式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
子供超兵たちのお話、三つ目です。
15.ありがた迷惑
全部アイツのせいだ。
だから俺はアイツが嫌いだ。
その日、その部屋を訪れたのは片割れでは無く俺だった。
それを感じ取ったのか、部屋の中心で目を開いたままどこも見ず、手足すら動かす事が出来ず、何一つ出来ずに横たわっている女は訝しげな『声』を送ってきた。
『今日は貴方なの?』
「テメェにとっちゃ、残念な話だろうけどよ」
彼女には聞こえないように普通に呟いて、俺は、彼女が横たわっている物の傍に寄る。
そうして片割れの定位置から僅かに離れた場所に陣取って、俺は、ようやく女に答えた。
『まぁな、俺だよ』
『アレルヤはどうしたの?』
『寝てる』
『……大変な事が、あったの?』
『テメェには関係ねぇ。アイツだって言う気もねぇだろ。だから言わねぇよ』
『……そう』
酷く心配そうな声音に、ほんの少し苛立つ。
これがいたって普通の反応である事は重々承知だ。承知の上で言わせてもらうが、心配なんてもの、少なくとも俺は求めていない。そんな声は俺じゃなくて、甘くて甘くて仕方のない、今は寝ている片割れに聞かせてやればいいのだ。俺がそんな物を必要としていないと知っているはずの女がとるそういう態度に、俺はいつも鬱陶しさを覚えた。
こいつの方が、あるいは俺たちよりも面倒で厄介な事態に身を浸しているのだろうとは思う。だから誰かさんは、そんな状態で人を心配出来るなんて、とか言って感動するのだ。だが、俺は違う。そんな感情、向けられると思うだけでも鬱陶しい。
ちなみに片割れは、誰かさんとは少し違う。そういった感情も彼はお人よしだから、無い事もないだろうが、どちらかというと心配されていると言う事実の方に感情の目が向いている。要するに、彼が抱くのは感動では無く喜びであると言う事だ。
そして、片割れの代わりにこんな場所に足を運ぶ俺も、実は随分なお人好しの部類に入るのではないかと思う。正直、そんなの嫌でしかないのだが。
『ハレルヤ、今日は何か楽しい事……そう、楽しい事って無かったの?』
『強いて言うなら実践だな。アイツはいつもみたく嫌だ嫌だって喚いてやがったけど』
『……それは、そうだと思うわ。……嫌だと思う』
『じゃああれか?何もせずに俺たちが殺された方が良かったって?』
『……そうじゃ、無いけど』
躊躇うような声音に、鼻を鳴らす。
『なら相手が痛い目見ただけで事が済んだっていう事実に感謝でもしとけ』
『……』
黙った女に、俺は、たたみかけるように続けた。
『今更かもしれねぇが、言っとくぜ。俺はテメェが、多分嫌いだ』
『ハレルヤ……』
『理由とか訊くんじゃねぇぞ?理由は分からねぇが妙に馬が合わねぇ、考えが受け入れられねぇ、っつー相手はいるんだからな。ま、これに関しちゃ、理由は分かってんだけどよ』
『教えてくれないのね』
『教えてやる義理がねぇ』
『義理が無くても、教えてくれる人はいるんじゃないの?』
『生憎と、俺はそんなに親切じゃねぇよ』
彼女の言葉を切り捨てて、俺は彼女から離れた。
何となくそれが分かったのか、女の不安げな声が頭の中に響く。
『ハレルヤ?どうしたの?』
『帰る。じゃあ、また明日、だ。今度はアイツが来る事でも祈っとけ』
見えるワケもないがひらりと手を振って、俺は部屋から出た。
見慣れた面白味もない廊下を歩きながら、思う。
あの女が俺に与えた名前。それを片割れに使われるのは別に気にならない。が、あの女自身が使うと少し苛つく。何故なのか、考えた事もあったがすぐ止めた。答えは拍子抜けするほど簡単に、直ぐに出たから。
あぁ、確かにあの女は厚意からこの名前を与えたのだろう。
しかしそのせいで片割れは、あの女という存在に深く囚われてしまった。
最早どうしようもない事だとは思うが、それでもその事実を思うたびに妙に胃がムカムカする。もしも出会わなければと思うほどに、片割れの心は大きくあの女に捧げられた。今では彼自身に捧げられる心が無い程に。残った部分は既に、昔、俺が生まれた頃に俺に捧げられて既に片割れの中には無かった。
故に思う。
名付けなんてあの行為は、俺たち二人の世界にとって迷惑でしかなかったのだと。
あの女が死ねばその心は再びお前の所に戻るのかと言う問いの答えも、直ぐ出た。
きっとそれは、そのまま冥府にいるあの女に捧げられるのだろう。
マリーさんに敵意むき出しなハレさんのお話。
あと一つ、超兵たちのお話の続きを書くべきか書かなくてもいいか考え中です。
PR
この記事にコメントする