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拍手再録です。



4. 民間資格の魔法使い~

 
 
 黒いフードで表情は隠され、ひらひらの服はローブの様。
 一瞬でとても遠い場所に移動する事も出来、そこにあるはずのない物をそこに表せる事が出来る、何でもござれの不思議な赤子。
 まるで魔法使いの様だと笑うと、赤子は憮然とした表情を浮かべた。
「そんな、ファンタジーの世界の住人と一緒にしないでくれるかな」
「幻術使いだって十分ファンタジーじゃねーの?」
「幻術師は今、君の目の前にいるだろ」
 ファンタジーの中じゃなくてね。
 そう続けて、赤子はふわりと浮いた。
 普通ならば出来ない事。普通じゃ無くても出来ない事。
 そんな事が出来る赤子はやはり魔法使いのようであり、同時に、どこまでも魔法使いでは無かった。だって、魔法使いはファンタジーの世界の住人であって、現実に存在し得るハズが無いのだから。
 それが少々不満だと思ったのは今日が初めてかもしれない。
「あーあ、残念。マーモンが魔法使いなら、俺たち完璧にファンタジーなのにさ」
「王子様と魔法使い?君とセットにされるなんてごめんだけど」
「王子とコンビ組めるって光栄投げだすのかよ。もったいねー」
「光栄なんて要らないよ。一銭にもなりやしないんだから」
 心の底からそれを鬱陶しがっている様な表情を見せる赤子。
 そんな赤子を笑みを浮かべたまま眺め、口を開く。
「金になるなら光栄も欲しがるわけ?」
「勿論。それで、お金を貰った後にその光栄も誰かに売りつけるね」
「どこまでも金なんだ」
 流石は守銭奴だと肩をすくめると、赤子は褒め言葉だよとニコリともせずに返した。
 その様を見て思う。
 こんな現実的な魔法使い、ファンタジーの中にも存在しない。
 
(2010/09/27)
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