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拍手再録です。
084:しるし
「……おかしいなぁ……ちゃんと地図通りに歩いたのに」
「……本当か?」
だったらどうして今、自分たちはこんな場所にいるのだろうか。
頬を引きつらせながら尋ねると、彼は心外だと言わんばかりの表情を浮かべた。
「本当だよ。ほら、これ!」
そうして見せられた地図に。
思わず、ウイングは脱力した。
……まぁ、予測はしていたのだけれども。
「サンドロック」
「何?」
「地図の上と下が逆だ」
「え!?……あ!」
こちらの指摘に慌てて地図に視線を落とした彼は、どうやらしっかりと『過ち』を確認してしまったらしい。先ほどまでは姿も形も見えなかった冷や汗が、その頬に見える。
……だから地図は自分が持つと言ったのに。
彼に道案内を頼むと必ず迷子になるというジンクスを思いながらため息を吐いて、呆然としている彼の手からひょいと地図を抜きとった。もちろん自分で現在位置を確認して、目的地まで今度は正しく行けるようにするためである。
そして今回はその事に何も言わないサンドロックだった。賢明な判断だと思うけれども……出来るならば最初からその判断をして欲しかった。
「今がここだから……あっちだな」
地図上にバツ印で示してある目的地への最短距離を確認して、現実でそちらに視線をやれば……それは自分たちが歩いて来た道に他ならなかったのだがどうすればいいのだろう。
真横にずっと歩いていたとか言うんじゃないからまだマシなのだろうかと思いながら、どこか落ち込んでいるサンドロックを促して、ウイングはやや速足で歩きだした。
早くいかなければならない。きっと他の三人は待ちぼうけを食っているに違いないのだから。
(2010/10/12)
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