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タイトル通り、大人になりたくない子供のお話です。
来神時代で、臨也と新羅。



 意外な人物からの告白に、新羅はぱちくりと瞬きをした。
 時間帯は放課後で、場所は人気の無い教室。耳をそばだててみても、自分と相手が黙っている今、聞こえてくるのは窓を隔てた向こう側から聞こえてくる運動部の大声くらいのもの。そして窓から入ってくるのは小さな声だけでは無く、オレンジ色の夕陽もであり、そのおかげで教室内は綺麗な橙色に染まっていた。
 奇しくも、告白にはうってつけのシチュエーションである。
 が、それも、相手が嘘を吐く事に何の罪悪感も感じない様な男であると言う事実を付け加えると、全体的に台無しになる気がするのは、きっと自分の気のせいではないだろう。
 もっとも、女子相手でも自分が相手になっている時点で台無しになるのはほぼ間違いないのだろうけれども。
 ……ともかく。
「それ、本気なんだ?」
 にわかには信じられない言葉を頭の中で何度も繰り返しながら、新羅は座っていた椅子の背もたれに体重を預けた。
 机を挟んだ向こう側で座っていた同学年は、ニコリと笑ってずい、と顔をこちらに近付けた。先の体重移動で自分が彼から取った距離を埋めるかのように。そして実際、距離はしっかりと埋まったようだった。しかも、妙にぴったりと。
 何の嫌がらせなんだろうと、少し呆れる。額と額がくっつくほど、と言うと過剰表現に過ぎるだろうが、それでもこの距離の無さはあまりにも無意味だ。自分にとっても、彼にとっても。だというのにどうしてこんな事をするのかと訊けば、何となくと彼は答えるだろう。あるいは、こうした方が秘密の会話をしているようで『らしい』じゃないかと、今以上に楽しげに笑うかもしれない。
 まったくと言って良い程にこちらは楽しくないのに、だ。
 顔を近づけられて自分が喜べる相手がいるとしたら、それは同棲中の首なしなデュラハンくらいのものだろうと思う。まぁ、彼女には顔は無いのだけど、そこは言葉のあや、というやつである。
 そんな風に思っているこちらに構う事無く彼……折原臨也は言う。
「本気だよ。俺は大人になりたくないんだ」
「てっきり、君は大人になりたい派だと思ってたんだけどね。何?仕事をしなきゃいけない事が嫌なの?そのせいで人間観察の時間が減るから、ってさ」
「そうじゃないよ。時間的拘束に関しては学生やってる今もあまり変わらないしねぇ。学校が会社になって、勉強が仕事になるだけでしょ、普通は」
「今よりは忙しくなると思うけど?」
「その代わり、今よりも行動範囲は広がるだろうね。残念ながら学生って、あーだこーだと規則が煩くて自分のやりたい事、なかなか出来ないし」
「あぁ、うん。確かにそれはそうかも」
 その言葉には素直に頷く。
 学生、というのは使い勝手のいい身分だと思う。映画館での割引サービスだとか、色々と利用価値がある事は認める。けれども、代わりのように束縛も存在するのだ。例えば……あぁ、そう。世間の目というのが良い例かもしれない。
 好き勝手やっているように見える臨也ではあるけれど、もしかしたら自分の知らない所で、そんな理由のせいで行動を制限されている部分もあるのかもしれなかった。
 ふぅん、と呟いて、首を傾げる。
「じゃあ、何で大人になりたくないの?」
「歳をとるから」
 さらりと短く告げられた言葉に、傾げていた首をさらに傾げる。……ちょっと首が痛い。
「……何?不老不死を望んでるんだよ、とか言い出したりするの?」
「あぁ、それも良いね。もしも不老不死の妙薬なんてものがあるんなら、飲んでみるのも面白いかもしれない。でもそうじゃないんだよね。死なないって言うのは確かに魅力的だけど、俺が今ここで言いたいのは『長生きしたい』って事」
「だから歳をとりたくないと?」
 確認を取るように尋ねると、彼は是と言った。
「そう言う事になるかな」
「……ま、今から大人になるまでに数年は間違いなく経つわけだし、経った数年間分だけ死に近づくのだと考えるなら、その望みも分からなくはないかもね」
「でしょ?」
 肯定が返ってきたのが満足だったのか、彼は顔を新羅から遠ざけた。
 それにこちらも満足を覚えながら、それでも冷静に言葉を紡ぐ。
「とはいえ、未来がどうなるかは誰も分からない。もしかしたらこんな会話をしたその帰り道、君は交通事故で死んでしまうのかもしれない。静雄が投げた道路標識が頭部に直撃して、死んでしまうのかもしれない。……せいぜいそうならないように頑張る事だね」
「言われなくても。少なくとも後者は絶対に有り得ないから安心して」
「そうかなぁ……交通事故より起こる可能性が高いと思うんだけど、これ」
「冗談じゃない」
 俺はそんな事じゃ死なないよ。
 やや気分を害した風に言う臨也に、苦笑を浮かべる。
「でも、そうなる確率が最も高い事は忘れないでね」
「忘れないさ」
 肩を竦めて彼は口を開いた。
「大人にはなりたくないけど、大人になる前に死ぬ気は全く無いんだ」







色んな「大人になりたくない」があるよねと思いつつ。
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