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スメラギさん……色々と、あったのだろうな…。
というわけで、第二話『ツインドライヴ』より。
軌道エレベーターで宇宙に上がる刹那とスメラギさんの話。
02.ギブアンドテイク (第二話:ツインドライヴ スメラギ)
あれだけの犠牲を代償に、この現実は酷すぎた。
「ロックオンに…リヒティにクリス、Dr.モレノ、エイフマン教授、戦った兵士たち、巻き込まれた普通の人々。合わせたら、四年前の犠牲者は………一体、何人に及ぶのかしら」
座席に深く腰掛けたまま、スメラギは刹那を見ることなく呟く。
……最善の策を、取ってきたつもりだ。
より効率的に目的を遂行でき、より犠牲を抑える策を。
けれど、そんな自分の思いをよそに、犠牲者はどんどん増え続けた。増えて増えて増えて増えて、挙げ句の果てには今も増え続けている。それほどまでに、CBが世界に与えた影響は大きかった。
「世の中、ギブアンドテイクって言うけれど……嘘ね。奪うだけ奪っておいて、私たちには何も返ってこないのよ。もしも返ってきたとして、それが等価とは限らないの」
「それは自分の選択によってもたらされた結果だ」
「分かってるわ。だからこそ……だからこそ、やるせないのよ」
最善の策を取ってきたつもりだ。
取ってきた……つもりだった。
しかし、実際には大きなミスをしてしまった。自分たちが実行した事が今の状況へと繋がってしまった。
最善は、いつしか最悪に。
どこを間違ったのだろうと、小さく溜息を吐く。どこも間違っていないのかも知れないし、全てが間違っているのかも知れない。
ふと、自分をここまで連れてきた彼は何を思っているだろうと、ゆっくりと顔を上げて成長した刹那を伺い見る。
あったのは、強い意思を持った瞳。
それを見て思う。
きっと……彼も払うことになった多大な犠牲、それらは全てもっと別の素晴らしい何かを得るための代償となったのだろう。
自分とは違って。
これが…違いだろうか。強い者と、弱い者との。
その思いが、自然とスメラギの口を開かせていた。
「私はね、刹那……貴方ほど強くないわ」
「スメラギ・李・ノリエガ…」
「強くないの」
「…お前がそこまで言うのなら、そうなのかもしれない」
いつの間にか、刹那は扉の前からスメラギの目の前の席へと移っていた。
「だが、人間は変わる可能性を持っている」
「…そうかもしれないわね。変わることが出来る人も、いるわ…だけど……」
「自分は違う、そう言いたいのか?」
「……その通りよ」
「そうやって逃げ続けて…お前は満足なのか?」
その問いに、スメラギは視線を逸らすことで答えた。
満足なわけがない。あのどうしようもない過ちが消えるとは思わないけれど、せめて、二度と同じ間違いを起こさないように…出来たらと、何回思ったことか。
だが、向かい合うには『あの事件』の傷は深い。さらに、四年前のCBでの活動の際にその傷は……広く、深く抉れてしまった。
逃げ続けて良いわけがない。
それでも、逃げなければやっていけないこともまた…事実なのだ。
重苦しい沈黙が室内を満たしたが、しばらくして、それも途切れる。
残ったのは、何もない静けさだった。
何人もの命
何人もの血
何人もの涙
それらを代償として与えられた世は
仮初めの平和をその身に宿しながら
内には悲しき現実を孕んでいたのだ
スメラギさんの酒飲み具合でうわ、と思うこともありそうですが……それにもちゃんと理由があるんですね。理由があったからと言って、あそこまで重度の酒飲みは問題かと思いますが。
彼女にとって、酒というのは逃避のためのアイテム…のようです。
逃げるのは弱いことかもしれませんが、自己防衛のためにやってしまうことって、程度の差こそ有れ誰にだってあると思います。それこそ、とても心の強い誰かじゃないと…やらないってことは、無いと思います。
どうか、過去を乗り越えて…とは言いません。
過去と向き合ってしっかりと見つめることが出来れば、人間としては上出来なのかもしれませんから。