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ダッフルコートって何?
と本気で思いました……コートはコートでいいじゃん。
01.ダッフルコート
刹那を尋ねて日本まできたのだが、彼が住んでいる部屋には誰もいなかった。
不用心な話だと思う。鍵も掛けずに出て行くなんて。
まぁ、彼の家には必要最低限のものしかないし、何も取られるものは無いからとでも思ったのだろうけど。
殺風景な部屋の中で呆れていると、壁に掛けられていたコートが目に入った。
まさかとは思うが、彼は上着もなしに外に出たのだろうか。春に近づいてはいるとはいえ、まだまだ寒いこの季節に。
少し考えて、ありえると思った。刹那ならば。
はぁ、とため息を吐いて、アレルヤはコートを手に取った。
届けに行かないと。
大丈夫。居場所なら見当がつく。
きっと彼は、あの公園にいる。
いつもの公園で、刹那はいつものように何をするでもなく、いつものベンチに一人で腰掛けていた。部屋にいても特にやることはない。
「刹那」
ぼうっとしていると、ふいに背後から声がした。
自分が背後を取られるなんて、と驚きながらも警戒はせず(だってこの声は彼のものだったから)振り返えろうとした。
どうして振り返『ろうと』なのかというと、それは頭を動かそうとしたら上から突然、何かが振ってきたからだ。
一瞬で、目の前が暗くなる。
何が起こったんだ?
ばっと頭にかぶせられたモノを取ると、それは部屋に置いてきたコートだった。
「どうして着ていかないのかな……」
「持ってきてくれたのか」
「まだ寒いからね」
そういうアレルヤはいつもの半袖ではなくて、暖かそうな長袖に長めのコートを着用していた。普段と違うので何だか新鮮だ。
「刹那。それよりもどうして部屋の鍵を掛けていかないんだい?」
「取られる物は何もない。通信端末は持って出るし、金も一緒だ」
「そう言うと思ったよ……」
アレルヤは苦笑して、刹那の隣に腰掛けた。
「でも、やっぱり閉めておいた方がいいと思うけど」
「必要性がないな」
「それ、言ったら終わり……」
「だが事実だ」
アレルヤは(刹那は知らないけれど)本日二度目のため息を吐いた。
が、すぐに別のことを思いついたらしい。
受け取った後、まだ身につけずに膝に掛けていた刹那のコートを奪い、それから自分のコートを脱いで刹那に渡した。
「アレルヤ?」
「なら、しばらく僕のコートを預かっておいてくれるかい?僕は刹那のコートを借りるから。それ、盗られないようにしてね。だからちゃんと部屋を閉めていって。ちなみにそのコート、ちょっと刹那には大きいから着ていくことはできないと思うよ。裾がついてしまうから」
必要性がないのなら作ってしまえ、ということか。
コートの交換をする理由は無いし、刹那のコートはアレルヤには小さいと思うのだが……まぁ、アレルヤの心遣いは受け取ろうと思うので、大人しくしていることにする。これがロックオンだったら即断る。ティエリアだったら……いや、彼は絶対に言わない。
「……分かった。アレルヤ、そういえばどうしてここにいる?」
「え?あぁ……ちょっとこっちに用事があってね。そのついでに会っていこうかと」
とりあえず、嘘だろうなと思った。
アレルヤが日本にどんな用事を持つというのやら。トレミーのクルーに何か頼まれたというのも無いと思う。アレルヤに頼まなくても、日本にいる刹那なに頼めばいい。
もしも刹那にはできないミッションがあったのだとして、それでアレルヤが来たのだとしても、サポートのために事前に刹那に連絡が来るはずだ。だからこの理由もあり得ない。
つまり、アレルヤはわざわざ刹那に会いに来てくれたのだ。
そのことを嬉しく思いながら、刹那は言った。
「どこに泊まるんだ?」
「刹那の所にって思ったんだけど。ダメかな?」
「いや、かまわない」
答えながらこの、小さな幸せの味をかみしめていた。
できることなら、こういう暖かな時間がずっと続いたらいいのに。
ダッフルコートがよく分からない子が書いたので、ダッフルコートのダの字も出てきません。
……すみません