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06. 魔女は笑った、交換条件だ、と。
「断る」
マリーの言葉を受けて、ティエリアは即答した。
それに、刹那は少しばかり驚き、少しばかり納得した。流れ的には従いそうな場面ではあるが、なるほど、この状況は彼らにとっては唐突すぎるだろう。ついて行くにしても、そもそも何をしに行くのかさえ教えていないのだから。これでついて行けと言うのは……理不尽以外の何者でもない。
しかしマリーはそうは思っていなかったようで、衝撃を受けたようによろけた。
「そんな……ティエリアさんなら聞いてくれると思ったのに……」
「誰が聞くか。唐突すぎるだろう」
「貴方と私の仲でしょう?」
「確かに師弟関係はあるが、そういう以心伝心の仲ではない」
心底残念そうに続けるマリーに、腕を組んで答えるティエリア。
というか。
「……師弟関係なのか」
「ん?あぁ、そうだぜ。えっと…」
「刹那。刹那・F・セイエイだ」
「あぁ、刹那か。俺はライル……って、さっき眼鏡さんが言ったっけな」
そうして色々と教えてくれたライルは……ロックオンの双子の弟らしい。どうりで似ているわけである。……多少、似すぎている気がするが。
とにかく、彼曰く。
ティエリアは膨大な魔力と繊細なコントロールを持っていた。そこは良い。問題は……昔は、彼はそれを使いこなせていなかったと言うことだ。だからこそ追っ手に追われ、ロックオンに拾われたらしい。
そして、そんな彼が出会ったのが以人……マリー・パーファシーだった。
「んで上手いコントロールの仕方を習ったらしい」
「成る程……それで師弟、か。では、」
「ん?」
「どうしてお前はティエリアに嫌われている」
「あー、そりゃ……まぁ、昔、結構からかっちまったから…」
「自業自得か」
呟きながらも、多大な魔力を持つ者に対してちょっかいをかけるとは……結構な挑戦者だとは思う。尊敬はしない…というか出来ないが。
そんなことをつらつらと考えている内に、マリーとティエリアの言い争いも佳境に入ったらしい。じゃあ、とマリーが切り札らしいものを出してきた。呆れた笑いと共に。
「じゃあ…交換条件よ。私は貴方に瞬間移動の方法を教える」
「……!?」
「もちろん旅が終わってからなんて言わないわ。今すぐよ、今すぐ!」
「……二言はないな」
「無いわ」
キッパリと言うマリーに、若干嬉しそうなティエリア。
あちらは解決したらしいと結論づけて、そういえば……と、ライルの方を再び向く。
「訊きたいことがある」
「何だ?」
「お前にとって、以人は何だ?怖いか?」
自分は『以人』がどのようなものか、完全に知ったわけでも見たわけでもない。だから、彼らが以人を……マリーを怖がっているのだと聞いても、理解できない。強大な力を持つ存在は恐ろしいが、それも場合によりけりだろう。
そう思いながら問いかけてみれば……ライルは苦笑を浮かべた。
「怖いな。こいつら以上に怖い存在なんて知らない程に」
「……そんなに、か」
「本気出したところ見たこと無いんだろ?なら、それを見たら理解するぜ?いや……理解せざるを得なくなる。覚悟しとけよ」
「そうか……」
ならば、心構えはしておこう。
どうであれ、頼みを聞くことは変更しないが。