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16. 決戦前夜、君とふたり
ことり、と目の前にカップが置かれたのを見て、刹那はゆっくりと顔を上げた。
すると瞳に映る、優しげな金色の瞳。
「刹那さん、よかったら紅茶、どうですか?」
「……もらう」
「砂糖は要ります?」
「いや、これで良い」
「そうですか」
……刹那は今、マリーの家に来ていた。
ハレルヤに頼んで街の外れまで連れてきてもらい、そこから歩いて森に来た。森に入りさえすれば、恐らく彼女は気付いてくれるだろうと予測しての行動。ハレルヤに直接こちらへ来てもらわなかったのは、そうする方が良いだろうと判断したからだ。
カップを口に付けて傾けると、丁度良い暖かさの液体が流れ込んでくる。
「にしても、ソーマとハレルヤが…そんなことを」
「止める方法はあると思うか?」
「いいえ。貴方が起こせるようにと見つけたその手段とやらが無かったとしても、多分、二人は実行したでしょう」
そう、そうなのだ。
そう自分も判断し、だからこそ二人にあれを話した。どうせ滅ぶのならば、より誰かの役に立つ滅び方をした方がマシだろう。……滅ぼされる側にとって、それは何とも言えない事ではあるのだが。
そういえば、と思う。自分は一応抹殺対象外なんだろうか。
だとしたら甘いような気もするが、私怨で動く彼らだから別にそれで構わないのだろう。ようは、気が向くか向かないか、それだけなのだ。
「ただ……一つだけ、無くはないです」
「何?」
「ですが、それはとても危険な手段です。それでも……?」
「愚問だ」
キッパリと、刹那は言い放つ。
ただでさえ可能性が無いのだ。危険だろうと何だろうと、掛けてみる価値はある。
しかし、それでもマリーは渋った様子で…だが、意を決したように口を開いた。
「アレルヤを起こすんです」
「……!?」
「あの二人、昔からアレルヤの言うことだけは文句を言うこともありましたが、ちゃんと従ってましたから」
その提案はあまりに突拍子過ぎた。
思わずカップを落としかけて慌てて手に力を込め、マジマジとマリーを見る。
彼女は本気だった。
「……だが、それでは『鍵』として…」
「ですが、あるいは彼がその力を押さえる術を得るかも知れません。いえ……アレルヤでなくても、他の誰かが封じることが出来れば…」
「起きても問題はない、か」
そうなると、どうやって力を封じるか、誰が封じるかが問題になるのだが。
悩み込んでいると、マリーが自分を呼んだ。
視線をやれば、彼女が何か……石のようなモノを差し出しているのが見えた。
「これを使ってください」
「これは……?」
「私の以人としての力をいくらか溜めているモノです。これを使えば、貴方がどうにかすることも可能です。ただし……これだけで力が足りるかどうかは、甚だ疑問です、が」
それでも?やるのですか?
そう問いかける彼女の視線にフッと笑い、刹那はその石のようなモノを手に取った。