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まさか、こんなのできるとは…




~刹那が料理下手と思う人挙手~

「あれ、刹那?どうかした?」
 玄関の方から音がしたから来てみれば、そこには近所に住んでいる少年の姿があった。
 別に、彼がここに来ることは珍しくはない。何の用事もないときにだって遊びに来てくれるし、いつもと違う気がしたら様子を見に来てくれるくらいだから。
 しかし、今回は少し妙だ。
 何故かというと、それは刹那の手にしている物。
 ニンジンにジャガイモ、タマネギ、お肉など……いろんな食材たちの入ったカゴを抱えていたのだから、それはまぁ、驚きもするだろう。
「えっと……」
「習いに来た」
「習い?……あぁ、そういうことか…」
 短い言葉だったが、趣旨は伝わった。
 刹那は、料理が苦手だ。それはもう、本当に。本人もどうにかしないと、という自覚はあるようで、たまにこちらに来て練習していくのだ。
 恐らく、今回のメニューはカレーだろう。食材からして。
「いいけれど……ハレルヤに習った方が良いよ?彼の方が料理は上手だし」
「アイツが俺の先生に、か?」
「……無理あるかな?」
「ありすぎるほどあるだろう」
「かなぁ……」
 アレルヤの片割れは気分屋だから、やってくれないときもあるかもしれない。
 なんて納得していると、それに……と、刹那が付け加えるように言った。
「ハレルヤより、アレルヤとの方が良い」
「それ……本当?」
「あぁ。俺が嘘をつく理由はない」
 その言葉に、微笑む。
 なんだか、とても幸せな気分だった。

(2008/06/08)


~嫌なあだ名~

 それは、情報収集のために酒場に寄ったときの話だった。
 来る回数は少ないものの、狩人という職業が印象的だったらしい。何度か話しかけられ、対応している内に親しくなっていた。ここに来れば情報収集より先に会話を、ちょっと長めにするくらいには。あまり顔を見せない客とそんな客を出迎える店主としては、これは案外仲がよい方なのではないだろうか。
 その日も普通と同じように店主と話していて、ふいに声を掛けられた。
「隣は空いているかな?よければ座らせてもらいたいのだが」
「ん?あぁ……別に……」
 構わない、と続けようとしたロックオンの言葉は止まった。
 何故なら……相手は、顔見知りの金髪の男、ついでに言うと狩人…だったから。
「グラハム……お前、どうしてここにいるんだ?どっか遠くに行ってたんじゃ…」
「その、『遠くに行っていた用事』というのが終わったのだよ」
「ふぅん。どんなのだったんだ?」
「なに、昔からの知人を訪ねに、少々郊外まで行ったというだけの事だ」
 その『少々郊外』が、どこまで『少々』なのかが若干気になるところだが……触れるべきではないだろう。彼が行う説明というのが、かなり不思議な比喩が使われたりするので、聞くこちらが疲れる代物なのだ。
 以前、思わず説明を求めてしまったときのことを思い出し、溜息を吐く。あの時は辛かった……今まで戦ったどの相手よりも手強かった気がする。
 唐突に息を吐き出したのを訝しく思ったのだろう、グラハムがこちらに向き直した。
「眠り姫、どうかしたのか?」
「……そのあだ名は止めてくれ……」
「何故だ?似合っていると思うが」
「どこがだ!?俺は男、これは分かるな!?姫なんて見当違いも良いところなんだよ!」
「だが、私と出会ったときに眠りについていた君に、まさに相応しい名…」
「んなワケあるかっ!つーか、あれはお前が意図的に気配を消して近寄ってきたから分かんなかったんだよ!」
「まぁ、気配を完全に消すことは、私の特技の一つだからな」
「……あー、そうかい…」
 叫んでも何の効果もないと改めて察し、ロックオンは天井を仰いだ。
 やはり、彼の相手は疲れる……保護者はどこに行ったのだろう。
 
(2008/08/03)


~小さな日常~

「……」
 いつまで経っても降りてこないと思ったら……案の定だった。
 ベッドの上にいるのは自分の双子で、穏やかに寝息を立てているのも紛う事なき真実……でなくて……多分、一度は起きようとしたのだろう。掛け布団の上で寝ているし、彼はすでに寝間着から普段着に着替えている。
 丸くなって眠っているアレルヤをどうするべきか、そう考えたのは一瞬のことだった。
「アレルヤ、起きろ」
 まずは警告。呼びかけながら軽く揺する。
 これで起きてくれれば楽なのだが……そうはいかないのが現実である。やはりというべきだろうか、従来のパターン通り、彼は全く目覚める気配を見せない。
 ならば、やることは一つだった。
 がし、と布団を掴んで思いっきり引っ張る。
 そうすれば掛け布団が斜面を形作り、すやすやと眠っていた彼は、重力に従ってベッドから落ちることになった。
 ゴン、という鈍い音が響く。
「……痛い……」
「おー、起きたか?」
 頭をさすりながら起き上がった片割れに笑いかければ、軽い睨みが返ってきた。本日の起こし方はお気に召さなかったらしい。
 まぁ、今までの中でもかなり酷い起こし方の一つだったので仕方はない。
「おはよう……酷い起こし方、どうも」
「怒んなって。お前が起きないからいけないんだろ?」
「うっ……そりゃそうだけどさ…」
「なら文句言うな」
 こう言ってしまえば、彼は言い返せない。
 そして予想通りに黙ったアレルヤに満足して、ハレルヤは行くぞ、と促す。今頃きっと、待たされているティエリアがイライラとしているに違いなかった。
 ……だから、実はあまり行きたくないのだけども。

(2008/09/07) 


~生まれ変わりて~

「じゃあ、新しい名前を付けよう」
 そう言って、目の前の青年はにこりと笑った。
 私にはその笑みが、どうしても信じられない。彼の笑いが作り物かどうかと言う話ではなくて、その笑みが自分に向けられているという事実が信じられない。それほどまでに、その笑みは美しかった。穏やかで、柔らかかったのだ。
 まるで日だまり。暖かな、光の差す場所。
「…そうだな……何かリクエストは?」
「……無い、です」
 が、突然にそれを言われても困る。新しい名前なんて考えもしなかったのだ。今までの名前を捨てることは、あっという間に浮かんできたというのに。
 だから、私は。
「貴方が好きなように付けてみてください」
「…良いの?」
「はい。貴方なら良い名前を付けてくれるかもと」
 何となく、彼に任せれば大丈夫だと思ったのである。
 どうしますか、と視線を上げて問うと、彼はちょっとだけ考える素振りを見せ、そして一言だけポツリと口にした。
「ソーマ」
「…え?」
「ソーマ・ピーリスってどう?」
 今までとは全く違う名前。
 そうであるだけで、正直十分だった。
 私は笑って頷いた。
「えぇ、それが良いです」
 これで私は『マリー・パーファシー』とお別れできる。
 その事に笑みを浮かべ、私……ソーマは決めた。
 この名前を与えてくれた貴方を、私はずっと守っていこう。

 生まれ変わった私の使命、貴方を守ること。
 私は私に、そう誓った。

(2009/04/15) 

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