁみろ！」

「最悪！次の実戦で、誤射の振りしてアンタなんて撃ち落としてやるんだから！」

「やれるもんならやってみやがれ！俺がスペシャルに返り打ってやるぜ！」

「同じ言葉を返してあげる！期待性能の差を考えなさいよ！」

「それを埋めてこそのパイロットだろ！」

「アンタ程度の実力でそんな事言えると思わないで！」

　軍属の大人たちが投げ合っているとは思えない幼稚な暴言に。

　思わず、リヴァイヴは食事をとる手を止めた。

「……ブリング、ヒリングをどうにかしてくれませんか」

「無理だな」

「そんな事言わないでお願いします。正直……僕には無理ですよ」

　無口な同胞の前で、リヴァイヴはため息を吐く。

　今までに、一体何回注意をしてきただろう。自分たちはライセンス持ち……否、それ以前にイノベイターなのだから、もっと品格を持って、ニンゲンたちのレベルに合わせもせずに、しっかりと己の任務を果たすように、と、一体何回ヒリングに対して言い続けてきたのだろう。

　そのたびごとにヒリングは頷き、次からは気を付けると口にする。その程度には、彼女も気にしているのだろうと言う事は、分かる。

　しかし、結果は『これ』なのだ。

　……これでは、ため息も付きたくなる。

　もちろん諦めてもう何も言うまいと思う事もあった。けれども、それは自分たちがイノベイターであるという矜持が、どうやってもそれを邪魔する。

　困る、なんてものではなかった。

「……いい加減にですね、ヒリングには自覚とか我慢とか、色々覚えてもらわないといけないんですよ。たとえ僕がどうこう出来なくても、どうにかして、です。ですから最終手段に映る前に是非とも、貴方にどうにかして欲しいんですよ」

「……最終手段？」

　何だそれは、と言わんばかりの視線を向けるブリングに、リヴァイヴは簡単な事です、と前置いて告げる。

「リボンズにお願いするんですよ」

「……だから最終手段か」

「はい。こんな事で迷惑をかけるのは申し訳ないんですけどね……ヒリングがまともに話を聞く可能性がある相手と言ったら、やっぱり彼でしょう」

「だが……聞くのか？」

「……そこは知りません」

　言いながらも、むしろ聞かないのではないかと、リヴァイヴは思っていた。何せヒリング・ケアは本当に自分中心の世界で生きているのだ。リボンズの言葉と言えども、高い関を乗り越えて彼女の中に入って行くのは難しいだろう。

　それでも駄目だったらカティ・マネキンにでも頼んでみようか。

　ダメでもともとの精神でそんな事を考えながら、リヴァイヴは再び昼食を開始することにする。そろそろ、ヒリングのために時間を消費するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

「……とにかく、貴方からも一回くらいは言ってくださいね」

「あぁ……分かった」

「ありがとうございます」

　こくりと頷いた彼に対して感謝の意を示し、スプーンを取り直す頃。

「だから、そのヨーグルトは私の物なのよ！」

「誰がンな事決めたんだよ！俺のトレイに乗ってたんだから俺のモンだろ！」

「アンタのモノは私の物なの！」

「そんなん誰が認めるか！」

「っていうかそれ、さっきアンタが取った私のエビフライの代わりなの！」

「知るか！あれはこないだのプリンの仕返しだっつったろ！」

「その前にケーキ取ったのはアンタでしょ！」

「さらにその前に俺の魚とりやがったのはお前だっつーの！」

「そんな昔の事を引っ張り出さないでよ！」

「そんなんお前だって一緒じゃねーか！」

　やはり変わらず言い合いを続けている役二名の、煩い争いはさらに意味無く過激になっていた。あぁ……耳をふさぎたい。

　心の底からのそんな思いをどうにか押さえつけて、聞き流すという選択を取ったリヴァイヴは食事を再開した。

　……誰かがあの二人の織りなす雑音を止めてくれないだろうかと祈りつつ。

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止まりませんよ。リボンズが来ても、多分。でも不思議な事に、大佐ならどうにかできる気がするんですが。