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というわけで中編です。幸村は無理だけど佐助は中に入れました。その理由と言うのが、というお話。



「どうして?」
「どうしてって、暑いだろ」
 パタパタと手を団扇の様にして顔に風を送らんとしている独眼竜は、はっきりきっぱりとそう言って、冷たい水が入っているのであろう湯呑に手を伸ばした。
 その傍で正座している軽装の元就も湯呑を持ち、ふ、と笑う。
「此度の奥州は、何でも今までにない猛暑であると言う事らしい」
「ふぅん……俺様たちのとこよりは過ごし易いんだけどねぇ」
「我とて同じよ。まぁ、生まれ育った国が違えばかような差異もあろうな」
「っつーわけで、これ以上暑くなんのは嫌なんだよ」
「だから旦那たちは入ってたら駄目だったわけか……」
 確かに幸村なんて傍に置いていたら、今感じている以上の暑さを感じなければならない気がする。というか実際にそうだ。元親の方は幸村ほどではなかったにしても、元就と比べたとしたら切り捨てられるのは彼の方に違いない。
 ようやく事情が分かった。それなら仕方がないと息を吐きながら、とりあえず指摘しておくべき箇所は指摘しておく事にしよう。
「で、独眼竜の旦那、暑いのは分かるけれど前広げ過ぎ」
「暑いんだから仕方ねぇだろ」
「こんなの見られたら、だらしないって右目に怒られるるんじゃないの?」
「先ほど注意されておったが」
「……懲りないねぇ」
「だから暑いんだよ」
 大目に見ろと言わんばかりの政宗の言葉に肩を竦め、腰を上げる。
「んじゃ、そろそろ行くんで」
「ゆっくりしていかねぇの?」
「落ち込んでる旦那を放っておけるんなら、保護者もどきなんてやってないよ」
 問う様な言葉に苦笑を返し、ひらりと手を振って部屋を出る。
「……帰りにどっか、茶屋にでも寄って行こうかねぇ」
 もちろん沈みっぱなしであろう主君を元気づけてやるために。
 いつもなら甘いと苦笑するところかもしれないが、今回ばかりはそんな行動もごく当たり前の物に思えるから不思議だった。






暑さに弱い政宗様を押してゆこうと決めた今日この頃です。でも、考えてみると、やっぱり一番暑さに弱いのは…いつきちゃんだと思うんですけどね。
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