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臨也さんが語ります。そしてちょこっと波江さんも。
034:禁断
悪いことは楽しいと言うけれど、さて、それは果たして彼に当てはまるのだろうか。
自分には当てはまらないとは思う。確かに自分は、普通よりもはるかに多くの、しかも酷過ぎる行為を行なって来た。だが、それらを楽しもうと思って行なった事は一回もない。あくまで求めていたのはその行動によって人々が見せる色々な姿であり、悪行そのものでは無かったから。それは、単なる手段だった。手段を楽しむ気は無い。もっとも、その手段によって他者が反応を貸してくれるのだと思えば、多少のときめきは覚えるけども。
対して彼は。
自分と同じくらい悪い事を、酷い事を行っている彼は、それを楽しんでいるのだろうか。
取りとめのないそんな思考の結論は簡単に出る。……絶対に、そんな事は無いだろう。
彼は、毎日の様にその力を振るう。人間にしては強過ぎる、否、逸脱しているその力は、彼が望む望まないにかかわらず、彼自信に悪行を強いる。あの我慢できない性格もそんな悲劇に一役も二役も買っていることは、既に把握済みだ。
けれども、そんな現状を彼が疎んでいることは、把握するまでもなく見れば分かる。
キレて、力を振るい、それに憂鬱になって、けれどもまたキレて、力を振るって。
悪循環とはこの事だと、くつくつと笑う。そんな自分の様を見てか、優秀な助手が気持ち悪そうな……もとい、怪訝そうな表情を浮かべていた。が、そんな顔をされても困るのだ。こんなに面白い事、笑わない方がおかしいのだから。
それにしても彼は、一体いつまでそんなどうしようもない事を続けるのだろう。
いっそ我慢できないのなら、我慢するのを止めたなら。その過程と結果を受け流し、楽しめばいいのにと思う。受け止めて傷ついて落ち込むよりは、そっちのほうがよっぽど生き易いだろうに。どうして彼は、生き難い方を選んでしまったのだろう。
馬鹿だなぁと、心の底から思う。
自分のしたい様に何もかも、我慢する事も絶えることも止めてしまえば、もっと幸せになれるだろうに。もっと満足できるだろうに。もっと、人から外れる事が出来るだろうに。
いっそ、人間を止めてしまった方が楽だろうに。
差異を、埋める努力を放棄してしまえば。
距離が、広がる事を拒まなければ。
もっともっと、楽だっただろうに。
「獣が人間のフリをしようとするから、傷付くんだよ」
「……悪魔に人間のフリをされても困ると思わない?」
笑みと共に零した呟きに対する言葉は、とりあえず黙殺した。
悪い事は楽しいといいますが、さてはて実際は本当にどうなんでしょうか。
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