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拍手再録です。
~2. 元騎士様、求職中~
「雇って欲しい、だ?」
「……」
尋ねるように口にした言葉に、こくりと頷く一人の忍。
そんな彼を見て、政宗は若干困りながら頬を掻いた。
「俺は別に良いんだけどよ……多分、小十郎がダメっつうな」
「……」
何故か。そう尋ねる視線を感じて、息。
「こないだ潰した所に雇われてただろうが、テメェは。昨日の今日でそんなの信用できるか、って、話を速攻で切り捨てるに決まってんだろ」
「……」
今度は成程、と納得する気配が小太郎の元から漂い出た。
喋るより雄弁に語る沈黙に、こんなので忍が務まるのかと首を傾げるが、これはおそらく意図的にそうなるようにしていて、仕事中では沈黙は沈黙の仕事をしっかりと行うのだろう。だとしたらまぁ、随分と気の回る忍だ。
こういうのが身の回りに一人でもいたら、結構気持ちよく日々が過ごせるのではないだろうか。政宗はそう思ったが、良く考えれば自分にとってのそういう立ち位置には、既に先客と呼べる存在がいた。成程、どうりで戦でもない限り、毎日がこうも穏やかに流れるわけだ。今はここにはいない右目を思い、薄く笑う。
政宗のその態度の理由が分からなかったのだろう。首を傾げる小太郎に何でも無いと手を振って、政宗はその手を傍にある机の上の筆へと伸ばした。
「役には立たねぇ気はするが……とりあえず、紹介状くらいなら書いてやる。……いや、っていうか本当に役に立つのか紹介状って……?」
「……」
「礼はいらねぇから頭下げんな。役立つかも分からねぇんだし」
言いながらも手は止めず、卓上に既にあった紙にさらさらと文章を書きしたためる。
「あ、そうそう。お前今夜どうすんだ?もしよかったら泊まってけよ」
「……」
「ふぅん……OK。一泊だろうと二泊だろうと大差ねぇし、構わねぇよ」
そう言ったところで手紙は書き終わり、筆は止まった。
(2010/09/27)
(2010/09/27)
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