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まぁ、効能とか言っても、それが当人たちにプラスの効果かマイナスの効果かってのは分かりませんよね。とりあえず何かの効き目はあったよ、みたいな。



 ゼータを怒らせる方法はいろいろある。
 例えばメタスなど彼と親しい存在に危害を加える事。
 例えばとんでもない事をしでかす事。
 例えば……
 例えば、『ジ・О先生に会わせる』事。
 ……そして今。
 曲がり角からふらりと現れたゼータに、ジ・Оはばったり出くわしてしまっていた。
 想定などしていなかった事態に、ぴしりという音と共に体が固まった。石のようになってしまったまま、自分の事をぼんやりと眺める瞳としっかり自身の瞳を合わせ、何故かそこだけ動いた喉がごくりと鳴る。
 ピンチだった。しかも、とんでもない規模の。遭遇してしまったそれは、自分にとっては無駄に大きいくせに妙に素早い災厄だ。背を向けて逃げだせばすぐさま追いつかれ、前を向いて抗戦しようとすると容赦なく暴力の雨が降り、だからといって何もしなければ単なるサンドバッグにされてしまうような、人災である。
 人権ってどこにあるんですか?と言いたくなる数々の仕打ちを思い出しながら、それでもどうにか逃げようとして……首を傾げた。
 遭遇してから今まで、恐らく既に十秒は過ぎた。
 なら、何で自分はまだ立っているのだろう。
 今までは出会った瞬間に蹴り飛ばされ殴り飛ばされていた。第三者ならば見事だと褒め称える事が出来るであろう容赦なく素早い攻撃は、どうして今回は自分に未だ振りかかっていないのだろうか。
「ゼータ……?」
 有り得ない状況に、思わず、恐る恐る呼びかける。しかし自分が呼びかけていると言うのに彼からは特別な反応は何も無く、ただ先ほどから引き続いてぼんやりとこちらを見上げてくるのみだった。
 おかしい、とかいう話では済まない現状を前に、一瞬程先ほどとは違う意味で体の動きを止め、意を決して右手を上げる。
 そうして触れた天敵の額は確かな熱をもっていて。
「あぁ……風邪ですか」
 彼の中で何が起こっているのか分かり、納得して頷いていると、不意にちょん、という小さ過ぎる衝撃が右腕に響いた。
「……触るな」
 何かと見てみれば、そこにあったのはゼータの手が自分の手をはたき落そうとしている様であり、その割に力の入っていない彼の腕に驚く。
「随分と重症なようですね」
「……煩い」
「そう怒らないでください。というか、触られたくないなら避ければ良かったでしょう」
 どうせ熱で朦朧としていて、自分を自分だと認知したのはつい先ほどなのだろうと推測しながら、静かな微笑みを浮かべてジ・Oは話しかけた。今、彼はとことん元気が無い状況であり、自分に攻撃を加える事さえままならない。ならば精神的圧力……ありていにいえばイヤガラセくらいなら、いくらでも出来る。
 出来る限りいつもの仕返しをしておこうと言う腹積もりが分かったのか、今までの表情の中にいくらかの苦々しさを混ぜ込んで、ゼータはこちらの右手に触れていた左手に力を込めた。それはこちらの手を遠ざけようと言う物では無く、彼自身が遠ざかろうとするための物だったようで、気が付けば彼は自分の左隣をすり抜けていた。
 歩くのも億劫だろうに、良くもまぁそこまで痩せ我慢が出来るものだ。
 呆れながらジ・Оは遠ざかろうとする背を視線だけで追いかけ、自分は自分で自分の目的地に行こうと顔を逸らし。
 ふら、と揺れた背中を視界の端に捕えたところで、手を、伸ばしていた。
 やや後ろとはいえ殆ど真横にあった身体の腹の部分に腕は周り、倒れかかっていたそれは地面と顔面を出会わせること無く止まった。
 ……止まったのは良いのだが、これからどうしよう。
「……何なんだ」
「……何なんでしょう」
 訝しさしかない声音に問い返すような言葉しか返せず、本当に何なのだろうと心の中でため息を吐く。咄嗟の事とはいえ、どうしてこんな事をしたのか。
 ここで支えの腕をパッと離せば悪役っぽいだろうと思いながら、それを実行する気にはいまいちなれず。
 乗りかかった船だと今度は現実で息を吐いて、身体を九十度左に回転させる。
 それから警戒心と置いてけぼり感を強く抱いているらしい天敵を、ひょいと抱き上げた。
「………貴方軽いですね。ちゃんと三食、食べてますか?」
「……そんな事、お前に心配される必要は無い……で、これは……何だ?」
「いえ、たまには教師らしい事でもしようかと」
「……らしい事?」
 不思議そうに問いかける彼に表情では何も返さず、歩き始める。
「その高熱ですし、どうせ保健室に行くつもりだったんでしょう。それなら運んで差し上げましょうと言っているんです」
「……お前に運ばれるくらいなら転がって行く」
「何でそうなるんですかね……?」
 思わず苦笑いを浮かべると、彼はふいと視線を逸らした。
 けれども抵抗らしい抵抗は無かったので、苦笑を深くして、そのまま歩みを続行した。







何故かこの二人をほんのちょっと、本当にちょっとだけ仲良し(=ゼータによる一方的攻撃がない)状態にしてみようと思った結果です。…何でそんな事を思ったし。
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