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皆様、水分補給はしっかりとお願いします。
「知ってる?今日の最高温度、昨日より六度くらい高いんだって。で、昨日の気温も高かったよね。それを踏まえると、とりあえず、言える事が一つ。こんな中で水分補給もせずに街中を延々と走り続けた君が、脱水症状に陥るのは至極当たり前と言う事だ」
意識を取り戻して早々の新羅の言葉に、臨也は答えずに黙って体を起こした。
額から落ちた冷たいおしぼりを拾う事も無くベッドから降りて、視界を遮る白いカーテンを勢いよく開く。
「そして君がそんな風になっているわけだから、当然ながら鬼ごっこの鬼役だった彼だって倒たわけだね。二人して気絶しちゃって、全くさぁ、君たちを診る僕の苦労もちょっとくらいは考えてくれないかな」
そうして見えたのは鮮やかな金髪だった。
微動だにせず、目を覚ます様子さえない静雄を眺め、閉まっていたカーテンの向こう側にいたらしい新羅に声をかけた。
「ねぇ、新羅」
「何かな?」
「俺とシズちゃん、倒れてどのくらい経ってる?」
「ざっと三時間くらいかな。あ、大丈夫だから安心してね」
「安心してって……何の事?」
「脱水症、重度ではあったけど死ぬとかそういう事は無いって事。君も、静雄もね」
そんな新羅の言葉を無視して、臨也はぐるりと部屋を見渡した。
どうやら、ここは保健室らしい。記憶を辿ってみるとそれが途切れているのは学校周辺だったから、多分、倒れた自分たちをここに運んできた誰かがいたのだろう。ならばその人に問いたい。なんで救急車を呼ばなかったのか、と。だって気を失っている男子生徒がいたにしたって、それで何で保健室に運ばれないといけないのか。絶対に運びいれるべき場所は病院だろう。
誰が運んでくれたのやら、なんて肩をすくめながら、臨也は保健室から出ようと歩を進める。今はまだ意識を取り戻していないから良いものの、傍には猛獣が眠っているのだ。安心してこの場にいる事など出来るワケが無い。
ドアまで来たところで、振り向いていつもの笑みを浮かべる。
「じゃ、俺は帰るから。起きたシズちゃんと俺を運んでくれた誰かに、君からよろしく言っといてね」
「運んでくれた誰かって……うん、まぁ了解したよ」
新羅にしては歯切れの悪い言葉を妙に思いながら、別に良いかとも思って、手を振る。
「また明日」
「もう脱水症状で倒れないでね」
「分かったよ。次の鬼ごっこでは、隙を見ては水分補給をしっかりやるさ」
その言葉と共に、ドアを閉めた。
「……ん?何だ、臨也の奴は帰ったのか?」
「起きて早々にね。どうせ、静雄が起きる前に逃げようなんて思ったんじゃない?」
欠伸をしながら、新羅は、ペットボトルを二本持って入ってきた門田を迎え入れた。
静雄が寝ているベッドに腰を下ろす彼を見てから、パイプ椅子に座ったままに足を組んで……それから先ほどの臨也を思い出して、吹き出した。
「し……新羅!?」
「いやさぁ、だって面白いんだから仕方ないよ!」
「何がだ!?」
「臨也だよ!」
大仰に両手を広げて、新羅は笑みを浮かべたまま口を開く。
「彼、何て言ったと思う?『起きたシズちゃんと俺を運んでくれた誰かに、君からよろしく言っといてね』って言ったんだよ!?」
「あぁ……そいつは……」
どこか納得した表情を浮かべた彼に、そう!と力強く肯定して言葉をつなげた。
「臨也は知らないんだよ!考えるどころか可能性としても考えていない!倒れた臨也を静雄が運んでた事を!……まぁ、彼もその途中で倒れて、二人一緒に門田に保健室に運ばれたんだけれどね」
「そうなると、一応保健室に運んだ奴って言うのは俺になるんだろうが……」
「っていうか、臨也もちょっと抜けてるよね。静雄が運んでくれたって言う、その選択肢を始めっから考えさえしてないんだからさ」
「気持ちは分からないでもないけどな。あと、それは抜けてるんじゃなくて……そんな事は無いと思いこんでるんだろ」
「あぁ、それもそうか。確かにそうかもしれない」
いつもいがみ合っている仲なのだから、そういう思い込みだってあって当然と言えば、当然だ。しかし、当然だからと言って思い込みが実際に現実に適応されるとは限らないのが、自分たちが暮らしているこの世界である。
くすくすと笑いを零しながら、明日の事を思う。
「明日、臨也にネタばらししても良いかなぁ」
「良いんじゃないか?」
「臨也、衝撃のあまり固まっちゃわないかな」
「あぁ、それは……あるな」
「楽しみだねぇ」
まるで臨也みたいな物言いだと思いながら、新羅はもう一度言った。
「本当に、楽しみだよ」
シズちゃんは目の前で何もしていないのに倒れた臨也に若干パニック状態に陥った感じ。
で、結果、救急車じゃなく保健室に。
ドタチンは、二人が倒れてたのがもう保健室手前だったから、とりあえずそこに運んで新羅を読んだ感じで。
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