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ばったり遭遇編です。
03:求道者
扉を開けて最初に見えた何かが自分の意に沿わなかった場合、思わずその開けた扉を勢いよく閉めてしまうことがある。それをしたことがなかったとしても、似たような思いを抱いたことはあるだろう…つまり、目の前の状況をどうにかして自分の視界から追放しようという思いを。
そして。
元就はそんな思いを今、確かに感じていた。
どうしてここに閉めるべき扉がないのかと、屋外であるにも関わらず不満を持ちながら、目の前に広がる光景…というか目の前にいる人物をどうにかしたいと本気で考えていたのである。いっそ彼という存在をこの世から削除してしまえば良いだろうか。
というか、だ。
ここはまだ伊達領のハズ、なのだが。
どうしてここに真田幸村がいるのだろう。
しかし、何よりも訊きたいのは。
「これは政宗殿!このようなところで一体何を?」
「ちょっとした野暮用だ。そういうアンタはどうしたよ?」
「散歩でござる」
「Ha、長い散歩だな。今頃保護者殿が心配してんじゃねぇのか?」
「ちゃんと置き手紙は準備してきたから大丈夫でござろう」
……どうしてこんなに普通に会話が進んでいるか、なのだが。
様子からして、幸村がこの辺りに現れるのはそれ程珍しいことではないようだ。そういう類の気さくさがそこにあった。
何だろうコレは。などと本気で頭を抱えかけたところで、元親が元就だけに聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで言った。
「…散歩って無茶あるだろ」
「置き手紙だけで問題ないと言えるあのお気楽さの方に我は物申したいのだが」
「まぁそりゃそうだが……何よりもな」
「む?」
「政宗が普通に応じてることが怖ぇ」
「……それは確かに」
普通に応じていると言うことは、そこそここういう事態があったと言うことだと……先に、自分は推測していたのだが、どうやらこの鬼も同じように考えたらしい。雰囲気からして様子からして、それ以外の論は無さそうなのも事実だ。
はぁとため息を吐いて呟く。
「てっきり我は決闘でもしに来たのかと思うたぞ」
「あぁ、それもいたしますぞ、毛利殿」
「てーかそれ以外にすることもねぇし」
「…そうか」
すると呟きにあるとは思っていなかった返事があって、自分としては何とも口惜しいことに大した返答が出来なかった。というか、それが理由なら初めからそう言えばいいと思うのは自分だけなのか。
そして散歩よりは遙かに武人らしい理由に何故だかホッとする。散歩などという事柄だけで一応は敵である相手の領地にやってくるような武人がいるのは正直、問題だと思うのだ。まぁ…旅をしようなどと言うことでこの地を訪れた自分が言えるようなことではないのかも知れないが、そこは棚に上げておく。
宣言をしたからかさっそく戦う準備を始めている二人を眺めつつ、元就は丁度良い木を見つけてその傍に腰を下ろした。多分、彼らが戦うのは少し離れた場所だろう。そして、ここからならば割と良く見えるに違いない。
元親も隣に腰掛けたがそこは今回は特別に黙認してやることにして、それぞれ武器を持って思った通りの方向に歩を進める二人を眺める事にする。
「ふむ…どちらが勝つのであろうな」
「決着が付かずに邪魔されるに一票」
「それでは我の質問の答えになっておらぬではないか」
「そうか?結構ちゃんと考えて答えたんだぜ?」
「…考えてそれか。全く、鬼の知能というのは人間に遠く及ばぬと言うことか」
「じゃあ人間様、自分で考えてどうぞ答えを出してくだせーよ…っと。俺より頭が良いんだろ?なら簡単じゃねぇか」
「…む」
滅多にないことだが、元親が反論してきた。
そう言われてしまうと言葉に詰まるしかないこちらは黙り、それを見て相手はとても愉快そうに笑った。悔しいが、ここで先に手を出すと気分的にこちらの負けになるのであえて出さない。
「そら、二人の手合わせは始まったぜ?見なくて良いのかよ?」
「見るに決まっておろうが、この馬鹿が」
ゆっきーは決闘っぽいもののためなら頑張れる子。
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