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折原兄妹のお話です。双子たちのお話。



 いくら二人で一つの完璧な人間になろうと決めて、思いつく限りのありとあらゆる人間を形作る要素を集めて分けて各々に分配したからといって、普通ここまでやるだろうか。いや、と臨也は首を振った。そもそも『人間』になりたがっている時点で既に『普通』から逸脱しているのだから、ここでその言葉を取り出すのはおかしい。だから尋ねかける言葉の形を変えよう。これって、どこからどう見ても普通じゃないよね。と。そして、その時始めてこの問いに答える事が出来るのだ。こんなの絶対に普通じゃない、と。
 というわけで、今、厄介な双子の妹の面倒臭さを改めて実感している兄は、大きく一つ、ため息を零した。
「お前らさ……じゃあ俺にどうしろって言うんだよ」
「簡単な話じゃん、イザ兄。ちゃんと二種類買ってくれば良いんだよ!大丈夫大丈夫、イザ兄の月収なら毎日そんなことしたって余裕あるでしょ?だから、ね?」
「……頼……」
「い・や」
 にこりと微笑んでやると、ぶーぶーと舞流からブーイングが上がり、じっとりとした恨みの籠る視線が九瑠璃から送られる。騒々しいのと静かなののダブルで責められているせいか、不思議と口がさらに大きく弧を描いた。
「お前らな、たかるんなら親にたかれよ。俺と違って高校生なんだし、まだ保護者に色々やらせられるお年頃だろ?」
「やっだなー。そんなことしたら可哀想だからイザ兄の所に来てるんじゃない」
「……俺は可哀想じゃないわけ?」
「……是……」
「相変わらず酷いなお前ら……」
「イザ兄程じゃないよ。ね、クル姉?」
「……同」
「……もういいや」
 描いた弧が引き攣るくらいに勝手な理論を展開する妹たちを前に、臨也がもう相手をするのは嫌だと思い始めるのは当然の流れであって。
 これくらいで妹たちを引きはがせるのならば、と財布を取り出し一万円札を抜きとる。
「はい、お前らのおやつ代」
 これを使って辛い物でも甘い物でも何でも買ってくれば良いと差し出すと、ち、ち、と指を振られた。……嫌な予感しかしない。
 そして、嫌な予感は的中するのがセオリーと言う物。
「私たちが買いに行くんじゃなくて、イザ兄が買いに行ってよ!私は最近有名なお菓子屋さんのすっごく甘いシュークリーム二個で、クル姉のは最近街の中を彷徨ってるせんべい屋さんの激辛せんべい二パック。よろしく!」
 そんな風に笑顔で親指まで立ててくれた妹に対して出来たのは、彼女の脳天に手刀を食らわせる事くらいだった。






二人で一つということで、やっぱりこういうのも分けてるのかなぁなんて。
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