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途美学園です。マリーとソーマの会話、的な。
マリーもそろそろ学園に来ますよ。
02.公衆電話
最初にその言葉を聞いて、ソーマが思ったのは驚きでも意外性でもない。
ただ、ついにこの時が来た……と、それだけだった。
「……で、いつ頃こちらの学園に戻ってくるんだ?」
『出来るだけ早く。少なくても一週間後には書類の用意も終わるはずよ』
「ということは、一週間の猶予しかないのか……」
彼女を迎え撃つための作戦を練る時間は。
しかし、何と言っても彼女、である。彼女に対抗できうる作戦なんて……そうそうあったものでは無い。おっとりしているように見えて、その中身は一本の芯の通ったしっかり者なのだ。簡単には倒れてくれないだろう。
別に、彼女に対して悪意を抱いているわけではないのだ。ただ……先手を打っておかないと、どうしたってリードは取れない。それはある意味、致命傷なのだ。
何せ相手は自分の双子。マリー・パーファシーなのだから。
どんなにおっとりしていようと、アレルヤと一緒にいれば、彼を守るために否が応でも鍛えられるというもの。そしてマリーは、ソーマとハレルヤが些細なことで争っている間も、常にアレルヤの隣で目を光らせていた。見た目は愛玩動物で中身が隙のない番犬、そんな存在になっていたのだった。
一番アレルヤに近しいのは、今現在では間違いなくハレルヤだろう。
だが、マリーもまた、上位に食い込んでいるのは間違いない。
油断なんて出来たものではないのだ。
『猶予って……ソーマ、貴方は私を何だと思っているの……?』
「私の双子。それだけで十分だ」
『まぁ、それもそうね。そうでないと貴方のお姉さんはやっていけないもの』
「……待て」
確かに、自分も割と喧嘩をしたりすることはある。もちろん理由あってのことだが。
と、そこは置いておいて……姉、というのは。
「私の方が姉だと何度言えば分かる」
『あら、ソーマこそ何を言っているの?私の方がお姉さんよ』
「有り得ない。絶対に私は貴方よりもしっかりしている」
『でも喧嘩っ早いじゃないの。落ち着きは私の方が上よ』
「背の高さは……同じか」
『そうね。そこは競えないわ。……テストの点は?』
「それこそダメだろう。クラスどころか学校すら違う今では」
『それもそうね……』
「足の速さはどうだ?」
『結果、もう忘れてしまったのだけど。ソーマは覚えているの?』
「つい先日だったからな、忘れるも何も……という所だ」
『…そうなの』
「そうだ」
答えながらも、学校が違うとここまで不便なのか……と、しみじみと感じ入る。やはりマリーには途美学園に戻ってもらわなければ。手強い相手が増えるのは事実なのだが。
「話を変えるが……住居はどうする気だ」
『ソーマの所に転がり込もうかと思うんだけど…ダメかしら?』
「あぁ、父が拒否しても何とかするから問題はないな」
『分かったわ。じゃあ、明日にでも荷物を運び込むから』
「……明日?」
学園に戻ってくるのが一週間後というから、てっきりもう数日は遅いものかと思っていたのだが……違うらしい。思ったよりも早い。
しかも、荷物を運び込むというのは。
つまり……彼女自身は。
「マリー、今、どこにいる?」
『えっと……』
そして彼女が口にしたのは、途美学園から最も近い駅の名前だった。
予想はしていたが、やはり唖然としてしいまっていると、彼女はあ、と声を上げた。
「次は何だ…?」
『公衆電話から掛けてるんだけど……テレフォンカード、もうすぐ切れるんだったわ。もうそろそろ切らないと』
「そうか……じゃあ切る」
『じゃあね』
その言葉の後、ツー、ツー…と音が聞こえてきた。
ピ、と携帯の方も通話を終了させて……そこで、クスクスという笑い声が聞こえてくる。
見れば、そこには微笑んでいるアレルヤがいた。
「ソーマちゃん、マリーと話してた?」
「……何で分かるんですか?」
「だって、敬語じゃなかったから」
ね?と確認するように聞かれ、ソーマは少し顔を赤らめた。
マリーと話している現場を見られたというのが……ちょっと恥ずかしかった。
マリーは強いと思います。