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多分これは、最終手段。 
ウイングとデスサイズのお話です。



 ただいまと言ってリビングに入ったら、ただいまと応じられる前に慌てて何かを隠される。そんな事態に直面したら普通はおかしいと思うのではなかろうか。
 思いもよらない反応に、じぃ、とデスサイズに視線を向けると、両腕を背中にまわして何かを隠した彼は素早く明後日の方向に視線を逃がした。……隠したものは、どうやら後ろ暗いものであるらしい。
 ならば、それが何なのかを早々に暴いてしまった方が良いだろう。劇薬、なんていう事は流石に無いだろうが、一体何なのかくらいは確認しておいても損は無いはずだ。
 そうと決まれば話は早い。持っていた鞄を床に落として、ウイングはゆっくりと彼の方に歩を進めた。それに気付いた彼は座っていた椅子から慌てて腰を上げて後退を始めるが、背中の方には隠さないといけないらしい物がある。よって、当然の様に彼の体はこちらを向いたままだった。
 けれども、そのまま後退して言ってはいずれ後方の壁に出くわすことになる。その事に気付きはしたが、敢えてそれは口にしない。気付いているにしろ気付いていないにしろ、あちらへ向かう自分から逃げようとする以上はそうするしか無いのだから、そんな助言は言ってやったとしても無駄なのだ。
 最終的に、とん、と彼の背中と壁が挨拶を交わしたところで。
 逃げられないようにと彼を囲うように両手を壁について、ウイングは若干顔を引きつらせて見上げてくる彼を見下ろした。
「……何を隠した?」
「……ノーコメント」
「それで済むわけが無いだろう」
「済ませろ」
「無茶を言うな」
 そして追いつめられていると言うのに、彼が出したのはとんでもない要求だった。
 呆れながらも答えると、一瞬だけ言葉に詰まった彼は、けれども直ぐに口を開いて言い訳の様な言葉を紡いだ。
「……でもほら、誰にも言いたくない事の一つや二つくらい、長く生きてたら絶対に出てくるだろって言うか」
「確かに出てくるかもしれないが、今回のこれとは関係ないな」
 これは言いたくない事ではなくて、言わなくてはならない事である。
 そして、そういう事は何が何でも言わせなければならない事なのだ。
 早く言えと改めて視線で返答を促すと、彼は数十秒沈黙を守った後、どうやっても自分が諦めそうにないと思ったらしく、はぁ、とため息を吐いた。それと同時に後ろに回されていた手が前に返ってくる。
「……これ」
 そうして差し出されたのは科学室に置いてある様なガラスの小瓶。
 妙な禍々しさをその小瓶から感じながら、壁から右手を離して素直に受け取る。それから何気なくそれに張ってあるラベルを見て、目を細めた。
 ラベルの文字の、この筆跡は。
「……デスサイズ」
「……何?」
「今すぐこれを床にたたきつけて割ってもいいか」
「絶対駄目」
「別に良いだろう。こんな百害あって一利もない無い物、さっさと廃棄しても」
「いや、だから駄目なんだって」
「今までも散々苦労させられてきたのにか」
「そりゃそうだけど、でもだけど本当に駄目なんだよ」
「……どうしてなのか理由を聞かせろ」
 小瓶を取り返そうと伸ばされた手を右手を高く上げることで回避しながら、静かに問いかける。実際、何で彼がこれの処分に否を唱えるのかが分からなかった。こんな存在、早急に抹消してしまうべきだろうと思うのだが。
 届かないと理解しているだろうに、それでも取り返そうと背伸びして手をこちらの右手めがけて伸ばしてくる彼は、むぅ、と眉を寄せながら口を開いた。
「頼まれたんだから仕方ないだろ」
「頼まれた?誰に?」
「トールギスⅢに」
「アイツに?」
 思いもよらない名前に、ぴくりと肩が揺れた。
 そんなこちらの反応など気にする様子もなく、背伸びからつま先立ちに手段を変えたデスサイズは、そのまま言葉を続けた。
「そ。ギャン特製のテンションが下がる薬を今日の夕食か明日の朝食に混ぜ込んといてって言われたんだよ。だから返せ」
「……アイツからギャンの薬を渡されたと言うのが信じられないんだが」
 トールギスⅢといえば、自分たちが通っている学校の中でも数少ない常識人だったはずだ。それが、あの学校きっての問題教師の作った薬を生徒に与えて投与するように指示するなんて、普通に考えられない。
 けれども、そんなこちらの戸惑いはお見通しだと言わんばかりの表情を浮かべて、彼は言う。もちろんつま先立ち状態で。
「その薬はもう色々と実験済みなんだってさ。副作用もないみたいだし大丈夫だって」
「検体は?」
「ギャン本人。自分でも意図しないで摂取したとか何とか」
「アイツらしい……だが、それでも信用は出来ないな」
「うん。それは俺も思ったけどさ」
 と。
 そう言って、デスサイズはつま先立ちも背伸びも腕を伸ばすことも止め、ふっと、何かを諦めたかの様な笑みを浮かべた。
「……そろそろ学校の備品とかの修理代にかかる費用がやばいらしくてさ……」
「……」
「原因は、ま……この薬がここに在る時点で、何となく察してくれてると思うけど」
「……」
「で、そんな話聞かされたら……ちょっと協力しないとって思うよな?」
 尋ねるように笑う彼に口をつぐんで何も答えられないまま。
 ウイングは、右手を下ろして小瓶を返した。







特訓大好き部……まぁ、マスターがいるときは問題ないかもだけど、自手練(仮)なんてしてたらちょっと危ない予感がするのですが。いや、まぁ、良識はあると思うんだけど。片方正義の人だし。でも、集中したら周りが見えない二人組だろーしなぁ……。
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