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アニメの典韋さん退場回について。あれこれ考えたらこうなったよ。……まとめきれなかったんだけれども。しかもキャラが違う気がするんだけれど……。
そんな感じでシリアスです。惇視点で、曹操様と一緒。
一人の武将の姿が城内から消えてしまった日の、夜。
城の最上階、都を一望できる場所に、自分と曹操はいた。
申し合わせをしたわけではない。ただ、何故か。気が付いた時には。ここにいたのは自分たち二人だけ。他の面々も随分と長くここに留まってはいたのだが、結局こうして残ってたのは彼と自分のただ二人のみだったのである。
特に何かを話そうと残ったわけでもないのだから、間に落ちるのは言葉ではなく沈黙だ。しかも、ただの沈黙では無い。自然と出来あがってしまったそれは、破ろうと思えば簡単に破れるだろう曖昧な物であるくせに、破ろうと思っても破れない重い物でもあった。
ぽつぽつと見える明かりを眺めながら、さて、と思案する。
今日、何があったのかは知っている。それを踏まえて、自分は一体何と言えば良いのだろうか。昔から、何度も何度も繰り返されてきたこの喪失について、今、自分が最も言うべき事は何なのだろう。
言葉など無くとも、彼は折れたりはしないだろう。それは分かっている。たとえ心に傷を負ったとしても、その傷を抱えたまま無理なく歩いて行ける程に、彼は強い。支えなど無くとも、彼ならば一人で立ち続ける事が出来るに違いない。しかし、だとしても……否、だからこそ、自分は彼を支えたいのだ。時に武を示し、時に言葉をもって。彼と共に彼の理想を成り遂げるために。
そして、今。
どう考えても、使われるべきは言葉の方だった。
無言の空間に浸りながら、思案を続ける。
慰めの言葉は不要だろう。そんな物は望まれてなどいないはずだ。そもそも、そんな言葉に意味はない。何を言ったところで現実が変わるわけでもないのだし。
なかなか困ったものだと、心中で息を吐く。何かを言いたい。だが、何を言って良いのか分からない。……元来、あまり言葉を使うのは得意ではないのだ。こう言った事はほぼ間違いなく、あの軍師たちの方が得手だろう。まぁ、あの面子がこういった事に心を砕くとはあまり思えないのだが。
「……夏候惇」
と。
不意に、曹操が言葉を零した。
先手を取られたか、と思いながらも、静かに応じる。
「何だ?」
「典韋が死んだ」
「知っている」
「それを見た劉備が泣いた」
「……それは知らなかった」
「言っておらんからな」
「あぁ、俺が知らなかったのだからそうなんだろうな……それで?」
「責められた」
「……ほう?」
それは、また、何とも。
どういう事かと視線で問えば、彼は淡々と言葉を続けた。
「命を賭して余を守った典韋に労わりの言葉を与えなかった事が、許せなかったらしい。その様な物は無意味だと言えば、余とは同じ道を歩めぬと答えてきた。どうやらそこで縁は切られたようだが……フン、考えて見れば当然の帰結か」
その言葉に、考える。
あの真っ直ぐな目をした侠は、仲間が死んでいく様を何度見たことがあるだろうか。一度や二度では無く、数え切れないほどに訪れる喪失は、忘れようと思っても忘れることなど出来ない。少しずつ、しかし確実に、それらは身の内に積まれて行く。
そうやっていって、ある時、気付くのだ。
死んだ者に何を言ったところで無意味なのだと。
何を言ったところで彼らが生き返るわけでもない。相手へ投げた言葉への返答は当然ながら存在などせず。死者に生者の言葉が届いているという確証もなく。
そんな状態で何を言おうと、結局は自己満足のための行為になるだと。
『自分は悼んだ』という事実が作られるだけの行動なのだと。
そう、感じる時が来るのだ。
その瞬間、悼む言葉は外へと出てこなくなる。
けれども、倒れた者へ対する思いが消えるわけではない。
消えない思いは、その者が一番望んだであろう行動へと向かわせる。
つまり、報いる方法には言葉と行動の二種類があり。
曹操が選んだのは行動の方だったという、本当に、それだけの事なのだろう。言葉の割合が余りにも少なすぎて、ほんの少しだけ理解され難いというだけで。
そんな風に思いながら、夏候惇はポツリと呟くように言った。
「……曹操、」
「……?どうした?」
「俺は、お前と縁を切るつもりはないからな」
そうして、改めて告げる決意。
これに対して。
「……貴様は、今更、何を分かり切った事を言い出すのだ」
曹操は、酷く呆れた表情を浮かべていた。
手向けの言葉って、大切だと思うけれど、やっぱり自己満足の形の一つなのかもしれないなぁ、とか思いつつ。
まぁ、とにかく。
曹操様だって、典韋さん退場に何も思ってないわけじゃないよ、という事を言いたかったのですよ……。
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