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クーデター失敗後のお話です。
いつものテラスにいつもの時間にいつもの様に座れば、いつもの気配が面倒そうにやってくる。それが、いつもの光景。
その中に身を浸しながら、テラスの手すりに室内を背を向け座って空を見る。
「なぁ、明日は雨が降るんだとよぉ」
「だったら何だ」
「別に何もねぇけど」
「なら言うな」
「そう言うなよなぁ゛、御曹司」
そんな事を言われたら得に話す事も無くなってしまうではないか。
僅かに呆れを含ませて言うと、己が主と決めた男は不機嫌そうな気配を纏う。知るか、というのが今の彼の正直な気持ちなのだろう。
それでも追い返さない所、甘いと言うか何というか……まぁ、連日押し掛ける自分に何を言っても無駄だと、諦めて放置することにしただけなのだろうが。しかし、それはつまり、放置しても問題ないと認められたという証拠なのだ。
それは誇るべき諦めだった。
「オイ、テメェ何笑ってやがる」
「あ゛?何で分かるんだぁ?」
「テメェの背中は分かりやすい」
「そりゃどうも」
「褒めてねぇ」
「だろうなぁ」
軽く流すと、主の苛立ちが少し増したのが分かった。どうせ今頃、眉をぴくりと持ちあげているのだろう。
このまま普通に会話を続けていっても良いが、やはりここは少々機嫌を直してもらうべきだろうか。自分だって流石に、帰る時に服のあちこちが黒焦げになってるという事態は遠慮したいのだ。
「御曹司、」
何を言おうかと考えながらとりあえず呼びかける。
呼びかけたが、返事が無い。
「……ザンザス?」
訝しく思い、今度は名前で呼ぶ。振り向けばすべて分かるだろう事は分かっていたが、どうしてだか背後の光景を視界に収めるのが嫌だった。だから、反応があるようにと祈りながら、呼ぶ。
けれども、返るのは沈黙。
有り得ないはずの反応の不在が、一つの事実を思い起こさせる。
あぁ、そういえば、彼はもう。
鮫さんは泣いたかな泣かなかったかなとか考えて、泣かないんだろうとか結論付けてみて。
終わった後は何か胸がぽっかりな喪失感を感じていたんだろうなとかさ。
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