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動作のお題もこれで全部消化です。お付き合いくださってありがとうございました。
リハ文、という事でやりだしたこのお題ですけれど、本当にリハビリになったのかは……ちょっと微妙ですかね……更新が飛び飛びになってしまいましたから……。

今回は、平和島兄弟の小さい頃のお話です。おやつを食べるのを、おやつの時間まで我慢するのは難しいよね。



01:手を伸ばす    (DR:いろいろ)
 
 
 
 五分。
 それは、とても、とても短い時間だ。何かをしていればあっという間に過ぎ去り、何をしていなくても潰れてしまう様な、そんな僅かな隙間の様な時。
 けれども、そんな微かな時間ですら耐えられないこともある。
 ……というわけで、今。
 静雄は、冷蔵庫の前に立っていた。
 あと五分経てば三時に……おやつの時間になる。そして、おやつを食べるのはおやつの時間だ、というのは当然のこと。だから、おやつを食べるのは、それまで我慢しないといけないことは分かっている。けれど、分かっているからと言って実行できるかと言えば……そうでもない。
 どうせ五分なのだから、と、心の中に住む悪魔にそそのかされるままに冷蔵庫を開け、きょろきょろと中を見渡して目当ての物を見つける。
 ほんの少し高い棚の、手前の方。
 プリンが二つ、並べて置いてあった。
 あれが、今日のおやつだ。もちろん一人で二つ食べるというわけでは無くて、片方は自分のでは無くて幽の分。ちなみにカップの底に名前が書いてあるというわけでは無いので、どちらを取っても問題なし……まぁ、どちらも同じものだけれども。
 何となく左の分が良いだろうか、と、軽く背伸びをして一つのプリンに手を伸ばす。
 そうして、手が届いたところで。
「……何やってるの?」
 背後から、声がした。
 慌てて……けれどもプリンのカップはしっかりととって……振り返れば、そこには、若干の呆れを表情に滲ませた弟の姿があった。
 思わず視線を泳がせると、幽は不思議そうに言葉を紡いだ。
「まだ、三時になってないよ」
「あー、いや、そのな……」
「……三時前に食べようとしたの?」
「……おう」
 ここまでくれば誤魔化すのも隠すのも無駄でしかない。
 肩を落として頷けば、幽は少し考え込むそぶりを見せた後、冷蔵庫の方へ歩み寄って……もうひとつ、残っていた方のプリンを手に取った。
「幽?」
「もう、三時になったから」
 言われて時計に視線を向ければ、長い針は微妙に真上を刺していなかった。
 まだ、三時では無かった。
「三時だよ」
 けれども、幽はそう言う。
 そこで、ようやく静雄は弟の意図に気付いた。
 思わず弟の方を見れば、彼は微妙に微笑んでいて。
 そうして、微笑んだまま言った。
「だから、食べよう」
「……だな」
 そして。
 二人は、三時になる数秒前に、一緒にそろってプリンのふたを開けた。






そんな感じで二人一緒に。共犯者みたいな。まぁ、そんな言葉で片付けてしまうには、あんまりにも平和的な共犯者ですけれども。
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