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「あれ……アイツら、いない?」
「俺たちを置いて外に出たな……ただではおかないぞ」
「ヴァーチェ……お前、色々と程々にな?」
物騒な気配を漂わせるヴァーチェに、デュナメスは素速く釘を刺した。
この仲間は、本当に『やりすぎる』のである。
例えるならば、左腕を骨折させるだけでいいのに両腕両足の骨を折るだとか、一滴入れるだけで効果のある薬を全てぶちまけるとか、一ページだけで良い纏めをノート一冊分にして持ってきたりだとか。
とにかく『やりすぎる』のだった。
手加減を知らないのか、手加減の必要を感じていないのか……それとも、完璧でなければ気が済まないからなのかは良く分からない。が、その『やりすぎる』という点だけを知っていれば、さしあたっての問題はない。
「ま、外に気配も無くなったし、出たところで問題はないんじゃないか?」
「だとしても、俺を置いていったことは許せないな」
「俺の事は?」
俺も置いてけぼりをくったんだけど……。
そう続けたが、しかし彼に堪えた様子はない。
……いつものことだから、あまり自分はダメージは受けなかった。
「…どこに行ったんだ……何としてでも見つけ出してやる…」
「ちょ、お前待てって!」
ヴァーチェが掛けている眼鏡へと手が伸びたのを見て、デュナメスは慌てて彼の腕を掴んだ。赤髪の人形が何をしようとしているのかが、容易に予想が付いたからである。
「お前、こんなことで『システム・ナドレ』を使うなよ!?」
「俺の能力だ。俺が勝手に使わせてもらう」
「いやいやいやいや、それってそーいう軽はずみに使えるもんじゃ無いしな!?」
「良いだろう…俺たちの切り札でもあるまいし」
言われて、一瞬だけ言葉に詰まる。まぁ…一応、正論だった、
しかしだからといって、その能力をそんな場所で使うのはどうかと思うわけだ。場合によっては、とてつもない威力を発揮するソレを。
そして、切り札が別にあるのも事実である。
あれは使った後に大分、疲れてしまうからあんまり好きではない。便利だし、強力だとは思うのだけども。
「でもな、ヴァーチェ、やっぱりそれを使う場面と違う気がするぞ?」
「そこまで言うのなら……止めてやらなくもない」
「……本当か?」
ヴァーチェの言葉が直ぐには信じられず、デュナメスは思わず聞き返した。
先の通り『やりすぎる』彼にしては、やけにあっさりと惹いたな……という気持ちが強かったためである。予測では、あと数十分はデュナメスとヴァーチェとでの押し問答が続く物だと思っていたのだが。
警戒を緩めない自分に対し、彼はフッと笑って腕から力を抜いた。安心しろ、という意思表明らしい。
これなら大丈夫だろうかと思い、手を離す。
だが。
「ハハハハッ!甘い…甘いなGN-002、ガンダムデュナメス!この俺が諦めると思ったのか!?」
「しまっ…」
速すぎるほどに速く手を眼鏡の方に伸ばしたヴァーチェを、デュナメスは止めることが出来なかった。目で追うのもやっとの速さだった。
そして、発動した。
『システム・ナドレ』が。