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04. 迷いの森で追いかけた影
以人について詳しいことが知りたいのなら、と、ロックオンが案内したのは……うっそうと茂る森の手前。ティエリア曰く、迷いの森と呼ばれる場所だった。
しばらく森の入り口を眺め、直ぐ傍に立っている二人へ視線を戻す。
「ここに入れと?」
「あぁ。運が良ければ彼女に会えるはずだぜ」
「……悪ければ?」
「安心しろ。迷っても僕らがどうにか探し出してみせる」
何とも頼りない返事だった。
心細いというか…頼りなく思っていると、ポン、とロックオンが肩を叩いた。
何だ?と視線で問うと、安心しろと言うような笑み。
「ティエリアに付いていってもらえば問題ないぜ。道順は知ってるはずだ」
「……そうなのか?」
「まぁな。……フン、乗りかかった船だ。ここまで来たら最後まで付き合おう」
「助かる」
短く礼を言って、刹那は一歩、森に足を踏み入れた。
……それから数十分が経ち、森の中心辺り(らしい。ティエリアがそう言っていた)に辿り着いたところで休憩しようという事になった。刹那としては体力が有り余っているので進んでも良いのだが、残念なことにティエリアの方の体力が限界らしい。
ならば刹那には選択の余地はない。案内人がそれでは、自分には手の出しようが無いのだ。一人で行くのも手かもしれないが、それで迷子になったら最悪である。格好いい悪いの問題でなく、状況として本気で最悪だ。どうしようもない事態ならば、話は別だが。
適当な切り株を見つけて座り、ティエリアの回復を待っていた、その時。
向こうの木の陰に、誰かの影が見えた。
「……?」
「刹那、どうかしたのか?」
「いや……」
答えながらも刹那は立ち上がった。
そして、訝しげな視線には答えることなく、そのまま走り出す。
「刹那!?」
「直ぐ戻る!帰ってこなかったら先に行け!」
ここは迷いの森。迷えばきっと出ることは困難だ。見つけ出すことも、また。
だが、それでも刹那はあの影が気になった。追いかけてみなければならないような……そんな気がしたのだ。特別、そんな感じがした。
だから走る。走って追いかける。
しかし、一向に距離は縮まらない。
三分も走った頃には、刹那もおかしいと思い始めていた。
見たところ……影の走るスピードは、自分よりも遅い。歩幅も、速度も刹那よりも劣っているように見受けられるのだ。
距離は縮まらず、開きもしない。
それは最大のヒントだった。
「……成る程」
ヒントに従い、刹那は足を止めた。
逃げるから去るのだ。さらに付け加えるならば、影との距離は長くもならない。
ならばやるべきは一つ。縮まらないのなら、止まってしまえばいい。
「お前は誰だ!?」
立ち止まったまま刹那は呼びかけた。距離は、辛うじて声が届く程度には狭かった。相手の顔を見ることが出来ない程には遠かったが。
しばらくの沈黙の後、ざり、という音がした。
見れば、影が……否、白髪の女性が、金の瞳でこちらを見ていた。
「私は、以人よ」
その言葉に一瞬、息を止めた刹那に微笑んで、彼女は言う。
「ロックオンさんから話は来ているわ。よろしく、刹那さん」